民間企業で働く人の2018年の年次有給休暇取得率は52.4%(前年+1.3)だった。厚生省が29日に公表した就労条件総合調査でわかった。
年次有給休暇の労働者1人あたりの平均付与日数は、18.0日(前年-0.2)、平均取得日数は9.4日(前年+0.1)だった。
政府は2020年の年休取得率70%を目指している。企業や労働者の意識が急速に変わらないかぎり、実現はむずかしそうだ。
【グラフをみるときの注意点】
- 労働者1人あたりの数値である
- 付与日数は繰越日数を除く
- 取得日数は2018年の1年間に実際に取得した日数である
- 取得率は取得日数/付与日数*100(%)である
mokuji
2018年度の民間企業の年次有給休暇取得率は52.4%

2018年の年次有給休暇の取得状況は、
- 平均付与日数 18.2日(前年-0.2)
- 平均取得日数 9.4日 (前年+0.1)
- 平均取得率 52.4%(前年+1.3)
だった。
年次有給休暇取得率は女性が高い

男女別でみると、取得率は女性が(+8.9)高くなった。付与日数は男性が(+1.3)多く、取得日数は女性が(+0.9)多い。
付与日数は、
- 男性 18.4日
- 女性 17.1日
取得日数は、
- 男性 9.0日
- 女性 9.9日
取得率は、
- 男性 49.1%
- 女性 58.0%
だった。
年次有給休暇取得率は大企業が高い

会社規模別にみると、社員の人数が多くなるほど、付与日数と取得日数が多くなり、取得率が高くなる。
社員数が1000+(1000人以上)の会社と30-99の会社を比べると、取得率は1000+が(+11.4)高い。付与日数は1000+が(+1.3)多く、取得日数は(+2.7)多い。
付与日数は、
- 1000+ 18.6日
- 300-999 18.0日
- 100-299 17.7日
- 30-99 17.3日
取得日数は、
- 1000+ 10.9日
- 300-999 9.0日
- 100-299 8.7日
- 30-99 8.2日
取得率は、
- 1000+ 58.6%
- 300-999 49.8%
- 100-299 49.4%
- 30-99 47.2%
だった。
年次有給休暇取得率は10年間で5.3%高くなった【2009-2018】

年次有給休暇取得率は10年間で(+5.3)高くなった。
- 2009年 47.1%
- 2018年 52.4%
全体でみると右肩上がりだが、2012年と2014年の落ち込みが気になる。
2012年は東日本大震災の翌年である。
国内では、
- 尖閣・竹島で中国・韓国との関係悪化
- 原発、一時稼働ゼロ
- 消費税法が成立
- 景気、後退局面に
- 家電大手、軒並み業績悪化
海外では、
- 欧州の債務危機続く
- 中国など新興国の景気減速
などがあった年である。
▼【参考記事】2012年10大ニュース – 時事ドットコム
2014年はアベノミクスがはじまった年の翌年である。
国内では、
- 消費税10%への引き上げ延期
- 御獄山が噴火、57人死亡6人不明
- 広島で土砂災害、74人死亡
- 7年ぶりの円安・株高
海外では、
- ウクライナ危機
- イスラム国が勢力拡大、有志連合空爆
- エポラ出血熱感染拡大、死者6000人
- 韓国旅客線事故で304人死亡・不明
などがあった年である。
▼【参考記事】2014年10大ニュース – 時事ドットコム
年次有給休暇取得率は男性が伸びている

男女別の調査が始まったのは2012年からである。
年次有給休暇取得率は男性が伸びている。
男女別でみると、年次有給休暇取得率は10年間で男性が(+4.9)、女性が(+4.6)高くなった。
- 2009年 男性 44.2% 女性 53.4%
- 2018年 男性 49.1% 女性 58.0%
年次有給休暇取得率は従業員数100人未満の企業で伸びている

年次有給休暇取得率は従業員数100人未満の企業で伸びている。といっても、10年前の大企業の水準にも届いていない。
会社規模別でみると、年次有給休暇取得率は10年間で1000+が(+5.1)、300-999が(+4.9)、100-299が(+4.4)、30-99が(+6.2)高くなった。
- 1000+ 53.5% → 58.6%
- 300-999 44.9% → 49.8%
- 100-299 45.0% → 49.4%
- 30-99 41.0% → 47.2%
年次有給取得率が高い業種・低い業種

産業別の調査は2017年でおわった。
有給休暇取得率の高い業種トップ5は、
- 電気・ガス・熱供給・水道業 72.9%
- 複合サービス事業 64.7%
- 鉱業,採石業,砂利採取業 62.9%
- 情報通信業 59.8%
- 製造業 58.4%
有給休暇取得率の低い業種ワースト5は、
- 教育,学習支援業 43.3%
- 建設業 38.5%
- 生活関連サービス業,娯楽業 36.5%
- 卸売業,小売業 35.8%
- 宿泊業,飲食サービス業 32.5%
である。
有給取得率のもっとも高い「電気・ガス・熱供給・水道業」と、もっとも低い「宿泊業,飲食サービス業」を比べると倍以上(+40.4)の差がある。
年次有給休暇とは本来、すべて取得されるものである
年次有給休暇は、法律で定められた労働者に与えられた権利である。
正社員、パートタイムなどの区分に関係なく、以下の2点を満たしていれば年次有給休暇が取得できる。【労働基準法第39条】
- 6ヶ月間、継続して雇われている
- 全労働日の8割以上を出勤している
労働基準法が改正された。2019年(令和元年)4月から使用者(雇い主)は、その1年で10日以上の有給休暇を取得する労働者に「年間5日間」の年次有給休暇を確実に取得させることが義務となった。
これは「毎年5日間、有給休暇を取得すればいい」ということではない。年次有給休暇を請求することにためらいを感じてまったく使えない人への、せめてもの救済である。
有給休暇は本来、すべて取得されるべきものである。
【参考サイト】年次有給休暇取得促進特設サイト – 厚生労働省
政府の数値目標は、2020年までに年次有給休暇取得率70%である。目標があれば超えるのが、ビジネスパーソンだろう。