仕事ができる上司とひとくちにいっても、そのイメージはさまざまだ。論理的な人、冷静な人、先見性がある人、辣腕な人、精力的な人、パワフルな人など、書き出せばきりがない。
この記事では、部下が「いっしょに仕事をしたい」と思う上司を仕事ができる上司とする。取引先には、「いっしょに仕事をして気持ちがいい人」や「別の案件でもまた仕事がしたい」と思われる人物だ。
意見の違いや対立があろうと、立場が違おうと、いっしょに仕事をして楽しい人、気持ちがいい人。社内社外の垣根を超えて、一目置かれる人物。
そんな、仕事ができる上司になるための12の条件をみていこう。
mokuji
仕事ができる上司が持つ12の条件
仕事ができる上司には、12の条件がある。
- 相手の立場や気持ちが思いやれる
- オンオフの切り替えがうまい
- 感情に働きかける
- 謙虚である
- コミュニケーションを好む
- 感情がコントロールできる
- ミスを認める
- 判断基準が明確である
- 誠実である
- 言葉遣いに気を配る
- 仕事に情熱を持っている
- お得感がある
相手の立場や気持ちが思いやれる
時代が変わると、できる上司の基準も変わる。現在のトレンドは「人間関係重視型」だ。バブルの時代を思わせる「能力優先型」の上司は、いまどきの部下には受けが悪い。
社会心理学者の三隅二不二氏が提唱した「PM理論」では、リーダーシップは「目的達成機能(パフォーマンス=P)」と「集団維持機能(メンテナンス=M)」の2パターンに分かれる。リーダーのタイプは、それらを掛け合わせた4パターンだという。
- P型 – 目的達成機能が高いリーダー。仕事中心で部下をぐいぐいとひっぱるタイプ。人間関係にはこだわらない。
- M型 – 集団維持機能が高いリーダー。人間関係を重視する。仕事の達成にはこだわらない。
- PM型 – 目的達成機能も集団維持機能も高いリーダー。仕事中心ながら、人間関係も大切にする。
- pm型 – 目的達成機能も集団維持機能も低いリーダー。仕事にも人間関係にも口を出さず、部下の自由に任せる。
これを見て、「PM型を目指せばいいのだな」とか「最近の若者にはM型やpm型が好かれそうだ」とか決め込むのは、早計だ。
確かに現代では、仕事より自分の時間を大切にする部下が増えている。彼らは出世にはあまり興味を示さない。仕事に対して口うるさくない上司が好かれるのはその通りだ。
だが、なかには昔ながらの気質を持った部下もいる。彼らは売り上げを伸ばして、成績を上げたいと思っている。出世欲にもあふれている。彼らにとっては、同期は管理職の席を争うライバルなのだ。そんな彼らには、P型の上司のほうがしっくりくるだろう。
どのタイプの上司が好ましいかは、部下の性格や仕事に対する考え方で変わるのだ。
現代では、部下は多様化している。ひとくちに若者といっても、考え方はさまざまだ。年上の部下や、外国人の部下も増えている。
仕事ができる上司は、自分のタイプをひとつに決め付けない。部下の性格(タイプ)に応じて、自分を変える。リーダーの4タイプを使い分ける柔軟性を持っているのだ。
オンオフの切り替えがうまい
仕事ができる上司は、オンオフの切り替えがうまい。こう着状態がつづく会議では、自らが率先して気分転換を図る。雑談やコーヒーブレイクといったリフレッシュタイムを設ける。ときには、問題点を整理して、後日再検討とする場合もある。状況を判断するタイミングが絶妙。空気が読めるのだ。
これは普段の仕事でも同じだ。仕事の能率が落ちていると感じたときは、さっと席を離れる。お茶を飲んだり、散歩にでたりする。繁忙期のあとは、有給休暇をとり、英気を養う。
こうした上司だと、部下もストレスを溜めない。気分転換するのも、仕事の能率を上げるには必要だとわかる。有給休暇も気兼ねなくとれる。
また、別のメリットもある。仕事には踏ん張りどきがある。繁忙期や、トラブルが起きたときなどだ。ここぞというタイミングで、普段はリラックスしている上司が緊迫感をだせば、部下たちもその気配を感じ取る。集中のスイッチが自然と入る。上司のメリハリが部下にも伝染するのだ。
感情に働きかける
仕事ができる上司は、感情を大切にする。相手の感情に働きかけるのがうまい。相手が心の奥で求めているものを満たしてあげるのだ。
たとえば、会議で部下のひとりが企画を提案をした。力作なのは、資料の分厚さからわかる。ここまでのデータを揃えるのは、時間がかかっただろう。
だが、企画自体はありきたりなものだった。目新しいところは見当たらない。部下の企画は会議の段階でボツになった。
当然、部下は落ち込む。企画が通らないのは仕方がないとしても、もやもやした気持ちが残る。モチベーションが大きく下がっているのは明らかだ。
そんなとき、肩を叩きながらこういわれたらどうだろう。「こんなに詳細なデータをよく集めたね。大変だっただろ? 今回は残念だったけど、このデータは別の機会に使おうよ」。
部下は報われた気持ちになるはずだ。次もがんばろうと思う。ちょっとした一言が、部下の心を掴むのだ。日頃から部下の気持ちを大切にしていないと、こういった一言はなかなかでてこない。
謙虚である
仕事ができる上司は、他人への敬意を忘れない。それは、相手が部下でも、新人でも、取引先や下請け業者でも変わらない。年齢や肩書きではなく、ひとりの人間として敬意を持っている。
仕事では、立場や経験、能力など優劣がつくのは仕方がない。だが、力関係に差があるからと、相手を軽んじたり、見下したりといった態度は、決して見せない。謙虚さがある。
自分の地位や権力を誇示したり、能力を過信したりすることもない。仕事ができる上司のまわりには人が集まる。分け隔てなく接してくれる上司とは、心地よく仕事ができるからだ。いっしょに仕事をするのが楽しいのだ。
職場には活気があふれる。立場など関係なく、意見を言える雰囲気がある。部下がリラックスしているからこそ、遠慮することなく自分の意見がいえるのだ。
コミュニケーションを好む
コミュニケーションを好む人は、思考が柔軟で吸収力がある。ひとつの状況をいくつかの角度から見ることができる。状況に応じて仕事のやり方を変えるのにも抵抗がない。部下からも学びを得て自分を成長させる。
成長していくのは、こういう人だ。情報や知識をいくら蓄えても、自分のやり方に固執するなら宝の持ち腐になる。
上司はチームのまとめ役だ。どのような職種でも、まわりとのコミュニケーションは避けられない。
職場には、複雑な人間関係がある。とくに中間管理職は、上下左右から圧力を受ける。調整役だ。企業で生き抜くには、他人とのコミュニケーションを楽しめる能力は、それだけで大きな武器となるのだ。
感情がコントロールできる
リーダーには明るい性格の人が向いている。いつも眉間にシワを寄せている上司は近寄りがたい。部下に慕われるのは、やさしい笑顔をいつも浮かべている上司だ。
だが、笑顔だけで乗り切れるほど、ビジネスの現場は甘くない。ときにはきびしい表情も必要だ。
仕事ができる上司は、適度な緊張感を持つ。その緊張感は、まわりを萎縮されるたぐいのものではない。繁忙期であっても、チーム内には、冗談を言って笑いあえるような雰囲気が流れる。
その雰囲気はときにリーダー自身を助ける。弱気になりかけたときには、忙しい中でも笑顔を見せる部下たちの姿がカンフル剤になる。やる気が奮い立つ。職場には、上司と部下が互いに励まし合う人間関係が築かれているのだ。
感情は人に伝染する。チームの中に不機嫌な人がひとりでもいると、それが他の人にも伝わり、チーム全体が重い雰囲気に変わる。とくにチームの中心である上司の感情は、強い影響力を持つ。
感情の落差が激しい上司のもとでは、部下は萎縮したり、殻に閉じこもったり、不信感や不安を抱いたりする。上司の感情の起伏に、自分が巻き込まれないようにガードを固める。
仕事ができる上司は、つねに明るい雰囲気を心がける。感情をコントロールする。そういう上司のもとでは、部下も心が開きやすくなる。きびしさや叱責も素直に受け止めるのだ。
ミスを認める
ビジネスは腹の探り合いだ。他社との交渉では、自社にとって不利な情報を隠し、都合のいい情報だけを提示して、有利な条件で契約を結ぼうとする。ほどんどの場合は、いずれは露呈して、信頼関係が悪化するのだが。まあとにかくそんな感じだ。
これを社内でもする上司がいる。チーム内で大きなミスが発覚したとき、自分の不手際(責任)を省いて、上役に経緯を報告する。「配慮が足りませんでした」など、政治家のような抽象的な言葉に逃げる。部下の報告や相談に自分が耳を貸さなかった事実には触れない。自分に不利な情報は隠して、謝罪の態度だけを示すのだ。
こうした上司には、部下は報連相(報告・連絡・相談)をしない。信用できないからだ。世間話すら避ける。うっかり軽率な発言をしようものなら、損をするのは自分だ。これでは仕事がうまくいくはずがない。結局は自分がしっぺ返しを食らう。
仕事ができる上司は、自分のミスや不手際を正直に部下に伝える。取り繕ったりはしない。自分のミスはありのままに打ち明けて、責任の所在を明らかにする。
また、部下への報連相も忘れない。自分の持っている情報は、もったいぶらずに部下に伝える。会社の方針や先の見通し、判断の根拠などだ。なかには上司の胸に秘めておくべき情報もあるが、開示できる情報は自分の有利不利に関わらず伝える。こうしたオープンな態度が、ますます部下の信頼を得る。
こういう上司には、部下も本音を打ち明けやすい。報連相(報告・連絡・相談)も適切におこなわれる。
判断基準が明確である
仕事ができる上司は、納得のいく説明ができる。部下が提出した企画が会議で通らなかったときには、会議ではどんなやりとりがあったのか、企画が通らなかったのはなにが原因なのか、といった報告を欠かさない。
報告は、大切な企画を自分に託した部下への礼儀だ。会議でのやりとりが部下にとって手きびしい内容であったとしても、企画の欠点や弱点をありのままに指摘されたほうが納得できる。改善点がわかれば、次回に活かせる。
「おれはいいと思ったんだけど、〇〇部長が反対したんだよ」みたいな説明では、部下にはもやもやが残る。上司がどちらの味方なのかがわからないからだ。部下の目には、強いものに巻かれて逃げ帰ってきたように映る。これでは、部下の信頼を失う。自分のために戦ってくれない上司を信頼できるはずがないのだ。
また、仕事ができる上司は、判断基準が一貫している。相手の地位やキャリアには惑わされない。相手に対する好き嫌いの感情を持ち込むこともない。新入社員の意見であっても、それが「正しい」「良い」と判断した場合には、正当に評価する。新入社員の意見が、自分のさらに上役の意見と対立するものであってもだ。公平さがある。
こういう人の判断であれば、自分の行動や意見に非があった場合には、部下も素直に聞き入れることができる。
誠実である
仕事ができる上司は、損得では動かない。保身のために他人に責任を転嫁したり、評価を独占するためにスタンドプレーに走ったり、自分の出世のためにきびしいノルマを部下に負わせたりすることはない。誠実なのだ。
誠実さは普段の仕事にもあらわれる。トラブルが起きたときには、責任を回避せず、さいごまで誠実に対応する。引き受けた仕事は、きびしい条件でも約束通りに仕上げる。部下の報連相には、作業の手を止め、相手に体を向けて話を聞く。こういった態度が部下や取引先からの信頼を勝ち取るのだ。
誠実な人には迷いがない。どんな場面でも、瞬時に判断を下す。あいまいな態度はとらない。決断が早いのは、自分の損得を計算したり、相手の出方をうかがったりする必要がないからだ。
言葉遣いに気を配る
おごりや慢心は、態度や言葉遣いに現れる。用心しておかないと、ふとした瞬間に出てしまうのだ。
仕事ができる上司は、自分の言葉遣いに気を配る。言葉が人に与える影響をよく知っているからだ。相手がどう受け止めるのか、気持ちを推し量ることができる。想像力があるのだ。
また、相手の地位や肩書きによって態度を変えない。現場の人たちや、秘書やアシスタントといった補佐役の人にも丁寧な態度で接する。軽く見たりはしない。
誰に対しても分け隔てなく接する姿勢は、仕事にもプラスに働く。社内社外に限らず、現場や補佐役の人が良い印象を持てば、上層部にも必ずその評判は届く。ときには、味方になってくれたり、後押しをしてくれたりする。「あの人は感じがいい」と思われると、仕事が有利に進められるのだ。
相手によって態度をころころと変えるような、裏表がある人間には、正反対のことが起こる。相手に肩書きがない場合は、自然とぶっきらぼうな口の利き方をする。相手が受けた悪い印象は、いずれ上層部に伝わる。ちょっとした油断が、命取りになるのだ。
仕事に情熱を持っている
仕事ができる上司は、仕事を楽しんでいる。自分の仕事や会社の製品に対する熱意がある。
その熱意は、業績不振のときには部内の人間をひっぱる力となる。業績好調のときには、おごりや慢心を生まない雰囲気を作り出す。
また、上司の熱意はチーム全体の生産性にも好影響を及ぼす。仕事に対するひたむきな姿勢が、部下にも伝染する。やる気を刺激するのだ。
仕事中に楽しそうな様子を見せず、生活を維持するためだけに働いているような上司の姿ほど、部下を失望させるものはない。上司の姿に部下は自分の将来の姿を重ねるのだ。自分もこうなるのかと思えば、仕事に身が入らなくなる。
お得感がある
仕事ができる上司には、お得感がある。
・ この人といっしょに働けてよかった
・ この人についていくと、面白い経験ができそうだ
・ この人は自分の能力を引き上げてくれる
など、本人の能力だけでは計れない不思議な魅力がある。ドラマの主人公みたいに、人を惹きつけるのだ。
それもこれも、仕事ができる上司は、相手を気遣う気持ちを持っているからだ。部下の気持ちをくみ取り、ときには寄り添い、ときには叱ってくれるからだ。まるで灯台のように、正しい道に導いてくれる。
そういった細やかな心遣いを忘れない上司となら、部下は安心して仕事ができる。心が開ける。取引先の人も、この人とならいい仕事ができそうだと感じるのだ。
まとめ 部下に好かれる上司を目指そう!
さいごに、仕事ができる上司の条件をまとめておく。
- 相手の立場や気持ちが思いやれる
- オンオフの切り替えがうまい
- 感情に働きかける
- 謙虚である
- コミュニケーションを好む
- 感情がコントロールできる
- ミスを認める
- 判断基準が明確である
- 誠実である
- 言葉遣いに気を配る
- 仕事に情熱を持っている
- お得感がある
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参考書籍:『「できる上司」は部下のどこをみているのか』 – 渋谷晶三