モチベーションを上げる方法を知りたい。そう思う人は多いはずだ。
やる気を出したい場面はいくつもある。なんとなくモチベーションが上がらないとき、部下にやる気を出させたいとき、新しいことにチャレンジしたいとき。数え上げるときりがないほどだ。
その中でも、とくにモチベーションを上げたい7つの事例をとりあげる。心理学での、人の心理・行動に関する実験とその結果からわかったモチベーションを上げる方法を紹介する。
mokuji
1なんとなくモチベーションが上がらないとき
心理学の実験と結果
2組のチームでゲームを行った。ゲームを始める前に、それぞれのチームにはひとつの指示を出した。Aチームには「私はやる」と自分に言い聞かせること、Bチームには「自分はやるつもりはあるの?」と問いかけることだ。
結果は、BチームのほうがAチームより50%も多くの問題を解いた。
心理学での結論「〇〇やるつもりはあるの?と自分に問いかける」
やる気が出ないとき、おすすめのモチベーションの上げ方は「〇〇やるつもりはあるの?」と自分に問いかけることだ。
人は命令をされるのが嫌いだ。モチベーションが上がらないとき「私はやる」と言い聞かせると、その言葉を否定する声が自分の中から出てくる。押し付けがましい要求のため、心と体が拒絶するのだ。
「〇〇やるつもりはあるの?」と問いかけると、行動を妨げている原因を探し出せる。モチベーションが上がらない理由が特定できるのだ。
たとえば会社に行きたくないとき、「布団から出るつもりはあるの?」「着がえるつもりはあるの?」「朝ごはんを食べるつもりはあるの?」と、ひとつひとつの行動を自分に問いかける。出かける前の、どの行為が問題でやる気が出ないのかが見える。原因がわかると対策を取りやすい。モチベーションを上げるときのヒントになるはずだ。
2部下のモチベーションを上げたいとき
心理学の実験と結果
ある3人の医師にお願いをした。患者の診察をする前に、Aには何も与えず、Bには医療関係の記事を読んでもらい、Cにはキャンディーを与えた。
結果は、Cは他の2人の医師よりも速く正確に診断できた。
心理学での結論「ご褒美はモチベーションを上げる」
ちょっとしたものでも、ご褒美は仕事に好ましい影響を与える。
部下の生産性を上げるには、良い気分にさせることだ。気分が良くなると、モチベーションも上がる。
ご褒美は「もの」以外にもある。「仕事を褒める」「よい知らせを伝える」「変化に気づき声をかける」など、部下の気分を良くし仕事のやる気を出させよう。
3新しいことにチャレンジしたいとき
心理学の実験と結果
2つの会社に経営上の課題を与えた。A会社は「マネジメント能力は個人の持つ才能」だと考える人たち、B会社は「マネジメント能力はいつでも伸ばすことができる」と考えている人たちだ。
結果、A会社は足の引っ張り合いばかりで、話し合いにならなかった。B会社は、意見に反論されてもストレスを感じず、率直な意見を言い合うことができた。
心理学での結論「自分はできると信じる」
自分が成長できると考えている人は、まわりも成長できると信じている。年齢・経験で差別せず幅広く意見を求めるため、成果を出しやすい。
「自分は成長できる」「今からでも遅くない」と自分を信じることはモチベーションを上げる。
4面倒なことを習慣にしたいとき
心理学の実験と結果
AチームとBチームにお菓子を配った。Aチームにはバラ入りのクッキーの入った箱を、Bチームには個別包装されたクッキーの入った箱を渡した。クッキーの個数は同じだ。
結果、Aチームがおよそ4倍の速さで完食した。
心理学での結論「達成したいことは手順を減らす」
必要な「アクション数」(実験では個別包装の包みを開ける手間)が少ないほど、行動が速くなる。
達成したいこと、習慣にしたいことはアクション数を減らすと、すぐに取りかかれるようになる。反対に、やめたいことはアクション数を増やす工夫をすると、やめられる。
ジョギングを始めたいときには、ジョギングウェアを着たまま眠る。翌朝はウェアを探さなくても、着替えなくてもいい。面倒な手間が省けるので、高いモチベーションを保ったまま走りにいける。
すぐ取り掛かりたい仕事がある場合は、書類を机の上に出しておくなどの準備をする。その仕事を始めるときにスムーズに着手できる。仕事に取り掛かるまでのプロセスを減らす工夫は、モチベーションの維持につながる。
掃除をするときも、どこに収納すれば取り出しやすいかを考えながら片付ける。「さあやるぞ!」とやる気が出ているのに、必要なアイテムを探すのに手間取り、結局モチベーションが落ちたという状況が減る。
未来の自分のやる気を下げない工夫も大切だ。モチベーションの上げ方は「アクション数」を減らすことだ。
5自分に自信を持ちたいとき
心理学の実験と結果
ある学生にテストを解いてもらった。事前に、Aチームには「他の学生と比較し評価する」と、Bチームには「あなたの成績の上がり具合を基準にし評価する」と伝えた。
結果、Bチームの成績が大きく伸びた。「テストが楽しかった」という声も聞こえた。
心理学での結論「過去の自分と比べてどうか?を評価基準にする」
「他人」との比較より「自分の成長具合」で評価されたほうが人は努力できる。
「チームで成果を上げる」「お客様に喜んでいただく」「上司に評価してもらうため」などの客観的理由(人からどう思われたいのか)は、自分ではコントロールできないことだ。頑張っても無駄になる可能性があるため、評価を落とされない程度の努力で止めてしまう人が多い。
「もっと良いものをつくりたい」「笑顔のセールスマンになりたい」「新しいスキルを覚えたい」など、主観的理由(自分がどうなりたいか)を目標にすると、モチベーションを保つことができる。自分の努力次第で達成可能だからだ。
他人と競争するのは悪いことではない。だけど、他人と比較するのはストレスになる。過去の自分との比較で成長を実感できると、もっと成長したいと考えるようになる。モチベーションは連鎖し、上がっていく。
自分の成長が止まっていると感じるときのモチベーションの上げ方は、評価の仕方を変えてみることだ。
6今より高い目標を部下に達成してもらいたいとき
心理学の実験と結果
ある木材運送会社の社長が自社トラックの積載状況を調べた。積載量の平均は最大積載量の60%だった。社長は「積載量を94%にすること」と具体的な指示を出した。
結果、9ヵ月後には自社トラックの積載量の平均が90%まで上がった。
心理学での結論「目標は具体的な数字で表す」
目標は具体的な数字で指示することが大切だ。
求められる以上の仕事をこなす部下は少ない。具体的な数字で、部下が受け入れやすい目標を提示すると、仕事に取り掛かるモチベーションになる。「あと少しだ、がんばれ!」などの抽象的な言葉より、「あと5件だよ」と数字で伝えた方が行動につながる。ゴールが見えるため、モチベーションが上がるのだ。
大事なのは、指示の実現可能性だ。「手が届きそう」「達成できる」と部下が感じる目標を提示する。はじめる前から「できない」と思うような目標はよくない。高すぎる目標は人のやる気を低下させる。
部下のモチベーションを上げるには「少しがんばったらできること」をお願いすることだ。具体的な数字で伝えると、部下は達成可能な目標かどうか判断できる。「自分にできそうだ」と感じたら、高いモチベーションで仕事に取り組んでくれる。
7仕事を先延ばししてしまうとき
心理学の実験と結果
ある会社が「アンケートに答えた人には5ドルあげます」と発表した。A地区には「締め切りは5日後」と伝え、B地区には提出期限を設定しなかった。
結果、アンケートの提出率はA地区が66%、B地区はわずか25%だった。
心理学での結論「細かい仕事にも締め切り期限を設定する」
期限を設けると人はやる気を出す。相手に動いてもらうには「〇〇までにお願い」と区切りをつけることが重要だ。「なるべく早く」と言うより「〇日の〇時までに」と具体的な期日を指定する。
締め切りを伝えるのは、相手に対しての優しさだ。期日を決めることで、相手はスケジュールを立てやすくなる。仕事の優先順位を決めるのにも役立つ。
長期の仕事は小さなタスクに分け、それぞれに期限を設定する。たとえば説明会を開催する場合、配布資料の準備、パワーポイントの作成、データや数字の確認、話す練習、会場の設営など、細かなタスクに分け、いつまでに行うか決める。
長期の仕事はモチベーションを保つのがむずかしい。集中力が続くように、小さな仕事に分解し期限を設ける。結果として、仕事はスムーズに進むのだ。