会社の上司や先輩の話を聞いていると、どうにもこうにも眠くなる。つまらないのだ。昼食後は特にひどい。睡眠の世界に吸い込まれていくあの感覚はなんなのだろうか。人には到底耐えられないほどの眠気なのに眠ってはいけないというのはどういうことなのか。残酷すぎるではないか。
「睡眠が足りていないんでしょ」。それは確かにおっしゃる通りだけれど、社会人にはゆっくりと眠れない事情がいろいろとあるのだ。上司のつまらない話を聞いても眠くならない方法はあるのだろうか?
交感神経を刺激して眠気を抑える方法
まずはじめに、眠気についておさらいをしよう。呼吸をする、食べ物を消化するなど、人が生きていくために24時間働き続けている自律神経には、交感神経と副交感神経がある。交感神経が脳と体が元気よく活動しているときに働くのに対して、副交感神経はリラックスしているときに働いている。太陽と月のような関係だ。
眠気を感じるのは、副交感神経が働いているときだ。脳とからだがリラックスして体温が下がりはじめると眠くなる。反対に交感神経を刺激してあげると、眠気は抑えられる。
交感神経を刺激して眠気を覚ます方法でポピュラーなのは、痛みによって刺激を与える方法だ。学生時代、シャープペンシルの先で手の甲を刺したり、体の一部を指先でつねったりした経験がある人は多いと思う。原始的だが理にかなった方法なのだ。
他には緊張状態を作って眠気を抑える方法がある。口で息を吐いたり、握りこぶしを作ったりすると、からだは戦闘態勢に入って警戒心が強くなる。興奮しているときの状態を再現することで、交感神経を呼び戻しているのだ。
上司のつまらない話を聞いても眠くならない方法
上司のつまらない話を聞いても眠くならない方法は「質問をする」ことである。眠くなるのは何も考えずにぼんやりと聞いているだけで、実際には会話に参加していないからだ。体は上司の前にいるけれど、心はどこかに旅に出ているのだ。
会議中、他の社員が発言しているときにウトウトしていても、「〇〇君意見はありますか?」と上司に指名されて、いざ自分が発言する立場になった瞬間、いっきに眠気が覚める。これは自分には関係ないと思っていたのに、急に会話に参加することになったからだ。安全地帯が戦闘地帯に変わって、副交感神経が交感神経に切り替わったのだ。
内向的な性格で、質問をじっさいに口に出すのがはずかしい、抵抗があるという人は、頭の中で質問内容を考えてみるだけでも構わない。ポイントは、会話をしているときと同じように脳を働かせることだ。発言するだけが会話ではない。質問を考えるのは積極的に会話に参加しているということだから眠くなることはない。
内向的な人は話を聞く力も質問力も高い
内向的な人は質問をして話題を引き出したり、合いの手を入れて会話を盛り上げたりするのが苦手なので、人の話を聞くのに向いていないのではと悩んでいる人が多い。だけど心理学的には内向的な人のほうが、外交的な人に比べて質問力が高いと言われている。
外交的な人は他者とコミュニケーションをとるのが得意だから、人の話を聞くのにも向いているように思われている。ところが実際のところ、自分が話すチャンスをうかがいながら話を聞いているので、会話の内容が頭に入っていないことが多い。そしてなにより、外交的な人は飽きっぽい、退屈しやすいという特性がある。人の話をじっと聞くのは苦手なのだ。
対して内向的な人は、ものごとを自分の中に取り入れるのがうまい。人の話を内面に取り込みながら聞くことができるので、相手が何を求めて話をしているのかがわかる。相手の気持ちを理解した上で核心をついた質問ができるので、相手に喜ばれる。話を聞く力も質問力も高いのだ。
営業などビジネスの場面でも、初対面では外交的な人のほうが話が盛り上がるけれど、長い目で見れば内向的な人のほうが深い信頼関係を作っている場合が多い。
つまらない話は出世と売り上げアップのチャンス
つまらない話は、何度も聞いたことがある話や、自慢話、武勇伝である場合が多い。同じ話を何度も繰り返す上司の神経はまったく理解できないものだし、まるではじめて聞いたかのような演技をしている自分にもうんざりしてくる。人の自慢話や武勇伝ほど、聞いていてつまらない話はない。
でも、どうして上司は同じ話ばかり繰り返すのだろう? 自慢話や武勇伝を語りたがるのだろう?
それは上司にとって誰かに聞いてもらいたい話だからである。何度も同じ話を繰り返すのは、過去にどこかで大爆笑を誘って、よい気分を味わったからかもしれない。自慢話や武勇伝を語るのは、自分のことを少しでもかっこよく見せて、興味を持ってもらいたいからかもしれない。話したい理由は上司それぞれ違うが、聞いてほしいという強い欲求があるのはみな同じなのだ。
悩みごとがあるとき、その悩みをじっと聞いて共感してくれる友人のことを大切にする。もしその友人になにか辛いことがあったときには助けてあげたいと思うだろう。聞いてもらいたいという欲求を満たしてくれる人はそれほど貴重で、大切な存在になり得るのだ。
つまらない話はチャンスなのだ。あいづちを打ちながら真剣に話を聞く。質問をして興味を示す。話がおわったあとには感想を伝える。他の人がつまらなさそうに聞いているなかで、これができるだけでいっきに株が上がる。上司との関係が深まって評価が高くなる。取引先の担当者は気分がよくなって注文をくれる。お客さんはハンコをおしてくれる。つまらない話を眠くならずに聞けるというのは、立派な仕事術なのである。