有名大学や体育会出身者が有利? 出世にまつわる都市伝説のウソ・ホント

有名大学や体育会出身者が有利? 出世にまつわる都市伝説のウソ・ホント

多くのビジネスパーソンにとって、出世は興味を引く話題だ。

働き方改革やライフワークバランスといった言葉が登場し、仕事以外の時間を大切にする人が増えてきた。若者を中心に、出世を望まない人が多くなったようなイメージがあるが、そんなことはない。出世したいと思っている人の割合は、今も昔も変わらず50%前後だ。

日本生産性本部の調査によると、2017年春に入社した新入社員の48%が、課長以上の管理職に出世したいと答えている。この割合は、いまの30代40代が新入社員だったころと大きく変わらない。時代が変わっても、ビジネスパーソンにとって出世は大きな関心ごとなのだ。

そこで気になるのは、出世にまつわるうわさだ。「あの会社は〇〇大学出身の社長ばかり」「体育会出身者は出世に有利」など、出世にはいくつかの都市伝説がある。ホントなのか、ウソなのか。出世にまつわる都市伝説を検証してみよう。

出世にまつわる7つの都市伝説を検証

検証するのは、出世にまつわる次の都市伝説だ。

  1. 出身大学で出世に有利不利がある
  2. 体育会出身者は出世に有利である
  3. 企業には出世コースが存在する
  4. 出世には年次ごとに定員がある
  5. 遊び上手は出世する
  6. 上司に反抗すると出世する
  7. これからは女性のほうが出世に有利である

出世に有利なのか、不利なのか。ホントなのか、ウソなのか。見ていこう。

出身大学で出世に有利不利がある

中央官庁や大企業には、出身大学による「学閥」があると言われている。官僚のトップを目指すには東京大学出身が条件だったり、財界や医学界では、慶應義塾大学出身者が集まる「三田会」が影響力を持っていたり。こんなうわさを聞いたことがある人もいるだろう。

出身大学によって出世に有利不利があるのだろうか?

最近では学歴主義は影を潜め、出世の条件は実力にシフトしている。民間企業では、昇進・昇格で学歴をそれほど重視しない。

背景にはビジネスのグローバル化がある。日本企業は、海外企業との激しい争いに巻き込まれた。生き残りに必死だ。社内で内輪揉めをやっていられるほど、おだやかな時代はすでに終わった。企業には、実力がない人物を出世させる余裕がない。この流れは、今後も加速していくはずだ。

だが、まったく関係がないわけではない。大学の同窓ネットワークが社内にある場合は、人脈作りに有利だ。困ったときにサポートを受けられる可能性も高い。

学閥は大学でいうところのサークルだ。サークルに入ると、先輩から過去問がもらえたり、単位取得が優しい教授を教えてもらえたりする。似た恩恵を社内でも受けられるのは心強い。

出身大学による後ろ盾がない人は、新しい派閥を自分で立ち上げる方法がある。馬が合う同僚を集めて、定期的に勉強会を開くのだ。意見交換会などの開催を人事部や会社幹部に希望するのもいい。会社側には、仕事への意欲が高く、リーダーシップに優れた人材に映るはずだ。

体育会出身者は出世に有利である

大学の体育会出身者は、新卒採用では有利と言われる。体力が求められる職場や、上下関係がきびしい組織では、体育会出身者が活躍しているイメージがある。じっさい、有名企業の経営者には体育会出身者が多い。

体育会出身者は出世に有利なのか?

今の時代、体育会出身というだけで人事面で優遇されることはまずない。年次、能力、実績がまったく同じ2人がいたとして、やっと体育会出身という手札が役に立つくらいだ。

体育会出身者がひいきされるのではなく、体育会で身に付けた行動習慣が企業では評価されるのだ。それは、出世する人の共通点を見ればわかる。

  • 会社の命令に忠誠を尽くす
  • 他の社員よりハードに働く
  • 安定して実績を上げる

この条件を満たせば、出世に有利なのは当然だ。体育会出身者は、きびしい上下関係の中でハードなトレーニングを経験している。ビジネスパーソンとしての資質をもともと備えている場合が多いのだ。

日本企業には、組織のために自分を犠牲にできる人材を高く評価する風潮がある。体育会出身者は、組織行動の規範を徹底的に叩き込まれている。フォアザチームの精神だ。この点が、企業の評価方針に一致するのだ。

企業には出世コースが存在する

あの人は「乗った」「外れた」と語られる出世コース。ほとんどの企業では出世コースが存在する。

企業では、競争に生き残った者に管理職のポストを与えるのが、もっとも効率がいい人材選別法だと考えられている。人事部は、幹部候補に対して試練を与える。若手のうちにきびしい経験をさせて成長をうながす。

出世コースは大きく「営業系」と「技術系」に分かれる。目安となるのは歴代社長の経歴だ。本社の基幹部署をはじめ、大都市の大型支部・支店を経るコースが多い。2〜4年ごとの異動・転勤先のすべてで実績を残すのが、昇進・昇格の条件になる。

なかには例外もある。一般的には左遷扱いである関連会社への出向などが、出世コースに位置付けられている場合だ。成長をうながすために、優秀な社員をあえて崖から突き落とす。逆境に負けず、本人が這い上がってくるのを待つのだ。

最近では、出世コースも一本道ではない。本流と呼ばれるコースだけでは、同じ経験を持つ似通った人材ばかりになる。それではビジネス環境の変化に弱い組織になる。ビジネス環境はめまぐるしく変わる。企業が生き残るには、そのスピードに対応できるようにさまざまな人材を育てなければいけない。

たとえば、「スペシャリスト(専門職)」と「プロフェッショナル(管理職)」に人材を分ける。前者には、知識や技術の蓄積を優先させるために異動の少ないコースを設定する。後者には、さまざまな経験を積ませるための、定期的な異動が前提となるコースを用意する。外部からは、誰が出世コースに「乗った」のか、「外れた」のかわかりづらくなっている。

出世コースに乗ったからといって安心するのははやい。出世コースは乗ってからが大変なのだ。

多くの企業では、人事評価は相対評価だ。優秀なメンバーが集まる部署・支店において、高い評価を残し続けるのは簡単ではない。自分が納得できる実績を残したと思っていても、ライバルがさらに上回る実績をあげたら、評価は下がる。生半可な気持ちではすぐに脱落者だ。

組織の頂点を目指すつもりがないなら、出世コースをわざと外れてみるのもひとつの手だ。具体的には、少しランクが落ちる部署で高い評価を取り続ける。人事評価で「A」を得たら、その価値はどの部署でも基本的には同じだ。

出世コースで生き残るのはごくわずか。出世コースをはずれて脱落者の烙印を押されるくらいなら、はじめから独自路線を貫いたほうが最終的な役職では逆転できる可能性が高い。

出世には年次ごとに定員がある

人事制度上、民間企業では年次別に管理職の定数が割り当てられているということは、まずない。

だが、入社するタイミングによって出世には有利不利がある。成長期の会社では、新しい部署が増えていく。管理職のポストもつぎつぎと設けられる。企業では、特定の年次に管理職が固まっているケースがある。彼らは、自分が管理職になる時期と会社の成長期がぴったり合わさったのだ。

最近は、長年の景気低迷によって業績が苦しい企業が多い。管理職のポストは減り続けている。課長になれるのは、10人に1人と言われる時代だ。限られたポストをやりくりして、企業は新陳代謝を図らなくてはならない。

世代交代に失敗した企業は、時代に取り残される。人事部は、定年退職者を見込んだ先々の年齢構成の推移や、現行のポストの数、管理職者の職務期間などから、人材の登用や育成を計画的におこなっていく。

各年次から昇格できる人数はおのずと決まってくる。結果的には、定員制と変わりない運用になってしまうケースが多い。40代前半にはそれなりのポストに着いていなければ、それ以降のさらなる出世はきびしいのが現実だ。

遊び上手は出世する

遊び上手な人は、出世につながりやすい資質を持つ。彼らは社交的な人が多く、コミュニケーション能力が高い。話題が豊富で、人脈作りも得意だ。

評価されるのはその行動力だ。彼らは遊びのためなら、休日の早朝からでも喜んで出掛ける。その姿勢に、誘った側は良い印象を受ける。知ってか知らでか、社内外でビジネスチャンスやネットワークが広がっていく。

ビジネスに活かせる遊びの代表格はゴルフだ。課長以上の管理職では、役職が高い人ほど若くからゴルフを始めているというデータがある。最近では、ジョギングを趣味にする経営者も多い。

遊びは趣味であるだけに、普段はきびしい経営層の人たちも心を開きやすい。関係を深める強いコミュニケーションツールになる。遊び上手が出世するのもうなづける。もちろん、仕事ができることが前提となるが。

上司に反抗すると出世する

上司に反抗する人物が出世するとは思えないが、意外と盲点なのかしれない。サラリーマンを描いた小説やドラマの主人公は、必ずといっていいほど上司とかみつく。有名な経営者の自伝には、上司に逆らったエピソードが書いてある。

いくら正論を主張しても、それが結果につながらなければ、会社には評価されない。組織の秩序を乱すただの厄介者だ。結果を出し続けるからこそ、かみつかれて不愉快な思いをした上司も、最終的には折れるしかない。結果が重要なのであって、上司にかみつく態度が評価されたわけではない。

上司に反抗するのは、圧倒的にリスクのほうが大きい。部下にかみつかれた上司は、上長としての立場がない。怒りや恨みといった負の感情が残る。仕事でのささいなつまずきから、理不尽な扱いを受けるかもしれない。組織に居場所がなくなる。

だが、反抗したくなる上司が多いのも確かだ。どうしても上司にかみつきたい場合は、感情で動くのではなく、しっかりと準備をしよう。具体的には、事前に根回しをして強力な味方を集める。反旗をひるがえしていいのは、自分が勝てる場合のみだ。

これからは女性のほうが出世に有利である

政府は「2020年に女性管理職の割合30%」(女性活躍推進法)を掲げている。女性が活躍する企業は、「えるぼし認定企業」として厚生労働大臣の認定を受けることができる。えるぼし認定企業には、落札形式の公共事業で加点をもらえるなどのメリットがある。

女性活躍推進法特集ページ – 厚生労働省

企業では、昇進・昇格において女性を優先するケースが増えつつある。なかには、優秀な女性を管理職や幹部候補として抜擢して、女性管理職研修を受講させる企業もあるようだ。

女性にとっては有利な状況ではあるが、悩みの種でもある。仕事ができる女性のビジネスパーソンとしては、実力で出世したとしても、見えざる力が働いたとまわりからは見られがちだ。そもそも、男性が有利とか、女性が有利とか、仕事の能力に性差を加味して判断すること自体がばかばかしい。

女性の出世には、育児や出産を含めたキャリアプランの設計が重要だ。それにはパートナーである男性の協力が欠かせない。男性側の意識改革も不可欠となる。

日本企業には、男性文化が根強く残っている。その文化を取り除き、男性女性関係なく実力のある者が出世するのが当たり前になるには、もう少し時間がかかりそうだ。

とはいえ、現在の流れは女性には追い風だ。働き方改革の流れにうまく乗って出世するには、自分がやりたい仕事や、その仕事を実現するための働き方をしっかりと整理し、準備しておくのが大切だ。

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参考書籍:日経ビジネスアソシエ(2018年1月号)

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