よく眠ったはずなのに、翌朝の目覚めがよくなかったり、お昼に眠気やだるさを感じたりするようになったのはいつからだろう。朝目覚めたときに、すっきりしたと感じた最後の日はいつだったろう。
頭と体がすっきりしないのは睡眠の質が落ちて眠りが浅くなっているから。その原因は脳疲労にある。僕らはスマホとパソコンの使いすぎて脳をいじめている。脳は疲れきっているのだ。
この記事では睡眠の質を向上させるための、脳疲労をとる方法を紹介する。
mokuji
脳疲労は眠りを浅くする
疲労の回復には睡眠は欠かせないけれど、眠っている時間を単純に増やせばいいというわけではない。じゅうぶんに疲れをとりきるには、睡眠の質をよくする必要がある。
睡眠の質とは眠りの深さだ。眠りが浅いと、夜中になんども目が覚めたり、目覚めた朝にぐっすりと眠った感じがしなかったり、体にだるさが残ったりする。
眠りの深さは、成長ホルモンの分泌や脳の休息に関わってくる。体の疲れをとってくれる成長ホルモンは、眠りはじめのいちばん深い睡眠で分泌のピークを迎える。疲労を回復させるには、深い眠りにするすると落ちることが大切なのである。
眠りを深さは、睡眠アプリで測ることができる。グラフを見てみると、眠りの深い人は海の底に沈むように深々と眠りに落ちていくのに対して、眠りの浅い人はまるで溺れているみたいに覚醒と浅い眠りをくりかえしているのが見てとれる。
眠りが浅くなる原因は脳疲労である。現代人は体より脳のほうが疲れやすいという。これはスマホやパソコンのせいだ。脳に疲労がたまると眠りは浅くなる。脳疲労を解消することは、睡眠の質の良さにつながるというわけだ。
脳疲労の原因は目の疲れと猫背
睡眠の質を下げるのは脳疲労であるという話をした。これは脳疲労が自律神経にちょっかいをだすからである。脳は疲れてくると悪さをするのだ。
眠るときには副交感神経が優位のリラックスした状態が好ましいが、脳が疲れていると交感神経が活発になってしまう。交感神経が活発になっているということは、眠っているときにも緊張しているのである。緊張しながら深く眠るなんて器用なことは僕ら人間にはできない。
睡眠の質が下がると、眠っても脳の疲れが残ってしまう。そうして脳疲労はちょっとずつ蓄積していく。たまった脳疲労のせいで、睡眠の質はもっと悪くなる。睡眠の質を見直さないかぎり、この悪循環はいつまでも続くのである。
脳が疲れると、体のだるさを感じたり、やる気がでなくなったりする。これは休養が必要であると脳が決断をくだして、からだ中の活動量を落とすからである。活動量を抑えることで脳は回復を図ろうとしているのである。
脳疲労のおもな原因は眼精疲労と姿勢の悪さにある。具体的にいうと、目の疲れと猫背だ。
いまの人は、仕事中はパソコンを使って、そのほかの時間はほとんどスマホを見て過ごしている。デスクワークというのは、気をつけていても上半身は前のめりになる。こういう働き方と習慣は目を使いすぎだし、姿勢も悪くなる。
脳疲労を解消するためにまず取り込むのは、目の疲れをとることである。そして次に見直すのは、前かがみに固まった筋肉をぐりぐりとほぐして背筋を伸ばすことである。
脳疲労の原因1 眼精疲労
目は「露出した脳」と呼ばれている。これは目が脳とつながりの深い器官だからである。目の疲れは、視神経をつたって脳をも疲れさせる。
眼精疲労を招くいちばんの原因はスマホとパソコンである。スマホやパソコンは目を酷使する。ディスプレイが発するブルーライトは視神経と脳を刺激して疲労させる。
またスマホは画面が小さい。小さい画面をじっと見つづけることで、目の動きは一点にとどまる。動きを固定することは目の疲れの原因となる。これは同じ姿勢を続けているとしんどいのと同じ理屈である。
脳疲労の原因2 猫背
猫背とは前傾姿勢である。前傾姿勢は脳の血液の流れを悪くする。
スマホやパソコンを使っているときは猫背になりやすい。集中していると吸い寄せられるようにだんだんと画面に近づいていく。猫背は首や肩、背中のコリをまねく。猫背の姿勢が長くつづくと、首や肩甲骨のまわりの筋肉が固まって血の巡りがうまくいかなくなるからである。
首や肩の血の巡りが悪くなると、脳に流れる血液や脳髄液が少なくなったり、頭皮がこわばって頭をしめつけたりする。その結果として脳の疲れが取れにくくなるのである。
睡眠の質を向上させる方法[仕事編]
仕事でデスクワークをしていると、目は疲れてくるし体はこってくる。放っておくと夕方にはひどいことになる。目の疲れや体のコリは、ときどきとってあげることで脳疲労の解消につながる。目の疲れには目の体操、肩のコリには肩回し、頭が重く感じたときは頭蓋マッサージが効く。
目の体操
スマホやパソコンは目の動きを一か所にとどめる。固定による疲れは、目を大きく動かすことで改善する。目を大きく動かすことは、脳にとってよい刺激となり、脳疲労の解消にもつながる。
体操のやり方は、「十字」→「Z」→「丸」の順番に大きく目を動かすだけである。
- 左手の人さし指であごを押さえて顔が動かないように固定する
- 右手の人さし指を顔のまえにだす
- 「十字」をゆっくり大きく描いてその指先を両目で追う
- 「Z」をゆっくり大きく描いてその指先を両目で追う
- 「丸」をゆっくり大きく描いてその指先を両目で追う
肩回し
肩回しは肩甲骨まわりのコリがほぐれる。スマホやパソコンで前方に傾いている肩をうしろにまわして胸を開くことで、血の巡りがよくなり、固まっていた筋肉がゆるむ。
肩回しは、椅子に座ったままでも立ち上がってもできる。肩こりがひどい人は無理をしないでそっとまわすようにする。
- 手のひらを自分に向けて両手の指先を肩にくっつける
- 胸を大きく開くようにしてひじと肩をうしろ側にゆっくり大きくまわす
- 深呼吸をしながら20回くりかえす
頭蓋マッサージ
頭蓋マッサージは、長時間のデスクワークで重くなった頭がすっきりする。目の疲れもとれる。頭皮のこわばりをほぐすことで、脳への血の巡りや脳髄液の流れがよくなり、脳疲労がとれる。
頭蓋マッサージをするときは力を入れすぎないようする。力の加減は、痛いけど気持ちいいくらい。側頭部は左右の耳の上あたり、頭頂部は頭のてっぺんのことである。
側頭部を押しもむ
- 左右の耳の2cmほど上のところに手のひらのつけ根を押し当てる
- ぐりぐりとまわす感じで10回押しもむ
側頭部全体をほぐす
- 左右の耳のすぐ上に親指以外の4本の指を立てて3回押しもむ
- 頭頂部に向かって少しずつ上げていって、4か所くらいほぐす
頭頂部を押しもむ
- 頭頂部の左右に5本の指を立てて押し当てる
- ゆっくりまわしながらぎゅっと押し込んだあと力を抜く
- 10回くりかえす
睡眠の質を向上させる方法[自宅編]
スマホやパソコンによる目の疲れは、その日のうちにとるようにする。眼精疲労を残したまま眠ると、睡眠の質は落ちてしまう。
目の疲れをとる方法をいくつか挙げるので、ひとつくらいはやってみてください。蒸しタオルとツボ押しをどちらもするときは、温めてからツボを押すほうが効く。
蒸しタオルで温める
首の後ろと目のまわりを蒸しタオルであたためると、血の巡りがよくなる。目の疲れをとる以外にも、副交感神経を優位にして眠りに入りやすくなる。
蒸しタオルは、フェイスタオルを水で濡らして電子レンジで1分ほど温める。温めすぎるとやけどしちゃうので気をつける。蒸しタオルには厚手のものを使うと温かい状態をながく保てる。
首のうしろを温める
- 蒸しタオルを首のうしろの髪の生えぎわに当てる
- 3分ほど待機する
生えぎわのまわりには目の疲れや安眠に効くツボがある。温めることでツボも刺激できる。
目のまわりを温める
- 蒸しタオルを目の上におく
- 3分ほど待機する
首のうしろをさきに温めておくと、血の巡りがよくなる。
ツボ押し
ツボ押しは呼吸に合わせてやる。押すときは口から息を吐いて、力を抜くときは鼻から息を吸う。力加減は、押すときも力を抜くときもやさしく。動きはゆっくりする。目のまわりは皮膚が薄いので、ぐりぐり押し込んじゃわないように気をつける。

安眠のツボ
安眠はぐっすり眠れるようになるツボである。耳のうしろの出っ張った骨の下にあるくぼみから指1本分さがったところにある。
- 両手の親指を左右のツボに当てる
- 頭の中心に向かって10回押し上げる
風地のツボ
風地は眼精疲労に効くツボである。後頭部の髪の生えぎわの首筋の外側にある。
- 両手の親指の腹を左右のツボに当てて、残りの指で頭を支える
- 頭の中心に向かって10回押し上げる
目のまわり
目のまわりをやさしく押すことで、目の疲れがとれる。
- 目を閉じて、眼球とその上にある骨のあいだに親指を横にして当てる
- 親指で眼球の上の骨に向かって押す
- 3秒押して3秒休む、を3回くりかえす
- 眼球の下にある骨に人さし指、中指、薬指を軽くひっかけるように置く
- 3本の指で下に向かって押す
- 3秒押して3秒休む、を3回くりかえす
- こめかみのくぼみに人さし指、中指、薬指の腹を置く
- くるくる回しながら10回押しほぐす
睡眠の質を向上させる方法[その他]
ここまでは目の疲れと猫背にスポットライトを当てて書いてきたけれど、睡眠の質を向上させる方法は他にもある。
瞑想を1分間する
瞑想は、頭をリラックスさせて脳の疲れをとってくれる。瞑想をするときのコツは、情報が入らないように目を閉じて、呼吸に意識を集中することである。そうすることで自律神経がととのう。
ここで紹介するのは仕事の合間にできる1分間の瞑想である。本格的なものをやりたい人は、お寺に問い合わせてください。
- 目を閉じる
- 腹式呼吸を意識して息を6秒吸って、3 秒止めて、10秒吐く
- 3回くりかえす
不安を書きだす
不安は脳にとっては大きなストレスとなり、脳疲労をつよめる。
不安というのは、頭の中でこねくりまわしているうちに、どんどんとふくらんでいく。最初はほんの小さな心配事だったものが、そのうちに大きな問題に思えてくる。不安に思うことを紙に書きだすことで、不安はもと通りの大きさに戻り、余計なストレスを感じなくて済む。
不安を書きだしたとなりには、こうなってほしい、という理想を書く。たとえば、「明日は大事な商談がある。うまくまとまらなかったらみんなに笑われる」という不安を書き、そのとなりには「商談はうまくまとまった。翌朝のミーティングでみんなから拍手を受けた。うれしかったし、自信もついた」と書く。
理想と、そのときの感情や気持ちを合わせて書くのである。そして、不安のほうには大きな「×」をつける。こうすることで潜在意識によいイメージが残って脳の負担が軽くなる。
スクワットをする
スクワットは熟睡できるようになる筋トレである。下半身の大きな筋肉を動かすことで、全身の血の巡りがよくなる。また、自律神経も整う。
スクワットは足がむくんでくる夕方や、長く椅子に座っていたあとにやる。回数は10回を目安にする。
- 両足を肩幅もしくは肩幅よりちょっと広めに開いて立つ
- 息を吸いながらゆっくりとしゃがんで、息を吐きながらゆっくり立ちあがる
- 10回くりかえす
しゃがむときにひざがつま先より前に出てしまうと、ひざや腰を痛める原因になる。猫背になったり、腰をそらしたりするのもよくない。両手を耳のうしろに当てて胸を開くようにすると背筋が伸びる。
寝室の温度をちょっと涼しめに設定する
人は眠りに入るときに脳と体の体温が下がる。この体温調整をサポートしてあげると、落ちるように眠れるというわけである。
寝室の湿度は、夏は26℃・冬は23℃、湿度は50〜60%くらいがちょうどよいと一般的にいわれている。とはいっても、暑さと寒さの感じ方には個人差があるので、自分がちょっと涼しい、と感じるくらいに設定するとよい。
バスタオルで枕をサポートする
睡眠の質を高めるには、まくら選びは重要である。まくらが高すぎると、首に負担がかかる。肩が浮いていると肩まわりの筋肉に力が入ってぐっすり眠れなくなるのだ。
思い当たる人は、バスタオルを使ってすき間を埋めるとよい。やり方はバスタオルを丸めて、首と肩と敷き布団のあいだに入れるだけである。首と肩を下から支えることで楽な姿勢を保てる。
この記事のざっくりとしたまとめ
この記事はざっくりまとめると、こういう内容である。
- 脳疲労がたまると、眠りが浅くなって睡眠の質が落ちる
- 脳疲労がたまる原因は目の疲れと猫背である
- 目の疲れと猫背の原因はスマホとパソコンである
- スマホやパソコンのない生活をするのはちょっと考えられない、だって不便じゃん
- だから、目の疲れをとったり猫背を直したりする方法をいくつか紹介するので、よかったらやってみればいいんじゃないの
- 睡眠の質が向上するかもしれないわよ
この記事は睡眠セラピストである松本美栄先生の著書『濃縮睡眠メソッド』を参考にして書いた。睡眠の質を向上させたい人は読んでみてください。Amazonでもよく売れてるみたい。