大人の発達障害の仕事上での特徴を知る|職場での対応をまとめた

大人の発達障害の仕事上での特徴を知る|職場での対応をまとめた

基本的には普通の人。ある種の仕事では優秀。だけど、簡単なミスを繰り返したり、極端にコミュニケーションを苦手としたりする。できることとできないことの偏りが大きい。これが、大人の発達障害の仕事上での特徴だ。

大なり小なり誰にでも当てはまる部分があるのが、大人の発達障害だ。普通の人との境界線をはっきり引くことができない。そのため、職場の人は大人の発達障害だと気づかず、変人扱いする。本人が仕事をしづらく、職場の対応がむずかしい原因だ。

ここでは、大人の発達障害の仕事上での特徴を紹介する。あわせて、職場での対応もまとめた。

大人の発達障害の特徴を知る

大人の発達障害とは

発達障害とは、脳の認知機能の偏りにより、普通の社会生活が送りづらくなる症状だ。認知機能とは、モノゴトを正しく理解し、適切に行動するための機能のことだ。

発達障害はこれまで子供の問題として扱われてきたが、近年は同じ症状に苦しむ大人が注目されはじめた。子供の発達障害は知的障害を同時に抱える場合があるが、大人の発達障害の多くは知性に問題は見られない。普通の生活を送り、大学を卒業し、就職したあとで、はじめて発達障害だと気づくのが大人の発達障害の特徴だ。

大人の発達障害が注目されるようになった背景には、社会の変化がある。日本の中心となる仕事が製造業からサービス業に変わり、従業員はより柔軟な対応を求められるようになった。デジタル機器の発達により、仕事の量が急激に増えた。いままで目立たなかった大人の発達障害を持つ人たちが、この変化についていけないことであぶり出されたのだ。

大人の発達障害で仕事の支障となるのは2種類

仕事の支障となりやすい大人の発達障害は、大きく分けて2種類だ。

ひとつは「ADHD(注意欠陥多動性障害)」。ADHDには、不注意と多動生・衝動性のふたつの特徴がある。注意力が続かず、忘れ物や遅刻が多くなるのが不注意の特徴。せっかち、怒りっぽいのが多動性・衝動性の特徴だ。

もうひとつは「自閉スペクトラム症」。自閉スペクトラム症は、他人との関係を作るのがむずかしい症状。相手の気持ちを無視するような発言など、空気を読めない行動が特徴だ。ルーティンワークのようにパターン化された仕事は得意だが、状況の変化に応じて、適切な行動をとることができない。

ふたつの障害特徴を併せ持つ人も多い。症状の大きい小さいに違いはあるが、発達障害を持つ人の60〜70%が、ADHDと自閉スペクトラム症の特徴を同時に抱えていることがわかっている。

どちらの症状も、パターン的な行動を好むという点で共通している。ルーティンワークは得意だが、臨機応変に対応するのは苦手だ。

発達障害の仕事上での問題

ADHDも自閉スペクトラム症も、脳の機能上の問題だ。しかし、まわりからは「だらしない」「気遣いができない」など、性格の問題として見られる。そのため、職場の人と衝突したり、怒られたりする機会が増える。そのストレスが原因となり、うつ病などの二次障害を引き起こすこともある。うつ症状のきっかけが発達障害の可能性もあるのだ。

大人の発達障害の特徴は、大なり小なり誰にも当てはまるものばかり。発達障害を持つ人が働きやすい職場を作るには職場の人たちの理解が必要だ。とくに上司は、発達障害の特徴を理解し、部下の個性だと受け入れること。できることと、できないことを見極めた上で指導することが大切になる。

大人の発達障害の治療

大人の発達障害を完全に治療するのは、現在の医学ではむずかしい。薬で症状を抑えることはできても、脳の機能自体を変えることはできない。

発達障害の治療は、障害とうまく付き合いつつ、社会に適応する訓練を行う。ADHDなら忘れ物を防ぐ工夫を、自閉スペクトラム症なら好印象を与える態度や言葉遣いを指導される。

社会人のマナー教室と同じだ。うっかりミスすることや、空気を読めないことは誰にでもあること。大人の発達障害を抱える人と普通の人とのあいだには、はっきりした境界線はなく、ただの濃淡の問題だと考えられている。

大人の発達障害の仕事上での特徴と職場での対応

1同じミスを繰り返す

何度も注意しても同じミスを繰り返すのは、ADHAの特徴だ。ADHDの人は、言われたことを一時的に記憶する「ワーキングメモリ」の容量が少ないと考えられている。モノゴトの手順や方法を忘れてしまうことが多い。

本人の対応

記憶に頼らないこと、メモを取ることが大切だ。手順が決まっている仕事はノートに手順を書き、いつでも見れるようにマニュアルしておくといい。

職場の対応

頼みごとをするときは、指示内容をはっきりとシンプルに伝える。「あの資料」「できるだけ早く」など、あいまいな言葉は使わないこと。「A社に渡すBの資料、〇/〇の朝〇時までに用意してほしい」と具体的に表現する。相手がメモを取っているのを確認しながら、ゆっくり話すのも大切だ。

2忘れ物や遅刻が多い

ADHAには多動性・衝動性・不注意の3つの特徴がある。なかでも、大人の発達障害でもっとも目立つのが不注意。持ってくるものを忘れる、紛失する、ふたつ以上のことを同時に頼まれると先に言われたほうを忘れる、遅刻が多い、などだ。

本人の対応

ICカードなどの小物類は、カードホルダーに入れてバックに取り付けるなどの工夫する。予定はスマートフォンのデジタルカレンダーに入力し、リマインダー(アラーム)機能を使うと、忘れたり遅刻したりするのを防げる。

職場の対応

同時に多くの指示を出さないこと。ふたつ以上の仕事を頼むときは、優先順位を本人といっしょに確認する。「Aの仕事は〇時まで、Bの仕事は〇時まで」というTODOリストをいっしょに作り、本人の目に入る場所に貼り付けるのも良い方法だ。

3雑談が苦手

自閉スペクトラム症の人はコミュニケーション全般が苦手。会話をパターンとして判別するため、話題があちらこちらに飛ぶ雑談では混乱しやすい。急に黙り込んだり、おかしな発言をしたりし、職場の人のひんしゅくを買う。何度も繰り返し、距離を置かれることもある。

本人の対策

「雑談は話題が飛んでもいい」と認識し、笑顔であいづちを打つことからはじめる。礼儀正しく挨拶をする、親切にされたらお礼を言う、など徹底し、失礼な人と思われるのを防ぐ。

職場の対応

職場の人は、大人の発達障害を本人の個性だと認め、おなしな人だと決めつけないこと。人と接すると疲れやすいという特徴を理解し、飲み会などをしつこく誘わない。断られても、付き合いが悪いと責めないことだ。

4においや音に敏感

自閉スペクトラム症の人は「感覚異常」を示すことがある。五感が敏感になりすぎる症状だ。光をまぶしすぎると感じたり、特定の手触りのものを嫌がったりする。騒がしい場所での会話では、相手の声を拾って聞き分けることができない。香水や排気ガスなどのにおいが混じり合う場所では気分が悪くなる人もいる。

本人の対応

どうしても必要なとき以外は、苦手な場所に近づかないこと。症状をはっきりと相手に伝え、サングラスやマスク、耳栓などをつける許可をもらうといい。

職場の対応

感覚が敏感な人は普通に生活をしているだけで普通の人よりはるかに疲れやすい。自分自身の体調を整えるのが苦手なので、休息をとるのも下手だ。職場の人は、本人の様子を伺いつつ、体調が悪そうなら「少し休んでもいいよ」と声をかけてあげる。

5環境の変化に馴染めない

大人の発達障害を持つ人は、職場の異動などで仕事の環境が変わると、うまく適応できない特徴がある。

本人の対応

ADHDの人は活動的なので営業や販売に適性を示すことが多い半面、移動や昇進でデスクワークが増えると強いストレスを覚えることがある。イライラして怒りっぽいパワハラ型の上司になるかもしれない。自覚がある人は異動希望を出し、元の場所に戻してもらうことだ。

自閉スペクトラム症の人は、ルーティンから外れた仕事に混乱しやすいのが特徴だ。いつもと違う業務や、例外的な要素を含む仕事には拒否反応を示す。変更部分を文章や図として書き出し、新しい仕事として覚えるのが望ましい。

職場の対応

職場の上司や人事権のある人が、「環境に馴染めない」という特徴を事前に見抜くのはむずかしい。異動先で不適応の症状がでたとき、大人の発達障害の可能性も頭に入れつつ、今後の対応を慎重に検討する。大人の発達障害を持つ人は、自分に向いている仕事が見つかると見違えるように有能な社員に変わる可能性があることを覚えておきたい。

 

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