ダイエット中には肉を食べろ、といわれる。その理由は、人はタンパク質なしでは痩せられないからである。あるいは痩せられたとしてもリバウンドのリスクが高くなるからである。
ダイエットの目的は、体脂肪を落とすことである。そして同時に筋肉をつけることでリバウンドを防いで痩せ体質をつくるわけである。ダイエットでは食事制限と運動(筋トレ)がふたつの柱となる。
食事制限と運動のどちらにおいても、肉は理想的な食材である。肉には体脂肪が増える原因である糖質がほとんど含まれていないし、その一方で筋肉の材料であるタンパク質がたっぷりと含まれている。痩せるという一点においては、肉ほどのスーパーフードは存在しない、と言い切っちゃっても神様は怒らないんじゃないかと思う。
ということで、この記事では、ダイエット中に肉を食べると痩せるといわれる理由をもう少し掘り下げて行きたいと思う。そして、ダイエット中に知っておきたい肉についてのあれやこれや(痩せる肉の部位とか、太る肉の部位とか、肉の栄養素とか)と、肉にかぎらず食事全般における太らない食べ方についても紹介する。おまけとして太らない酒の飲み方についても書いた。
mokuji
ダイエット中にお肉を食べると痩せるといわれる理由
ダイエット中にお肉を食べると痩せるといわれるのはなぜか。次の4つの話をしながらその理由を探っていきたいと思う。
- 体脂肪が増える原因は糖質だから
- 体脂肪はなかなか落ちないから
- 筋肉をつけると、痩せ体質になれるから
- 筋肉が落ちると、リバウンドするから
体脂肪が増える原因は糖質だから
体脂肪がつくいちばんの理由は糖質である。ごはんやパンなどの炭水化物や砂糖は体内に入ることでブドウ糖に変わる。そして血液の中を流れる。このブドウ糖の量を数値化したものが血糖値である。
体内に取り込まれた糖は、グリコーゲンという物質に変わる。グリコーゲンは肝臓と筋肉に貯蔵される。だけど、貯蔵できる量には限度がある。肝臓と筋肉で貯蔵できなかった糖は、体脂肪として体内で蓄えられることになる。
炭水化物や砂糖を一度にたくさん食べると、使いきれないばかりか、貯蔵もできないほどの糖が体内に発生する。体内は高血糖とよばれる状態になる。高血糖状態では、血液中の糖のほとんどは体脂肪に変わってしまう。
脂質のとり過ぎもだいたい同じである。痩せるためには糖質と脂質のとり方に気を配ることが必要になる。
そんなの食べるものなくなっちゃうじゃない、なにを食べればいいの? 肉を食べればいいのである。
体脂肪はなかなか落ちないから
一度ついた体脂肪はなかなか落ちない。それは、体脂肪がエネルギーとして使われるまでには長い時間がかかるからである。
たとえばカップラーメンはそのまま食べられない。お湯を沸かしてお湯を注いで3分待たなくてはいけない。それと同じように、体脂肪をエネルギー源に変えるためにはちょっと(かなり)手を加えてあげないといけないのである。
ここからはちょっとむずかしい話になるので、そしてがんばって読んだところで痩せるわけでもないので、さらさらと読み飛ばしてください。
体脂肪は、中性脂肪にかたちを変えて脂肪細胞内に貯蔵される。中性脂肪は、糖とともにエネルギー源ではあるけれど、遊離脂肪酸というかたちに変換してからでないとエネルギーとして使うことはできない。
誤解を恐れずに例えると、糖はすぐに食べられる菓子パンで、体脂肪は3分待つ必要があるカップラーメンみたいなものである。
遊離脂肪酸を作るには、カテコールアミンというホルモンと、それを活性化させるホルモン感受性リパーゼという酵素が必要である。このふたつが刺激することで、中性脂肪は遊離脂肪酸とグリセロールに変わる。使いようのないグリセロールは中性脂肪としてふたたび体に貯蔵される。
血中に放りだされた遊離脂肪酸は、ミトコンドリアにとりこまれる。ミトコンドリアはエネルギーを作る装置みたいなところである。遊離脂肪酸はここで酵素や糖とくっつくことで、ようやくATPというエネルギーのもとになる。
このように、読んでるだけで頭が痛くなっちゃうようなあれやこれやを経て、体脂肪はやっとのことでエネルギー源として使われるのである。3分待つだけでいいカップラーメンどころの話ではないのである。じゃあなんでカップラーメンに例えたのか、というツッコミは控えてください。
つまりは、体脂肪になりにくい肉を食え、ということである。
筋肉をつけると痩せ体質になれるから
痩せるには、血中の糖をさっさと使い切ってあげればいい。糖を使う手段は体を動かすことで、それ以外に方法はない。食べた分は責任を持ってちゃんと運動しなくちゃいけないわけである。
だけど、おなじ時間おなじ運動をしても、糖を使い切る量には個人差が出る。この差を生み出すのが筋肉である。筋肉量の多い人は、そうではない人よりも効率よく糖を使える。
その理由はふたつある。ひとつめは、筋肉は動かすときにたくさんのエネルギーを使うからである。アメリカン車みたいに、ガソリンを食うのである。
ふたつめの理由は、筋肉が「GLUT4」という物質を分泌する器官だからである。GLUT4には血液中の糖の消費をうながす働きがある。筋トレなどで筋肉を刺激すると、2〜3日のあいだはGLUT4の量が増える。GLUT4が増えているあいだは血糖値が上がりにくいことがわかっている。
まとめると、筋肉はエネルギー(カロリー)をたくさん消費してくれて、血糖値の上昇も抑えてくれるというわけだ。これが筋肉をつけると痩せ体質になれる理由である。そして筋肉の材料となるタンパク質をとる、つまりはダイエット中に肉を食べると痩せるといわれる理由なのである。
筋肉が落ちるとリバウンドするから
きびしい食事制限をすると、短期間でするすると体重は落ちていく。ところがちょっと油断してダイエットの手を休めると、体重はすぐにもとに戻る。あるいはダイエット以前より太っちゃう人もいる。いわゆるリバウンドという現象である。
リバウンドは、栄養不足を察知した脳が生命の危機を感じることで起こる。この子食べるものなくて死んじゃうんじゃないの? と脳が心配するわけだ。そうすると、脳は体に入ってきた栄養素を無駄なく体に貯め込みはじめる。そしてできるかぎり使わないようにする。節約家になるのである。この状態になると、代謝は下がって太る。
また、食事制限で筋肉の材料となるタンパク質が不足することで、筋肉量も減る。代謝はさらに低くなる。
まとめるとこういうことである。
- エネルギーを貯蓄するために体脂肪が増える
- エネルギーを消費する筋肉は節約のために減らされる
おそろしいですね。
タンパク質だけじゃなかった! 肉の栄養素
肉といえばタンパク質である。肉のタンパク質は体内で利用されやすいし、ビタミンやミネラルもたっぷり含んでいる。
なかでも脂身の少ない赤身肉はカロリーが低くて栄養が豊富だから、ダイエット中には最高の食品なのである。
タンパク質以外にも、肉にはダイエット向きのいろんな栄養素が含まれている。こういうのを知ると肉がもっと愛おしくなる。
タンパク質
タンパク質は筋肉の材料となる栄養素である。タンパク質が不足すると、筋肉が痩せる。さらには免疫力が落ちることもある。
肉のタンパク質は動物性である。動物性のタンパク質は、豆類などに含まれる植物性のタンパク質より利用効率がよい。からだにとって使いやすいタンパク質なのである。
ビタミンB1
ビタミンB1は糖質を効率よく代謝してくれる働きがある。ビタミンB1が不足すると、糖質が体脂肪に変わりやすくなる。さらには体も疲れやすくなる。
ビタミンB2
ビタミンB2は脂質の代謝をサポートしてくれる働きがある。ビタミンB2が不足すると、脂質が体脂肪に変わりやすくなる。脂質をよくとる人が不足しやすいビタミンである。
ビタミンB6
ビタミンB6はタンパク質を効率よく代謝してくれる働きがある。ビタミンB6が不足すると、タンパク質が筋肉の材料として使われにくくなる。
ビタミンA
ビタミンAは免疫力や粘膜の健康を維持するのに欠かせないビタミンである。ビタミンAが不足すると、のどや鼻の粘膜が弱くなる。つまりは風邪をひきやすくなるのだ。
亜鉛
亜鉛は新陳代謝を活発にしてくれるミネラルである。亜鉛が不足すると、味覚障害が起こることがある。
鉄
鉄はヘモグロビンの材料となる。ヘモグロビンは肺から取り込んだ酸素を体のすみずみまで運んでくれる。ランニングなど有酸素運動をする人には欠かせないミネラルである。
Lカルニチン
Lカルニチンは脂質の代謝をうながす働きがある。牛肉の赤身にとくに多く含まれている。脂質をLカルニチンといっしょにとると、体脂肪として体内に貯まりにくくなる。
イミダゾールジペプチド
イミダゾールジペプチドは筋肉の回復力を高める働きがある。タンパク質がすばやく筋肉を修復できるようにサポートする。鶏胸肉やささみに豊富に含まれる。筋トレ愛好家には有名な抗疲労成分である。名前がかっこいい。
お肉の痩せる部位と太る部位
肉は部位によってカロリーに大きな差がある。目安としては、赤みが多いほどカロリーは低くなる。
内臓系は低カロリーというイメージがある。だけどそれはちょっと違う。タンや牛のまるちょう、ギアラ(第4の胃)、テールは脂質が多いからカロリーが高い。センマイやレバーは低い。
牛肉や豚肉、鶏肉の痩せる部位と太る部位をみていく。
牛肉の太る部位と痩せる部位
牛肉の赤身部分には、良質なタンパク質が含まれている。亜鉛やLカルニチンといった代謝を高める栄養素もぎゅっと詰まっている。
牛肉の部位別のカロリーはこうなる(皮付き・脂肪付きのとき)。
- サーロイン(カロリーが高い)
- 肩ロース
- ひき肉
- もも
- ヒレ(カロリーが低い)
豚肉の太る部位と痩せる部位
豚肉の赤身部分にはビタミンB1がたっぷりと含まれている。ビタミンB1は糖質の代謝をうながしてくれる。ビールや炭水化物など、糖質が多い食事のときは豚肉を多めに食べるといい。
豚肉の部位別のカロリーはこうなる(皮付き・脂肪付きのとき)。
- バラ(カロリーが高い)
- ロース
- 肩ロース
- もも
- ヒレ(カロリーが低い)
鶏肉の太る部位と痩せる部位
鶏肉はタンパク質の代謝に欠かせないビタミンB6が豊富である。鳥の皮からはコラーゲンがとれる。だけどコラーゲン以外は脂質なのでダイエット中は避けたほうがいいかもしれない。
鶏肉の部位別のカロリーはこうなる(皮付き・脂肪付きのとき)。
- 皮(カロリーが高い)
- 手羽
- もも
- ひき肉
- ささみ(カロリーが低い)
お肉といっしょに食べると痩せる食品
ダイエットには肉がいいといっても肉ばかり食べるのはよろしくない。肉ばかり食べていると腸内の悪玉菌が増えて、腸内環境が悪くなる。腸内環境が悪くなると、便秘の原因となる。便秘は肥満のもとである。
お肉と一緒に食べると、痩せる食品を紹介する。
香辛料
香辛料には代謝を上げて、脂肪の燃焼をうながしてくれるものがある。一例をあげる。
- アリシン(にんにくのにおい成分)
- カプサイシン(とうがらしの辛味成分)
- ジンゲロン(しょうがの辛味成分)
- ペピリン(ブラックペッパーの辛味成分)
これらの香辛料を使った料理をお肉といっしょに食べると、代謝が上がって痩せる。焼肉では、まずはキムチを注文する。
また、キムチや味噌汁などの発酵食品には腸内環境を整える働きがある。
野菜
野菜は食物繊維が豊富である。食物繊維は腸内環境を整えてくれる。
また、野菜は肉に含まれている栄養素の代謝をうながしたり、消化を助けたりする酵素や栄養素も豊富に含まれている。
太らない食べ方
お肉のことは少し脇において、ここからは食事全般の話をする。太らない食べ方についてのお話だ。
ダイエット中は低カロリーな食品を選んだり、食事の量を減らしたりする。だけど、そういう努力をしても思うように痩せない人がいる。それは食べ方が下手くそなのかもしれない。
そういう人は太らない食べ方をやってみてください。
よく噛んで食べる
満腹感は、脳の視床下部にある満腹中枢が刺激を受けることで覚える。満腹中枢への刺激が足りないと、満腹感を覚えるまで延々と食べ続けてしまう。
満腹中枢は「噛む」ことで刺激される。よく噛んで早食いをやめると、少ない量で満腹感が得られるようになる。
食品のなかでも肉はかみごたえがあるので、満腹中枢を刺激しやすい。モモやヒレ、ロースなどの赤身肉はとくにかみごたえがある。大きめに切るとさらにいい。
野菜は大きめに切って生のまま食べる
野菜はかみごたえを残すように大きめに切る。おすすめはステックサラダ。生のままばりばりと食べられる。生野菜サラダには大根やにんじん、きゅうり、ブロッコリーなどかみごたえのあるものを入れる。温野菜サラダはちょっと硬めにゆでる。
ドレッシングをたっぷりとかけるのはやめる。ノンオイルドレッシングも糖質が多いのでかけすぎてはいけない。理想をいうと、塩コショウにオリーブオイルをちょっとかけるくらいがいい。
夕食は高タンパク・低脂質・低糖質を心がける
夕食は肉や魚を中心とした、タンパク質がしっかりととれる食事にする。
糖質や脂質は朝と昼にきちんととるようにして、夜は控える。
食物繊維が豊富な食品から食べる
太らない食べ方の基本は、油や糖の吸収スピードを抑えることである。食事の順番としては、野菜やきのこ類、海藻類などの食物繊維が豊富な食品から食べはじめる。
食物繊維は胃で消化されずに腸に移って、腸内の老廃物を取り除いてくれる。また、腸壁にバリアをはって、腸内に入ってきた糖や油が過度に吸収されるのを防いでくれる。血糖値の上昇を抑えてくれるのである。
夕食は就寝の3時間前までに食べる
ある時間になると、体内ではBMAL-1という物質が分泌される。BMAL-1は脂肪を増やす、はた迷惑な物質である。
BMAL-1の分泌量は14時ごろにもっとも少なくなる。それ以降は少しずつ増えていって、19時ごろにどかんとくる。ピークは深夜の2 時ごろである。
夕食ははやめに済ませて21時以降はなにも食べないほうがいい。とはいっても、なんやかやとみなさん忙しいと思うので、就寝の3時間前までには最低でも食べ終わるようにしてください。
太らないお酒の飲み方
太らない食べ方のおまけとして、太らない飲み方についてもちょっとだけ書いておく。お酒好きのダイエッターの方は参考になるかもしれません。
ビールは1杯だけにする
ビールはとても高カロリーである。中ジョッキ1杯で、ごはん茶碗1杯分のカロリーがある。
ビールをまったく飲むなとは言わないけれど、できれば最初の1杯だけにする。とりあえずのビールを飲んだら、そのあとは糖質がほとんど含まれない焼酎やウイスキーなどの蒸留酒にきりかえる。
日本酒やワインなどの醸造酒も糖質が多い。甘みの少ないワインは糖質が控えめである。
ビールをどうしても飲みたい人は、つまみに豚肉や枝豆、あとは野菜を食べるようにする。野菜には糖質の吸収スピードをなだらかにしてくれる食物繊維が、豚肉や枝豆には糖質の代謝をうながしてくれるビタミンB1がたくさん含まれている。
太らないお酒
- ワイン(辛口)
- 焼酎類(いも焼酎、コメ焼酎など)
- スピリッツ(ジン、ウイスキー、ウォッカ、ブランデーなど)
太るお酒
- ビール
- 日本酒
- 梅酒
- 甘みの強いカクテル
- ワイン(甘口)
つまみは炭水化物以外にする
酒太りの原因はつまみにある。定番とよばれるつまみには、炭水化物が多いからだ。ポテトチップスやポテトサラダ、からあげ、ピザ、〆のラーメンや丼物のことである。
お酒だけでも太るのに、炭水化物に加えて、さらに油や塩分もたっぷりのつまみをぱくぱくと食ベルのだから太らないわけない。
焼き鳥はヘルシーなつまみの代名詞だけど、皮や手羽先などは脂が多い。タレは糖質なので塩にする。
ダイエット中にお肉を食べると痩せるといわれる理由 まとめ
この記事をまとめるとこうなります。
- ダイエット中に肉を食べると痩せるといわれる
- その理由は次の4つである(もっとあるかもしれない)
- 体脂肪が増える原因は糖質だから(肉を食えばいいのだ)
- 体脂肪はなかなか落ちないから(肉を食えばいいのだ)
- 筋肉をつけると、痩せ体質になるから(肉を食えばいいのだ)
- 筋肉が落ちると、リバウンドするから(肉を食えばいいのだ)
- 肉にはタンパク質以外にもダイエット向きの栄養素がたっぷり含まれている
- 肉には痩せる部位と太る部位がある
- 肉といっしょに野菜と香辛料をとると痩せる
- 太らない食べ方について
- 太らない飲み方について