在宅勤務の家事・育児のコツと部屋の仕事環境を快適にする工夫

在宅勤務の家事・育児のコツと部屋の仕事環境を快適にする工夫

新型コロナウイルスによる在宅勤務は、家族の問題を浮き彫りにした。

とくに小さな子どものいる家庭では、仕事と家事と育児とがごちゃごちゃと混ざり合ってトラブルを生み、夫婦げんかの原因となった。なかにはDVに発展するケースもあった。

オフィス勤務のほうが気が楽だ、と思った人も多いのではないかと思う。しかしアフターコロナの日本では、在宅勤務は多くの企業で選択肢のひとつになりそうな雰囲気である。

この記事では、在宅勤務の家事育児の課題をまとめた。そしてその課題を解決するための在宅勤務の家事育児のコツと、部屋の仕事環境を快適にする工夫を紹介する。

在宅勤務の家事と育児の課題

新型コロナウイルスによる外出自粛生活で在宅勤務の家事育児の課題がはっきりと見えた。まずはその課題を振り返ってみる。

共働き夫婦の家事育児の役割分担

夫婦共働きでともに在宅勤務なった家庭では、家事育児の役割分担でたびたびけんかが起きた。

家族全員がこれまでの日常とは異なる環境に置かれたことで、ストレスを感じやすくなっていた。外出自粛のせいでストレスを発散しようにもできない。家族と距離を置くこともできなかった。

この状況では、これまでコントロールできていた感情が抑えられなくなる。些細なことにも我慢ならない。家族の場合はとくに、感情のブレーキが効かずに言い争いはエスカレートしがちだ。

専業主婦の家事育児の負担増

専業主婦は家事育児の負担が増えた。

キッチンのテーブルを仕事で独占する夫と、学校が休校になって構ってほしい子どもが1日中家にいる。妻は子どもの相手をしながら掃除や洗濯をして、夫のために毎日3食分のごはんを作った。

家事育児さらには夫の世話まで、妻は心身ともに休まる時間がない。なかにはストレスで不眠におちいる専業主婦もいた。

ドメスティクバイオレンス

ドメスティクバイオレンス(DV・家庭内暴力)が世界各国で問題になった。ロックダウン(都市閉鎖)が長く続いた欧州では社会問題にまで発展した。

国際連合女性機関のレポートによると、ロックダウンがはじまった3月半ば以降、フランスではDVの発生件数は30%増えた。DVの通報や相談の電話は、アルゼンチンでは25%、シンガポールでは33%増えた。DVの増加は日本でもたびたびニュースで報じられた。

コロナ離婚

在宅勤務は、家族との時間が増える理想の働き方のはずだった。しかし蓋を開けてみれば、定年退職後に熟年離婚する夫婦の感情を少し早めに体験しただけだった。

いっしょに過ごす時間が増えるだけでストレスがたまるのは、家族の関係に歪みが出ているからだろう。これまでは日中外に出ていたおかげで、その歪みを見なくて済んでいただけだ。

アフターコロナの日本では、多くの企業で在宅勤務が選択肢のひとつとなりそうだ。コロナ離婚を避けられた夫婦も、家族のあり方を見直さないといずれは同じ道を辿ることになる。

在宅勤務の家事・育児6つのコツ

ここでは在宅勤務中の家事・育児のコツをまとめた。

ひとことでいうと、会社でやっていることをそのまま家庭にも取り入れればいいのだ。会社では上司や同僚とケンカになることはまずない。それはきちんと報連相(報告・連絡・相談)をしてコミュニケーションをとっているからだ。

夫婦で1日の予定をシェアする

1日の予定は夫婦で共有する。共有するのは、今日はこんな仕事をやるよとか、この時間はオンライン会議があるわとか、朝は急ぎの資料作りがあるから手が離せないよとか、そういうことだ。

予定を共有する理由はふたつある。ひとつめは、オンライン会議に使うダイニングテーブルを奪いあってけんかをしないためだ。

日本の住宅は狭いから、自分専用の書斎や仕事部屋を持つ人はほとんどいない。静かにしてほしいときは、夫婦どちらかに協力をお願いすることになる。家族だからといって、時間になって急に言うのはちょっと優しくない。会社で会議室や商談室を予約するように、自宅でも事前に伝える。

ふたつめは、家事と育児の分担を決めるためだ。家事育児は妻の担当だなんて勝手に決めつけてはいけない。共働きの夫婦はとくに、仕事を抱えているのはふたりとも同じだ。妻が手を離せないときは夫が家事をして育児をする。

家族会議を定期的にひらく

家事育児の役割分担といった在宅勤務中の決め事は家族会議で決める。家族会議には家族全員が参加する。子どもだって言いたいことのひとつやふたつはあるものだ。

会議には「ふたりが合意してから実行する」というルールを設ける。これは夫婦のどちらかに負担が偏らないようにするためだ。

家事と育児の中身は紙にぜんぶ書き出してみる。書き出した項目のとなりには、かかる時間と難易度を書く。たとえば「子どもをお風呂に入れる 時間30分 難易度3」みたいに書く。

時間と難易度を書き出すのは、なんとなくで分担を分けると、不満の原因になるからだ。書き出した家事と育児を交互にひとつずつ選んでいけば、負担のバランスは整う。

家族会議は定期的に開いて役割分担のバランスを整える。

家族に忖度を求めない

気持ちは言葉や行動で示してこそ伝わるものだ。それは家族でも同じである。

家族だからこれくらいわかってくれるだろう、と相手に忖度を求めるのはやめる。自分の思い通りにいかなかったときには、怒りや不満となるからだ。

思ったことはその場で伝える。自分の中に抱え込んだり、我慢したりはしない。

また、家族に伝えるのは不満ばかりではない。ありがとう、うれしい、といった感謝や喜びの気持ちもきちんと伝える。

スケジュールは30分刻みで管理する

在宅勤務中のスケジュールは30分刻みで管理する。

30分にするのは、ちょこちょこと子どもの様子を見にいくためだ。子どもが気になってそわそわしている状態では、仕事に集中できない。

短時間に集中と休憩を繰り返す集中法にはボロドーモ・テクニックがある。タスクを細かく分けて、25分集中して5分休む、を繰り返す方法だ。

たとえば1時間でできる報告書なら、情報収拾と構成に30分、執筆に30分という感じにスケジュールを立てる段階で分ける。

子どもは上司だと思うようにする

在宅勤務中は子どもに話しかけられて集中できないという人がいるが、仕事を中断させられるのは職場でもよくあることだ。

上司や同僚は好き勝手話しかけてくるし、取引先からの電話は突然かかってくる。

職場では作業を中断するたびに、いちいちイライラしない。それは、そういうものだと思っているからだ。

在宅勤務中は子どもが話しかけてくるものだ、子供は上司や同僚と変わらない、と考えればイライラする回数は減る。

上司や同僚に相談する

育児で大変なときは、職場の上司や同僚に正直に話す。この日は連絡が取りづらいとか、予定の作業が遅れるとか、会議中にたびたび席を離れるとか、そういう家庭の事情は前もって連絡する。

育児を会社が考慮してくれるかどうかはわからないが、黙っていれば迷惑をかけることになる。

在宅勤務で育児に悩んでいるのは自分の家庭だけではない。年齢にもよるけれど、上司や同僚も現在進行形で同じような悩みを抱えている。

同じ悩みを持つもの同士で意見交換ができれば、あるいは共感してもらえれば、気持ちはずいぶん楽になる。

在宅勤務の部屋の仕事環境を快適にする6つの工夫

ここでは在宅勤務の部屋の仕事環境を快適にする工夫をまとめた。

ほとんどの人にとって、自宅はもともと仕事をする場所ではない。自宅で仕事をするようになってから、オフィス勤務とは違った疲れ方をしたという人もいるだろう。それは自宅に仕事をする環境が整っていないからだ。

椅子にこだわる

在宅勤務の快適さは椅子で決まる。必要なのは正しい姿勢で座れるちょっと質のいい椅子だ。椅子は仕事の生産性に直結するから、お金をケチってはいけない。

姿勢の悪い座り方は腰にトラブルを起こす。これは医学的にも証明されている。

立っているときに腰にかかる負担を100とすると、仰向きで寝るときは25、座っているときは140、前傾で座っている(猫背)ときは185もの圧力がかかっている。

椅子選びのポイントはふたつある。ひとつめは座面のクッション性だ。座ったときに体にかかる負担は座面で受け止める。

選ぶのは座面の中心軸にガスが充填されているタイプだ。ガス充電タイプはクッションの脇に空気レバーがついている。

ふたつめは背もたれの大きさだ。背もたれが大きければ大きいほど背中をしっかりサポートしてくれる。

仕事スペースとそれ以外を分ける

書斎や仕事部屋がない場合は、作業スペースを確保しなければならない。

まずするのは部屋中を片付けて、仕事をする場所とそれ以外の生活スペースとをなるべく離すことだ。子どもが絵を描くとなりで仕事をするパパというのはほほえましい光景だが、それではちょっとも仕事が進まない。

ダイニングテーブルを使うときは、リビングとのあいだにパーテーション(仕切り)を設ける。仕切るのは生活スペースが視界に入らないようにするためなので、その方法はなんでもいい。あるいはテーブルを壁にくっつけてリビングに背を向ける形で座る。

ダイニングテーブルを夫婦で使うときも、卓上にかんたんなパーテーションを置くといった工夫をする。パーテーションをおいているあいだは話しかけないといったルールも決める。

ネットでは、デスクの上にかぶせて隔離空間を作るテントも売っている。

デスク用テント「ぼっちてんと」をAmazonでみる

可動式カウンターを活用する

移動式カウンター(キャスター付きの作業台)があると、仕事スペースは広がる。椅子と組み合わせれば簡易デスクになって、自宅の好きな場所で仕事ができる。

また、クローゼットの中身を外に出して、移動式カウンターを中に入れ込むと三方が囲まれるので、集中して仕事ができる。テレビ会議中でも、子どもの声などの生活音がマイクに拾われにくくなる。

クローゼットの中から会議に出ているとは相手もまさか思わないだろう。

仕事道具はバッグにまとめる

仕事道具は、持ち運びやすい大きさのバッグにまとめる。バッグをもって移動するだけで、フリーアドレス制のオフィスのようにすぐに仕事に取りかかれる。

また、仕事をするテーブルの上はきちんと片付ける。新聞やチラシ、請求書、食べ物、子どもの宿題など、余計なものが目に入ると集中力が途切れやすくなる。

仕事中の照明はブルー系にする

仕事中の照明は青系にすると効率が上がる。青系の光にはリラックス効果があって、集中力が高まるからだ。

リビングの照明は暖色系が多い。仕事中はデスクライトで手元を照らすようにする。

在宅勤務をとにかく楽しむ

職場と同レベルの環境を自宅に作ることはできない。だったら発想を転換してみるのはどうだろう。職場に近づけようとするのはやめて、職場では絶対にできないような仕事のやり方を楽しむのだ。

たとえば、ベッドに寝転んでとか、風呂に入りながらとか、音楽を聴きながらとか、踊りながらとか、歌いながらとか、走りながらとか、腕立てをしながらとか、腹筋をしながらとか、そういうのだ。

こんな仕事のやり方を職場でしたら、上司に100%怒られる。だけど、在宅勤務では許される。在宅勤務のメリットは、まわりの目を気にしないで好きなように仕事ができるところだ。

自由さは不便さに勝る。あれがない、これがない、と不満ばかりでストレスをため込むよりは、楽しんでノーストレスのほうがよっぽど効率よく働ける。

※さっきの例(腹筋しながらとか)は冗談だけれど、椅子に座っているより立って動いているほうが頭が働くという話はよく聞く。僕はいつもトイレに向かう途中でアイデアが降りてくる。問題は席に戻るころにはすっかり忘れていて思い出せないことだ。

在宅勤務の家事・育児のコツ まとめ

この記事をまとめるとこうなった。

  • 新型コロナウイルスで多くの人が在宅勤務をよぎなくされた
  • 小さな子どものいる共働き家庭では、家事育児のトラブルがたびたび起きた
  • 専業主婦は家事と育児と夫の世話で疲れ果てた
  • 在宅勤務は世界各国でDV被害を増やした
  • 在宅勤務が離婚の引き金となる「コロナ離婚」という言葉が話題になった
  • 在宅勤務の家事と育児のコツはこんな感じ
    1. 夫婦で1日の予定を共有する
    2. 家族会議をときどきひらく
    3. 家族に忖度を求めない
    4. スケジュールは30分刻みで管理する
    5. 子どもは上司だと思うようにする
    6. 上司や同僚に相談する
  • 在宅勤務の部屋の仕事環境を快適にする工夫はこんな感じ
    1. ちょっといい椅子を買う
    2. 仕事のスペースと生活のスペースを分ける
    3. キャスター付きの作業台は簡易デスクになる
    4. 仕事道具はひとつのバッグにまとめる
    5. 仕事中のライトは青系にする
    6. 在宅勤務の自由をとことん楽しむ
在宅勤務の家事・育児のコツと部屋の仕事環境を快適にする工夫