社畜とはなんだ? 社畜の特徴をわかりやすく解説する

社畜とはなんだ? 社畜の特徴をわかりやすく解説する

日本の職場には、言いたいことを言えない雰囲気がある。それが労働者の当たり前の権利だったとしても。

とくにお金に関する発言はタブーだ。残業代をくれませんか? この一言が言えない。この一言を言うと、今まで積み上げてきた信頼や評価が崩れかねない。サービス残業や休日出勤がはびこる。

労働者は我慢に我慢を重ねる。そして僕らは社畜となった。

社畜とはなんだ? この記事では社畜の特徴をわかりやすく解説する。

社畜とは

社畜とは、奴隷として会社で働くように調教された社員をいう。サービス残業や休日出勤を当たり前に受け入れる。会社や上司の命令には必ず「はい」と答える。まわりから見ると異常な働き方をする人たちだ。

社畜本人はその異常さに気がつかない。プライベートの時間がまったくないからだ。仕事とプライベートが混ざり、その境目がない。休日も、体を癒す以外は仕事のことを考える。それほど追い込まれている。冷静になって現状を振り返る余裕がない。

広い意味では、すぐに会社が辞められない人を含む。貯金がまったくない人や、住宅ローンなどの大きな借金がある人など、会社を辞めると生活が成り立たない人たち。転職できるスキルがない人や、特殊な業種すぎてそもそも転職先がない人など、その会社で働く以外に選択肢がない人たち。こういう人たちは会社にしがみつくしかない。

つまり、ほとんどの日本人は社畜といえる。転職がめずらしくなくなった今なお、ひとつの会社で定年まで勤め上げたいと考える日本人は多い。「会社に尽くす」という価値観は、日本人に深く根付く。

終身雇用と年功序列賃金が社畜を産んだ

社畜を知るには、日本独自の雇用システムを理解する必要がある。キーワードは「終身雇用」と「年功序列賃金」だ。

終身雇用は、入社から定年までの約40年間、会社が雇用を保証する制度。年功序列賃金は、本人の実力や仕事の成果ではなく、年齢で給料の額が決まる賃金体系をいう。

日本の雇用システムでは、会社と社員は次の関係にある。「会社は社員の一生を保証する⇔社員は会社に尽くす」。

この雇用システムは会社と社員どちらにもメリットがあった。win-winの関係だ。

社員は安定した暮らしを手に入れた。会社をクビになる心配がないし、歳をとるごとに給料が増えていく。思い切った買い物や人生の選択ができた。住宅ローンを組んだり、結婚して子供を育てたりする不安がなくなった。

会社は社員の忠誠を得た。社員は会社に尽くすことを誓った。社畜になった。理不尽な要求にも黙って従った。マイホームを買ったばかりで転勤を命じられる。単身赴任を受け入れた。会社の命令に従うのが当たり前だった。

社畜が幸せだった時代が終わる

日本の雇用システムは成功した。戦後は各地に広まり、企業は業績を伸ばした。日本は経済大国になった。この時点では、会社に尽くすメリットが大きかった。社畜は幸せな働き方だった。

だが、転機が訪れる。1990年代に入ると、日本経済の成長が鈍る。バブルが弾けた。グローバル化も進む。外国企業との価格競争が始まった。

企業は数年後の経営の見通しが立たない。業績悪化を理由に社員をクビにする会社が現れた。大企業の業績悪化のニュースも珍しくなくなる。入社すれば将来が安泰。そんな企業は存在しなくなった。

終身雇用や年功序列賃金の崩壊が始まる。企業には社員の雇用を保証したり、能力がない人材に高い給料を払ったりする余裕がない。日本の雇用システムは、経済が右肩上がりだった時代だからこそうまくいった。現状維持がやっとの業績では支えきれない。

そして社畜だけが残った

雇用システムの転換期がきた。会社からの見返りはなくなった。会社は社員の一生を保証してくれない。社員には、社畜として会社に尽くす意味がなくなった。両者の関係は解消され、新しい働き方に移るはずだった。

だが、社畜として会社に尽くすという価値観はいまも残っている。雇用の保証という見返りがないのに会社に人生を捧げる、そんな働き方をする人がたくさんいる。安定した企業に勤め、結婚してマイホームを持つのを夢見る人がいる。

少し考えればわかる。社畜と呼ばれる働き方は、会社には都合がよく、社員にはなんのメリットもない。まじめに働けば幸せになれる、そんな時代は終わった。

タイプごとの社畜の特徴

『脱社畜ブログ』の日野瑛太郎さんは、社畜を5タイプに分ける。それぞれの特徴を見てみよう。

  1. 奴隷型社畜
  2. ハチ公型社畜
  3. 寄生虫型社畜
  4. 腰巾着型社畜
  5. ゾンビ型社畜

奴隷型社畜

奴隷型社畜はその名前の通り、奴隷のような働き方をする社畜だ。労働基準法を守らないブラックな企業で働く。サービス残業や休日出勤は当たり前。有給休暇は取れない。

彼らは洗脳済みだ。奴隷教育により、「働く=我慢」「労働基準法を守る会社はこの世に存在しない」と思い込む。逃げ出すのをあきらめ、奴隷の立場に甘んじる。

ハチ公型社畜

ハチ公型社畜はサラリーマンの見本だ。会社への忠誠心が高く、会社を愛する。だが、その気持ちは報われない。片思いだ。

彼らは会社と運命を共にする。業績が悪化したときは、立て直そうと最後まで努力する。情け心から会社を捨てきれない。逃げ遅れて、いっしょに沈む。

またスパイでもある。会社の利益と従業員の利益は対立する場合が多い。その時、彼らは会社側に立つ。彼らを信用すると、後ろから刺される。

寄生虫型社畜

寄生虫型社畜は会社に依存する。何が起きても会社を辞めない。会社にしがみつく。おんぶに抱っこ状態なため、会社も迷惑に思っている。

現在ではリスクが大きい働き方だ。定年までの雇用を保証してくれる会社はない。会社が潰れれば共倒れする。

彼らは社外では通用しない。会社に頼りきり、自分自身を磨いてこなかった。転職市場が求めるレベルにない。

腰巾着型社畜

腰巾着型社畜は上司や先輩に媚びる。ごまをすり、機嫌をとる。会社における居場所の確保に全力をあげる。

終身雇用や年功序列が当たり前だった時代には、「よいしょ」は必要な行動だった。会社には約40年務める。その間、上司は上司のままだ。会社員としての幸せを望むなら、上司に気に入られる必要があった。

だが時代は変わった。社内でうまく立ち回るスキルはいまでも役立つが、会社が潰れては意味がない。手に入れた役職には価値がない。自分磨きを怠ったツケがやってくる。彼らが身につけたスキルは、社内政治以外では輝かない。

ゾンビ型社畜

ゾンビ型社畜はまわりの人を社畜に変えていく。当然、本人も社畜だ。社畜ではない同僚を自分の価値観に染める。宗教の勧誘のように。

彼らは社畜ではない人間が同じ会社にいるのが許せない。同僚の足をひっぱる。定時で帰ろうとすると、「仲間が残っているのに何も感じないわけ?」と責める。

上司や先輩がこのタイプならやっかいだ。彼らは新入社員を片っぱしから社畜に教育する。新入社員は逃げるか、あるいは社畜になるしかない。数年後、会社には社畜しかいない。

社畜の特徴である6つの価値観

社畜には特徴的な6つの価値観がある。なかには「正しい価値観である」と学校で教わったものもある。僕たちはそれを刷り込まれ、疑問を抱かない。当たり前だと思い込んでいる。

思い込みはこわい。よくよく考えてみると、自分たちにはメリットがなく、会社にとって都合がいいだけの価値観だったりする。まんまとだまされているのだ。

やりがいがある

日本人は仕事にやりがいを求める。会社説明会では、やりがいを聞く学生が必ずいる。会社のホームページには、現役社員がやりがいを語るコンテンツがある。

「給料が安くても、休みが少なくても、やりがいがあるからがんばれる」。こういう姿勢で働く人が立派だ。そう感じる若者が少なからずいる。

経営者にはよいカモだ。やりがいを重視する人は都合がいい。仕事量に見合わない低い給料では、普通は労働者から不満が起きる。だが、やりがいで働く一部の人は、やりがいさえあれば不満を言わない。やりがいを与えてくれる会社に感謝さえする。

仕事にやりがいを求めるのは、悪くない。だがそれは、給料や休日が満足できるレベルなのが前提条件だ。やりがいが1番で、給料が安くても休日が少なくてもいいと考えるのは、社畜的な価値観だ。

成長できる

成長も日本人が好きな言葉だ。最近の学生はとくに成長思志向が強い。就職活動では、自分が成長できそうかが判断基準のひとつとなる。仕事を通じて社会人として成長したい、そう考える。

成長志向が強い人はよく働く。やる気があり、努力もする。つらい仕事も途中で投げない。最後までやり遂げる。成長のためなら努力を惜しまない。

悪い人間はそこにつけ込む。ブラックな会社や経営者は、成長というキーワードを使って、言葉たくみに社畜へと導く。やりがい搾取と同じ手口だ。

ただ漠然と成長したいと思っているだけでは、いいように利用される。自分のキャリアプランはしっかりと持つこと。自分が望む成長と、会社が求める成長は同じ方向を向いているか。給料に見合わない仕事に耐えるのを、成長とは呼ばない。

責任を持て

日本ではアルバイトにも仕事の責任を押し付ける。理由は、給料をもらっている以上はプロだから。責任感がない人には社会人失格だと責める。安い給料で、大きな責任を負わせる。

彼らのやり口はずるい。割に合わないと断ると、責任という言葉を使ってこちらを悪者にする。十分な給料を払わない側が悪いのに。

日本社会では「責任が大きい仕事=給料が高い」ではない。給料が安いのに、責任だけが重い仕事がたくさんある。最近では介護職や保育士が話題にのぼる。その職に就くこと自体が社畜なのだから、誰もやりたがらない。

そもそも、日本には仕事の責任範囲を決める習慣がない。問題が起きると、誰が責任を取るかで揉める。責任のなすりつけ合いが始まる。責任を取りたがらない彼らは、「給料をもらっているプロ」と言う側の人間だ。矛盾しているが、これが日本だ。

欧米では入社時に、会社と従業員のあいだで仕事の責任範囲を決める。給料以上の仕事や責任を負わせることはない。代わりに自分の仕事範囲では完璧を求める。責任も取る。

日本の、責任をあいまいにする習慣が社畜を生む。

言い訳するな

日本人は言い訳を嫌う。言い訳せずに、責めを一身に受けるのを美徳とする。学校教育から、失敗を他人や環境のせいにするのは悪い子だと習ってきた。

だが実際には、失敗の原因はひとつに絞れない。失敗はいろいろな人の行動が重なって起こる。仕事は共同作業だ。複数の人間が関わるのに、1人の人物にすべての原因があるなんてありえない。

失敗の原因をたどると、いろいろな人に行き着く。たとえば、上司は部下の管理が仕事だ。部下の能力や体調を見誤り、仕事を振った責任がある。失敗の一端は担いでいる。

また、環境の問題もある。職場は、社員の実力が十分に発揮できるように整っていたか。ミスが起きやすい職場を放置していたなら、経営層にも責任はある。

そもそも、「すべての責任は自分にある」と言っていいのは会社のトップだけだ。平社員レベルが言うと、なんの権力も決定権もないのになにかっこつけてるの?と笑われる。

開き直るのはよくない。反省すべき点はしっかりと反省する。だが、必要以上に責任を感じて自分を責めるのは違う。なんでもかんでも自分のせいにするのは危険な考え方だ。自尊心が低い社員はまわりに利用される。社畜になりやすい傾向がある。

経営者視点を持て

日本の会社は、経営者視点を全社員に求める。若くして課長になったり、すでに部長クラスだったりする人に言うならわかる。彼らは近い将来、経営陣に入る。経営者視点を学ぶのもわかる。

だが、新入社員にも経営者視点を求める。これはおかしい。彼らの何人が経営層まで登りつめるのか。ほとんどの社員は雇用される側で定年を迎える。

経営視点を持って働いても、役員報酬はもらえない。雇われ分の給料しか与えないのに、仕事は経営者と同じ気持ちで取り組めという。給料以上の仕事をやれと言っている。どう考えてもおかしい。

経営者視点は、経営層が持てばいい。役員報酬をもらっているのだから。一般業務もしない、役員的な仕事もしない。あなたたちはなんのために会社にいるのか。そういう話になる。

従業員と経営者の利益は対立する。従業員のデメリットは経営者のメリットになる。サービス残業は人件費の節約になる。有給休暇を取らせないのも、人員が確保できるため経営が楽になる。

結局は社員をこき使うつもりなのだ。経営者視点のいう便利な言葉を使って、自分たちの都合が悪い部分を隠そうとしている。

経営者視点を持つ社員がいると、職場の雰囲気が悪くなる。彼らは、他の社員が自分の権利を主張しているだけなのに、それをわがままだと言う。有給休暇を取ったり、定時に帰ったりするのを邪魔する。こういう人が増えると、職場は無言の圧力に支配される。

経営者は笑いが止まらない。本来なら団結して従業員の権利を主張するところが、仲間同士で足のひっぱり合いをしているのだから。まったく社畜である。

楽をするな

日本人はまじめで正直な人間が好きだ。何事にも正面からぶつかる、正々堂々とした人物を好む。お金の稼ぎ方にも実直さを求める。お金は苦労して稼ぐもの、という価値観を持つ。

楽をしてお金を稼ぐ(ように見える)人を嫌う。ユーチューバーとか、デイトレーダーとか、そういった職業の人たちだ。彼らが楽をしているように見えるのは表面だけで、裏では努力をしているし、それなりのリスクを背負う。だが、正攻法ではないというだけで、叩かれる。

これは職場でも起こる。多くの職場は仕事の成果ではなく、働き方を見る。がんばっている態度を評価する。仕事を効率的に進めて定時に帰る人より、馬鹿正直なやり方で毎日遅くまで残業している人を評価する。前者は楽をしている、怠けていると見るようだ。

楽をするのは悪くない。世の中が便利になったのは、昔の人たちが楽をしたいと思ったからだ。めんどくさいとか、やりたくないとか、そんな気持ちがあったから科学が発達して、機械が発明された。

仕事の評価はあくまで結果だ。そこに至る過程は、社員それぞれが自由に考える。新しいやり方が生まれる。その過程に上司が口を出すと、部下の成長を妨げるだけではなく、会社の成長をも止める。

まわりからどう見えるか。上司の目を気にして、びくびく働く社員ばかりの会社には未来はない。その会社は、職場環境に大きな問題を抱えている。

サラリーマンは辛いよ アメリカ人もドン引きする日本人の働き方

参考書籍:『あ、「やりがい」とかいらないんで、とりあえず残業代ください』 – 日野瑛太郎

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