やる気は作れる!行動科学でわかった集中力を高める環境設定のワザ11

やる気は作れる!行動科学でわかった集中力を高める環境設定のワザ11

自分は集中力がない人間だ。そう自分を責めるのは今日で終わりだ。集中できないのは僕らのせいではない。集中できない原因は僕ら以外にある。

集中を邪魔する原因はいろいろある。散らかった机、ごちゃごちゃしたデスクトップ、まわりの話し声、スマホの誘惑、自分の体調など、挙げはじめるときりがない。国語辞典くらい分厚いリストができあがる。

僕らにはもともと集中力が備わっている。だけど、まわりの環境がその能力を封じているのだ。

集中できる環境を整えることを、行動科学では環境設定という。集中力を高める環境設定のワザをみていこう。

集中力を高める環境設定とは?

やる気を作るには、集中できる環境を整えるのが第一歩だ。自分が望む行動に100%の集中力を注げる状況を作ることを、行動科学では環境設定という。集中力を高めるには環境設定は欠かせない。

仕事や勉強をするときには、目の前の作業に100%の集中力を注ぎ込むのが理想だ。とはいえ、これは簡単なことではない。常に100%の集中力を保つのは無理だ。時間とともに集中力は欠けていく。

「なんだか集中できていないな」と感じるときには、目の前の作業に注ぐ集中力は80%とか60%とかに減っている。残りの集中力は、仕事や勉強以外の余計な行動に向かう。机の上のスマホやまわりの物音が気になりはじめる。この余計な行動を、行動科学では「ライバル行動」という。

ライバル行動はやっかいな存在だ。たとえばダイエットでは、朝早く起きて走ろうとする決意をさまざまな誘惑が襲う。二度寝をしたくなったり、SNSをチェックしたくなったりする。ライバル行動こそが集中力を奪うのだ。

集中力を高めるにはライバル行動は潰す。たとえば目覚ましのアラームをいくつも設定したり、目の届かないところにスマホを置いたりする。

より集中できる環境設定もやる気を作る。すぐに着替えられるようにベットの近くにランニングウェアを用意しておく、着心地がよくてかっこいいランニングウェアを買うなどはやる気を後押しする。

集中力は自然とわき上がるのを待つのではなく、環境設定で作り出すものだ。やる気は作れる。集中力を高める環境設定のワザをみていこう。

集中力を高める環境設定のワザ11

集中力を高める環境設定のワザを11個紹介する。どれも今日から使えるものばかりだ。ぜひ、試してみてほしい。

いま必要ないものは片付ける

集中できないのは他のことに気をとられるからだ。集中するときには、作業以外のことが目に入らない工夫をする。机の上には余計なものを置いてはいけない。
集中したいときには、必要なもの以外は目の届かない場所に移す。たとえば企画書を作るときは、机の上にはパソコンとノートと筆記用具だけを出す。

ほかの仕事のことを考えない環境を強制的に作る。企画書作りに使わない資料は引き出しにしまう。パソコンのデスクトップは整理する。ファイルやアプリは隠す。

仕事中にはスマホも見ない。かばんの中に入れる。机の上に出しておくと、着信のたびにスマホに意識が向く。バイブにしていてもブーブーなるし、サイレントにしていてもピカピカ光る。そのたびに集中力はとぎれる。

また、目の前の作業以外のことは考えないように心がける。「思った以上に時間がかかりそうだな」とか、「上司に評価されるかな」とか、「お昼はなにを食べようかな」とか、そういったサイレントな独り言は、頭に浮かぶたびに追い払う。

気が散りそうになったら、自分の手のひらを3秒間見つめる

脳はストレスを嫌う。ひとつの作業に集中するのに疲れると、ほかの刺激を探しはじめる。この脳の働きをストレス回避行動という。

テスト勉強中に急に部屋の汚さが気になって掃除をはじめた、という話を聞いたことはないだろうか? これはまさにストレス回避行動だ。

いまやっている作業以外のものが目に入ると集中力はふいに途切れる。1秒前までは仕事に集中していたのに、次の瞬間には別のことを考えている。机の上に積み上げた書類やまわりの話し声が気になりはじめる。これはストレス回避行動で別のものに興味が向いているのだ。

こんなときは自分の手のひらを見つめる。3秒間くらいだ。そうすると、散らかりはじめた意識は自分に戻る。

意識は自分でコントロールできる。好き勝手にさせてはいけない。意識の行きたい方向について行くのではなく、自分の行きたい方向に従わせるのだ。

「5分だけやる!」で集中力のスイッチを入れる

がんばろうという気持ちが強すぎると、仕事や勉強にはなかなか取りかかれない。行動に移ったあとの、苦しんでいる自分の姿が想像できてしまうからだ。自分にプレッシャーをかけるほど気持ちは重くなる。

集中するにはがんばらないことだ。「今日は12時間勉強する!」なんて欲張ってはいけない。「今日は5分だけでいいや」と自分を甘やかすくらいがちょうどいい。企画書作りだったら、資料だけ集めるとか、アイデアだけ書き出すとか、全体の流れをスケッチするとか、その程度でいい。

集中するときにむずかしいのは、エンジンをかける最初の部分だ。最初の5分を乗り切るとあとは勝手に進んでいく。スムーズに動き出せるように、スタート時点ではプレッシャーをかけてはいけない。プレッシャーをかけると脳はやらない理由を探しはじめる。

5分以上できなくてもそれはそれでいい。5分だけやると決めて5分間やったのだ。文句を言われる筋合いはない。小さな成功を褒めてあげよう。5分を続けるうちに、長く走れるようになる。

15分の集中を繰り返す

人の集中力は15分ほどしか続かない。15分を過ぎると、脳は余計なことを考えはじめる。集中力が高そうに見える人でも本当はずっと集中しているのではなく、余計なことを考えると集中するを繰り返しているのだ。

なかには本当にずっと集中できる人もいる。だけどそういう人は例外だ。宇宙人とか地球外生命体とか、そういった得体の知れない存在が人間になりすましているのだと僕は思うようにしている。

逆に考えると、どんな人でも15分くらいは集中できるのだ。まずは15分だけがんばる。15分間は余計なことは考えず、やらなければならないことだけに集中する。

うまくいったときは次の15分に挑戦する。15分、15分、15分をなんども繰り返す。そのうちに集中する感覚を覚える。15分を繰り返しているうちに、集中できる人間に変わっていく。

「よし!」と声をだす

集中したいときには「よし!」と声をだす。脳はだまされやすい。「いまからなにかがはじまる」と脳は思い込み、集中力のスイッチが入る。

掛け声は短いほどいい。掛け声がお経のように長いと、まだかよ、と脳はとまどう。集中力のスイッチはうまく入らない。かえってだらだらする。

掛け声はしっかりとつぶやく。言ったつもりはダメだ。小さな声でも、心のなかでもいい。意識して「よし!」と声をかける。

回数に制限はない。「よし!」はなんど使ってもいい。5分間集中できたら「よし!」、1ページ読み終わったら「よし!」。短く声にだすとリスムが生まれる。気分が乗り、集中力が高まる。

ガッツポーズなど、小さなジェスチャーを混ぜるのも効果がある。

まわりがうるさいときはイヤホンをつける

うるさいと感じるのは集中できていない証拠だ。ほんとうに集中しているときには、まわりの物音など気にはならない。無音だ。真空パックの中に閉じ込められているみたいに、世界と切り離されている。

だけど、それは集中しているときの話だ。集中するまでにはアイドリングタイムがある。アイドリングタイムではまわりの物音が気になる。近くで誰かがおしゃべりしていると、そちらに意識がいき、集中できなくなる。

このとき、自分は被害者だと思ってはいけない。被害者意識を持つとさらにそちらに意識が向かう。ますます集中できなくなる。

必要なのは音を止めることに意識を向けるのではなく、自分に意識を戻すことだ。

場所を移動できるときは静かな場所に移る。移動できないときは両耳にイヤホンを差し込む。耳栓でもいい。まったく無音にはならないけれど、意識は自分に戻ってくる。

自宅で集中するときは、テレビのリモコンやスマホは見えない位置に置く

自宅は誘惑が多い。土曜日の午前中までには持ち帰った仕事を済ませるつもりだったのに、テレビに見入ってしまった。気づいたときには昼過ぎだった。やっと仕事にとりかかったと思ったら、友達からメールが届いた。結局仕事は進まなかった。なんてことが起こる。

自宅で集中力の妨げになるのは、テレビ、スマホ、パソコンだ。ライバル行動を避けるには、見たいものを見えない状況に変える。

集中したい作業をはじめる前には、ライバル行動を潰しておく。テレビの電源コードは抜く、リモコンの電池は取り外す、スマホは引き出しに入れる、パソコンはネットにつながない、などだ。元に戻すのが大変だと感じるほど、効果は大きい。

集中する場所を決める

仕事の切り替えがうまくいかず、集中できないときがある。次の仕事に取り掛かっているのに、「さっき作った資料はあれでよかったのかな」とか「さっき届いたメールにはなんて返事しようかな」とか、気になる。人には前の情報を引きずる性質があるため、こういったことが起こる。

うまく切り替えるには場所を変えるといい。自由に使えるワークスペースがあるなら、そこに移る。休んでいる人や出張中の人の席を借りるのもひとつの方法だ。

場所の移動が無理なときはちょっとだけ動く。机の右側と左側で仕事を変える方法だ。たとえば机の左側ではデータの打ち込みなどの単純作業、右側では企画書づくりなどの頭を使う作業をする。そういった自分ルールを決めておく。集中のスイッチがうまく切り替わる。

インターバルは3分間

集中できなくてもんもんとしているのは時間のムダだ。集中しようと念じて集中できるなら、誰も苦しみはしない。そんなときはさっさと一息入れたほうがいい。

ただし、インターバル(休憩)は3分だ。休憩を長くとると、次にエンジンをかけるときに苦労する。とくに集中力に自信がない人には、長すぎる休憩は逆効果だ。集中力に自信がある上級者以外は、休憩は短めがいい。

3分じゃあ短すぎて何もできない? それでいいのだ。

休憩の目的は、集中できずにもんもんとしている状況の改善だ。お昼休みやおやつ休憩とは、そもそもの目的が違う。深呼吸をするとか、伸びをするとか、ちょっとした気分転換ができればいい。あめ玉1個くらいは食べてもいいよ。

ちょっとした休憩を入れて気持ちをリセット。気分を切り替えて、次の仕事に集中する。

ストレッチで背中を伸ばす

集中できないときはストレッチが効く。ストレッチで血流を良くすると、脳の回転が速くなる。集中するには脳の血流が大切だ。脳の血管は全身の血管とつながっている。つまり、集中するには全身の血流が大切なのだ。

集中にとくに効くのは背中のストレッチだ。背中は体の中心に広がる。背中の筋肉を伸ばすと、全身の血流が改善する。ストレッチはイスに座ったままでも、立ち上がっても、どちらでもいい。両手を組んでぐぅぅぅぅぅと上にひっぱる。スッキリしたあとは、「よし!」と一声かけて仕事に戻る。

ストレッチはよそに行った意識を引き戻す効果もある。集中できないままだらだら仕事をしていると、悪いほう悪いほうに考えは向かう。「おれってダメだな」「なんで集中できないんだろ」と落ち込む。そんなことを考えているよりはストレッチをしたほうがよっぽど生産的だ。

もうちょっとできそうなところでやめる

仕事も勉強も、大切なのは一定のパフォーマンスを毎日続けることだ。集中できる日とできない日があるのはよくない。120%の集中力を1日だけ発揮して燃え尽きるよりは、毎日平均して80%の集中力を保つほうがトータルではプラスになる。

集中するのが苦手な人は、集中力のペース配分が下手だ。今日は調子がいいからと飛ばし過ぎて、最後には燃え尽きる。集中するのに慣れていないため、自分にとってのちょうどいいやめ時がわからないのだ。

毎日一定のパフォーマンスを上げるには、もうちょっとできそうなところでやめる。がんばりすぎると、集中力は底をつき、次の日は使い物にならない。

ちょっと余力があるくらいでやめる。そうすると、次の日に仕事を再開するときにうまく運ぶ。

今日はがんばった。続きは明日やろう。それでいいのだ。

まとめ 集中力には限界がある

集中力を高める環境設定のワザをもういちど書いておく。

  1. いま必要ないものは片付ける
  2. 気が散りそうになったら、自分の手のひらを3秒間見つめる
  3. 「5分だけやる!」で集中力のスイッチを入れる
  4. 15分の集中を繰り返す
  5. 「よし!」と声をだす
  6. まわりがうるさいときはイヤホンをつける
  7. 自宅で集中するときは、テレビのリモコンやスマホは見えない位置に置く
  8. 集中する場所を決める
  9. インターバルは3分間
  10. ストレッチで背中を伸ばす
  11. もうちょっとできそうなところでやめる

集中力には限界がある。石油や魚といった資源と同じだ。石油は掘りすぎたらなくなるし、魚も獲りすぎたらいなくなる。集中力も使いすぎたら足りなくなる。限られた資源は、大切に使うのが正解だ。

使いすぎはよくない。腹八分目くらいがちょうどいい。あと少しだけがんばろうと欲張っても損をするのは自分だ。燃え尽きて、次の業務に取り掛かるのが遅くなっては、かえって生産性が悪くなる。

人生は今日だけではない。明日も明後日もやってくる。がんばりたい気持ち、あせる気持ちは抑えて、ちょっと物足りないくらいで満足する。長い目で見ると腹八分目が効率よく、うまくいくのだ。

がんばりすぎなくていい。余力を残しつつ、集中力の容量を少しずつ増やしていこう。集中力を高める環境設定を意識して続けると、今日の100%の集中力が、1ヶ月後には80%の力でだせるようになる。

このままでいいのか? やる気がでない原因を特定するやる気診断テスト

参考書籍:『今すぐ! 集中力をつくる技術』冨山真由

やる気は作れる!行動科学でわかった集中力を高める環境設定のワザ11