怒りっぽい人は「仕事」「お金」「健康」で損をする

怒りっぽい人は「仕事」「お金」「健康」で損をする

「怒り」というネガティブな感情が、自分の人生にどれほどの不利益をもたらすのかを考えたことはあるだろうか?

ストレスの多い社会で、イライラを完全にコントロールするのはむずかしい。だが、怒りがもたらすデメリットを理解しておけば、感情を表に出してしまうのは少しは抑えられるかもしれない。

怒る側と怒られる側には大きな認識の違いがある

部下を怒った感情はどれくらい続くか? 部下を怒ったことはパワハラだと思うか? 怒ったあと、人間関係は回復したか?

アンケートの概要

一般社団法人日本アンガーマネジメント協会調べ。

対象;社員100人以上の企業に勤める男女とコールセンター勤務の男女。部下、後輩、顧客に怒ったことがある515人、上司、先輩、顧客に怒られたことがある774人。

調査期間;2016年3月11日〜14日(全国)

上記のデータが示すとおり、怒る側と怒られる側には大きな認識の違いがある。

まずは「怒ったときの感情がどれだけ続くか?」という問いに対して。怒った側は「数分程度」が44%、「ほんの一瞬」が18%、「数十分程度」が14%と答えている。4人のうち3人の怒りの感情はすぐにおさまっている。怒られた側の回答は割れているが、「1年以上」がもっとも多く、70%の人が怒りの感情は「1週間」以上続くと答えている。

つぎは「パワハラだと思うか?」の問い。怒るほうは「20%弱」しか気にしてないのに対して、怒られたほうは「50%以上」がそうだと答えている。

さいごに「人間関係が回復したか?」の問いに対して。怒った側の50%弱が「だいぶ回復した」、怒られた側の50%弱が「全く回復していない」と答えている。

つまり、怒った側は、自分が怒ったことはすでに忘れているが、怒られた側はパワハラだとずっと根に持っているということだ。怒りっぽいと自覚している人は、この認識の違いを心にとどめて、態度を改めたほうがいいだろう。

怒りっぽい人は出世できない

怒りっぽい人は出世できない職場でまったくストレスを感じない人は少ない。ある程度の人数が集まると、人間関係のいざこざはどうしても起きる。これは仕方がないことだ。上司や同僚の何気ないひと言、部下の生意気な態度、取引先からの理不尽な要求など、職場にはストレスの原因が多すぎる。

表情や態度として、ストレスが表に出てくるまでには一定のサイクルがある。ストレスがイライラという感情を引き起こし、イライラが抑えきれなくなると、グチや怒りとなって吹き出す。まわりから「怒りっぽい」「気が短い」「短気」と評価されるのは、他の人と比べてこのサイクルが短い人だ。

怒りの感情は組織の秩序を乱す

職場でたびたびトラブルを起こす人物は出世できない。怒りっぽい人はささいなことで感情的になるからだ。たとえば、自分の仕事の進め方に少し口をはさまれただけで、同僚や上司と口論になる。組織でトラブルを起こした場合には、たとえ正しい意見を言っていたとしても、自分だけがノーダメージというわけにはいかない。なんらかのペナルティーを与えられる。昇進が遅れたり、異動を命じられたりするだろう。

会社は組織の秩序を乱す人物には重要なポストを与えない。管理職にはさまざまな意見を聞いて、チームを運営する能力が不可欠だ。会社での立場が高くなるほど、この能力が重要視される。怒りっぽい人は他人の話を聞き入れようとはしない。マネジメント能力が欠けているとみなされる。昇進のチャンスを逃してしまう。

組織では上司に厄介者だと思われたらおしまいだ。普段から職場の環境や会社の方針に文句を言っている人は目をつけられていると思ったほうがいい。上司はひとつひとつの発言には注意しないが、しっかりと見ている。仕事を順調にこなしていても、ひとつのミスがきっかけで「ここぞ」とばかりに出世とは程遠い部署へ追いやられるかもしれない。

怒りの感情は人間関係を壊す

部下がミスを犯したとき、みんなの前でいっぽう的に怒鳴りつけ、言い訳をいっさい認めない上司がいる。なかには部下に当たることで、自分のストレスを発散している上司もいる。パワーハラスメントとして問題になっている行為だ。

パワハラにはひとつの特徴がある。問題が表面化した時点ですでに手遅れになっているということだ。一度壊れた人間関係を元どおりにするのはむずかしい。

感情のマネジメントができない人は、チームのマネジメントもできない。部下や同僚、上司とトラブルを起こす人物は厄介者として会社からは評価されない。

怒りっぽい人は、組織から孤立する。常にイライラしている人は取っつきにくい。近寄りたくない存在だ。当然、社内の人には距離を置かれる。会話が減り、情報が入ってこない不利な立場になる。部下や他の部署に頼みごとをしても、後まわしにされる。嫌われているので、十分な協力は得られない。

同僚や部下は、怒りっぽい人には気軽に話せない。ささいな発言で機嫌が悪くなる人には、本音を話そうとは思わない。知らないうちに裸の王様になってしまう。みんなが知っている情報を自分だけが知らないという状況が起きる。管理職としては致命的だ。

怒りっぽい人は人間関係をうまく構築できず、ビジネスパーソンとして信頼できない人物と言える。

怒りっぽい人はお金が貯まらない

怒りっぽい人はお金が貯まらないお金の使い方には、その人の個性が現われやすい。とくに浪費や無駄遣いには、自分の性格、そのときの精神状態がはっきりと映しだされる。たとえば買い物をする場合、「今使わないものは絶対に買わない」という性格の人もいれば、「今後使うかもしれないから買っておこう」と考える人もいる。普段は倹約家タイプの人でも、イライラしているときには衝動買いをしてしまうかもしれない。

ストレス発散のために買い物をするのは女性をイメージしがちだが、衝動買いは女性特有の行動ではない。ストレスで散財してしまう男性は多い。スーツをオーダーしたり、ドレスシューズやビジネスバッグを買いかえたりなど、男性の無駄遣いは仕事関連の支出が増える傾向があるようだ。

仕事でイライラしたときには、お酒が飲みたくなる。怒りっぽい人ほど、イライラする回数は多くなるので、飲み代が増える。また、仕事でのイライラを家庭内に持ち込んでしまうケースも多い。夫婦間のいざこざで家がやすらぎの場所ではなくなっている人には、居酒屋やバーだけが唯一の心が休まる場所になる。さらに支出は増えるだろう。

怒りっぽい人の特徴は「聞く耳を持たないこと」。たとえば、買い物代や飲み代を減らして月に2万円節約できれば、定年までの40年間で1,000万円近く貯められる。しかし、毎月の無駄遣いが家計を圧迫しているのを知っていながら、改めようとはしない。怒りっぽい人は現実を見ようとはしないのだ。当然、他人のアドバイスは受け入れない。

家計に問題があることは理解しているけれど、それを認めようとはしない。現実に目を向けず、逃げようとする。お金の使い方を変えるのは、行動や考え方を変えるということ。怒りっぽい人は自分の非を認めたくないのだ。

怒りっぽい人は寿命を縮めている

怒りっぽい人は寿命を縮める怒りという感情は健康にはよくない。興奮状態になると人はアドレナリンを分泌する。アドレナリンには、集中力を高めるなどのプラスの働きがあるが、血圧や心拍数を上昇させ、循環器系に高い負荷を与えるというマイナスの作用もある。高血圧の状態が続くと、心臓には負担がかかり、心筋梗塞のリスクが高まる。血管が切れて、脳内出血を起こす可能性もある。いつもまわりを怒鳴り散らしている人は、長い間血管に高い圧力がかかっているので、そのぶん劣化がはやい。血管は消耗品。若い頃のツケはあとで払うことになる。

イライラすると血中にコルチゾールというステロイドホルモンが増える。このホルモンの分泌量が多すぎると、免疫力が下がり、風邪やインフルエンザにかかりやすくなる。

コルチゾールはストレスホルモンとも呼ばれている。血糖値を上げたり、脂肪を溜め込んだりする。管理職に昇進したり、他の部署へ異動したりすると、ぶくぶくと太りだす人がいる。これは新しい環境で思い通りにいかないことでストレスがたまり、体重が増えている可能性がある。食事量に変化がないのであれば、コルチゾールが関係しているかもしれない。

怒りっぽい人はうつになりやすい

変化は体だけではなく、心にもあらわれる。怒りっぽい人は傷つきやすく、他人の評価を気にする傾向がある。メンタルが弱く、劣等感を感じやすいのだ。自分が思っているよりまわりからの評価が低いと、強いストレスを感じる。自分の企画がボツになったとき、我慢強い人は「上司は自分とは考え方が違う」と自分自身を納得させる。しかし、気が短い人は自分の中で折り合いをつけられず、「上司に問題がある」といつまでも引きずる。考えれば考えるほど、ストレスは積み上がっていく。このような状況が続くと、ひどい場合にはうつになってしまう。

メンタルヘルスには、ストレスに打ち勝つ指標として「SOC(Sence of Coherence)」という3つの要素がある。

有意味感

辛い場面に直面したとき、それが自分にとって何らかの意味があると認識できる感覚。

把握可能感

困難な状況でもあせらず、冷静に分析して全体像を把握できる感覚。

処理可能感

辛い立場でも「なんとかなるだろう」と思える感覚。

SOCが高い人ほど、うつになりにくい。怒りの感情も湧きにくい。怒りっぽい人はストレス耐性が低いのだ。

イライラ指数診断テスト

怒りっぽいのか、我慢強いのかは、その人の我慢の限界値によって決まる。同じくらいのイライラでも、我慢の限界値が高い人は怒りを表情や態度に出さずに済むことが多い。ストレス耐性は人によって差がある。

心理テスト用意したのでチェックしてみてほしい。以下のような場面に遭遇したとき、まっさきに思うのはどんなことだろう? 近いほうを選んでほしい(2秒以上は考えないで)。

仕事編

  • 商談に向かう途中に電車が遅延。約束の時間に5分ほど遅れそうだ。
    1. もう少しはやく出発すればよかった。
    2. 遅延が多すぎない?
  • 雑談好きな同僚が仕事中に話しかけてきた。
    1. 社内のコミュニケーションは大事。
    2. 仕事の邪魔。さっさとどこかへ行ってほしい。
  • 「君にしか任せられない仕事」と上司に仕事を依頼された。
    1. 頼りにされている。がんばろう。
    2. 誰にでも同じこと言ってるくせに。
  • 会議の資料を任せている部下が、締め切りの日に「間に合わない」と申し出た。
    1. 進み具合を確認するべきだった。
    2. どうしてもっとはやく言わないんだ?
  • 自分の能力ではむずかしい仕事を与えられた。
    1. 成長するチャンス。がんばろう。
    2. どうして自分なの? 他に適任者がいるだろう。
  • 「悩みを相談したいから時間をとってほしい」と部下に頼まれた。
    1. 仕事がおわったら飲みにでも連れてってやろう。
    2. 明日の朝に会議室で聞こう。

プライベート編

  • 飲み歩いていたら、どこかでスマホを落としたみたいだ。
    1. 自業自得。今度から気をつけよう。
    2. まじかよ。店に電話するのめんどうくさい。
  • ATMで並んだ列がなかなか進まない。
    1. 次はこの時間を避けよう。
    2. なんでそんなに時間がかかるの?
  • 買おうと思っていたものが売り切れていた。
    1. 縁がなかった。もっといいものが見つかるかも。
    2. 失敗した。もっとはやく買っておけばよかった。
  • 友人が風邪をひき、今日の予定がキャンセルになった。
    1. 風邪ならしょうがない。
    2. 前日には伝えてほしかった。
  • 店員が注文の順番を間違えて、あとに注文した人の分を先に作った。
    1. 忙しそう。誰にでも間違いはある。
    2. ふざけるな。気が抜けているんじゃないか?
  • タクシーの運転手がタメ口で話しかけてきた。
    1. 二度と合わないだろうし放っておこう。
    2. こっちもタメ口で話してやろう。

2を選んだ数があなたの点数だ。当てはまる診断結果を見てみよう。

2点以下

そもそもイライラを感じることが少ないタイプ。すべての物事を良い方向に考えるので、腹を立てることがなく、ストレスもたまらない。誰かを叱らなければいけない場面でも、感情的にはならない。まわりからは一目置かれているはず。

3〜5点

イライラすることがあっても、だいたいは自分の中で消化できるタイプ。まわりからは穏やかな人だと思われている。仕事でもプライベートでも人間関係は良好のはず。気づかないうちにストレスがたまっているかもしれないので、意識的に気分転換をしよう。

6〜8点

怒りっぽくもなく、我慢強くもない普通なタイプ。イライラしているときには、まわりの人から付き合いにくいと思われているかも。どんなときに自分がイライラすることが多いのかを一度振り返ってみては?

9〜11点

イライラしたとき、表情や態度に出てしまうことがよくあるタイプ。まわりの人には怒りっぽい人だと思われている。ストレスを感じやすく、物事をマイナス方向に考えがち。イライラしたときには一呼吸置くクセをつけたほうがいいだろう。

12点

いつも何かにイライラしていて、すぐに表に出てしまうタイプ。感情のコントロールができず、常にケンカ腰で接してしまうので、まわりの人との争いが絶えない。ここまでくると性格の問題だけではないかも。一度専門機関でストレスチェックを受けよう。

9点以上の人は、イライラを表に出してまわりに迷惑をかける典型的なタイプだ。相手は緊張してしまって話しかけにくくなる。職場でも、プライベートでもあらゆる場面で損をするだろう。無用なトラブルを避けるには、多少嫌なことがあっても表情や態度に出さない訓練が必要だ。

イライラという感情自体を消し去るのはむずかしい。無理やり怒りの感情を抑えようとはせず、怒りを冷静に見るように努力をする。この瞬間に腹を立てたらどんなことが怒るのかを想像してみるのだ。

たとえば、誰かに対してイライラしたときには、ガツンと言ってしまえば気持ちがいいかもしれない。だけど、一旦立ち止まって、怒鳴ることで部下は自分を怖がるのではないかと想像してみる。部下の気持ちがまわりにも伝わり、チーム全体の雰囲気が悪くなるのではないかとイメージしてみる。このようなことをシミュレーションしているあいだにカッとなっている気持ちは収まっていくはず。これを習慣にすれば、イライラを客観的に受け止められるようになる。

しかし、我慢のしすぎはストレスの元。ときには信頼できる友人にグチを聞いてもらったり、ストレスチェックを受けたりしよう。

自分のことは自分ではわからないもの。気がつくとまわりには誰もいなくなっていた、なんてことにならないようにしたい。怒りっぽい自覚のある人は、自分の気持ちを客観視できるように、一呼吸置くことを心がけたい。

怒りっぽい人は「仕事」「お金」「健康」で損をする