パワハラ・セルフチェック あなたのパワハラ危険度がわかる15の質問

パワハラ・セルフチェック あなたのパワハラ危険度がわかる15の質問

あれもパワハラ、これもパワハラ。部下にとってはありがたいけれど、上司には頭の痛い時代がやってきた。

肩身の狭い思いをしている上司は多いのではないか? 職場には部下がいて、マイホームには嫁がいる。こづかいは減らされて、ちやほやしてくれる場所に行くにはお金が足りない。おっさんばかりの居酒屋で今日も安い酒を飲む。

自分が部下だったころは上司はもっと堂々としていたはずなのに。ほんとにひどい話だ。

この記事では、パワハラ危険度がわかるパワハラ・セルフチェックを用意した。15の質問にはひとつひとつ解説もつけている。

パワハラ・セルフチェック

パワハラセルフチェックは全部で15問ある。深く考えず、職場での自分の考えや普段の行動に近いものを選んでほしい。

  1. 仕事でいちばん大切なのは結果だ
  2. 出社や退社のとき、部下とすれ違ってもしっかりと挨拶をしていない
  3. 「です・ます」調など、部下には丁寧な話し方はしない
  4. 部下への指示にはメールやSNSを使うことが多い
  5. 部下が上司の命令に従うのは当たり前だ
  6. 相手と話しているとき、自分のほうが話している時間が長い
  7. 「でも」「だって」など、言い訳をする人間は大嫌いだ
  8. ミスをした部下をみんなの前で立たせたまま説教するのも、ときには必要だ
  9. 最近の若者は打たれ弱いと思う
  10. 指導の仕方とか部下との関わり方とか、仕事が忙しすぎて振り返る余裕がない
  11. 表情やしゃべり方に感情が出やすいほうだと思う
  12. いらいらすると、ノック式のペンをカチカチ鳴らしたり、机を叩いたりするクセがある
  13. 宴会や飲み会を断るのは、職場のコミュニケーションを軽くみている証拠だ
  14. 部下の残業が増えているけれど、忙しいので仕方がない
  15. なにか言うとパワハラだと言われるから、部下とはなるべく接したくないのが正直なところだ

5個以上あてはまる人は、パワハラをしている危険性がある。部下にはパワハラ上司と嫌われているかもしれない。

パワハラ・セルフチェック解説編

パワハラセルフチェックにある15の質問は、上司としての考え方や行動が適切であるかを明らかにするものだ。適切な指導と受け取るか、パワハラと受け取るかは、相手との信頼関係によっても変わる。日頃から適切なコミュニケーションをとることを心がけたい。

1 仕事でいちばん大切なのは結果だ

その通りだ。組織を運営していくには結果が必要となる。いすに座り、たばこをふかしているだけで給料が増えた時代はおわった。いまは戦国時代だ。米粒ひとつ残さないくらいに貪欲に働かないと、温かいご飯にはありつけない。

ただ、部下を育てるという点では、結果主義すぎるのはどうかと思う。仕事というのは道路みたいなもの。結果という目的地までには無数の行き方がある。

はじめは徒歩でゆっくりとしか進めなかった部下が、ある日には自転車の乗り方を覚えている。数日後にはバスに乗り、電車にも乗れるようになった。すごい、飛行機まで使うようになったぞ。

そういった結果までのプロセスを見て、成長をともに喜んでこそ、お互いの信頼関係は強いものになっていく。自分を育ててくれた上司のために一肌脱いでやろうとなるのだ。そういう絆のあるチームは、お尻にムチを打たなくても結果を残す。あなたのために。

2 出社や退社のときに、部下とすれ違ってもしっかりと挨拶をしていない

パワハラが多いのは、きちんと挨拶ができていない職場だといわれている。フレックスタイムや在宅勤務など、働き方は多様になってきた。働く側としては自由に働けるのは大きなメリットだが、核家族化が進み、家族の団欒がなくなった家庭と同じように、社員同士のコミュニケーションは少なくなっていく。

どんな時代でも、コミュニケーションの基本はまずは挨拶からだ。人には承認欲求がある。部下たちは上司に認められたいと思っている。挨拶を無視されると、自分はいなくてもいい存在なのかなと不安になるし、自信もなくなる。やる気もなくなる。

挨拶は自分の存在を主張するとともに、相手の存在を認める行為だ。おれはいつだってお前を気にしているぞ。その気持ちを伝えるあげるだけで、部下はやる気をだす。

顔を上げ、目を見て、「おはよう」と告げるだけだ。簡単じゃないか。

3 「です・ます」調など、部下には丁寧な話し方はしない

セクハラとは違って、パワハラには「相手がパワハラだと感じるとパワハラになる」といった判断基準はない。上司に叱られたのを部下がパワハラだと感じても、それが適正な範囲内での指導ならパワハラにはならない。

相手の気持ちを基準にしていたら、部下にはなにも言えなくなるし、学級崩壊したクラスみたいに職場は秩序を失うからだ。

とはいっても、相手も人間だ。好き嫌いはある。たとえ正しい指導であっても、相手にどう伝わるかには気をつけたほうがいい。部下がパワハラだと感じるラインは、信頼関係によって上下するからだ。

たとえば部下を叱るとき、愛想がない話し方だったり、見た目が怖かったりするとパワハラだと受け取りやすい。逆に穏やかな話し方だったり、やさしい見た目だったりするとパワハラだと感じにくい。単純なようだけど、これが人間なのだ。

指導しているときは、上司も部下も感情的になる。上司はミスをした部下にイライラしているだろうし、部下はミスを反省しているとはいえ怒られるのはやっぱり気分が悪い。

そういう状況では「です」「ます」で話すほうが平和的に解決できる。丁寧に話しながら怒りの気持ちを持続させるのは思った以上に難しいから、お互いに冷静さを取り戻せる。

4 部下への指示にはメールやSNSを使うことが多い

メールは便利だ。離れた場所からでもやりとりができるし、時間をそれほど気にすることなく連絡がとれる。文章に残るため、あとから読み直すことができるし、「言った」「聞いてない」でけんかになることもない。メールがない生活は考えられないし、スピード感がある現代の仕事には欠かせない。

だけど、デメリットもある。メールは文章のみの通信手段だ。相手に伝わる文章を書けるといいのだが、それが意外とむずかしい。

とくにビジネスでは文章を書くことだけにゆっくりと時間をかけれない。急いで書いた文章はだいたいが言葉足らずになる。うまく気持ちが伝わらず、誤解が生まれる。ビジネスメールで失敗した経験がある人も多いはずだ。

いまは社員間の連絡にSNSを使う会社も増えてきた。SNSは便利だが、やはりデメリットはある。メールと同様に文章のみの通信手段だということと、そのスピード感だ。

SNSは会話をしているような速さでメッセージを交換する。十分に内容を考えず、短文で返事をすることが多いため、だいたいは説明不足になる。なんだこれ?となる。いらっとする。いらっとした気持ちを落ち着かせるひまがなく、やりとりは続く。どんどんヒートアップしていく。

口頭で伝えると、そういうデメリットはない。言語情報(文章)に加えて、聴覚情報(話し方や話すスピード)、視覚情報(表情)がある。コミュニケーションに必要とされるすべての要素がそろっている。

要は使い分けだ。普段の連絡はメールやSNSでいいけれど、感情的を伝えるときは会って話す。叱るとき、褒めるときには、相手の目を見て伝える。気持ちははっきりと伝わり、誤解は生まれない。

5 部下が上司の命令に従うのは当たり前だ

企業に勤めているのだから、部下には上司の指示・命令に従う義務がある。指示に従わない社員がヒーローになれるのはテレビドラマの主人公だけだ。テレビの前の僕らには特別な能力はない。ごく普通の人間だ。

勘違いしてはいけない。スタンドプレーをしてみてもだいたいは失敗に終わる。まわりの人に迷惑をかけ、会社の秩序を乱すだけだ。会社に逆らうのがかっこいいと思っている子どもたちは、はやくその過ちに気づいたほうがいい。見ていて恥ずかしいからだ。

ただ、上司に対して意見も言えないような職場はよくない。そういう職場は、窓を閉め切った部屋みたいに空気が淀んでいる。窓を開けてきれいな空気をあたえないと、部下たちは活発に動けない。

部下は軍隊でも、ロボットでもない。血の通った人間だ。それぞれが自分の考えを持っている。それを吐き出す機会を与えず、上から抑え込むのはパワハラ的な考え方だ。

部下の意見が間違いで上司の意見が正しいなら、それを納得できるようにわかりやすく伝えるのが上司の役割だ。

6 相手と話しているとき、自分のほうが話している時間が長い

部下とのコミュニケーションが一方通行になっていないだろうか?

伝えたいことや聞きたいことがあるときにだけ呼び出し、自分の要件が済むと部下がまだ話を続けていたり、納得していない様子だったりしても、子犬を追い払うようにあっちいけという態度をあからさまに示すのは、まちがったコミュニケーションだ。

これでは信頼関係は築けない。まるでSEXをしたいときだけ彼女に優しくなる彼氏みたいだ。やることおわったらそっぽを向いて眠るような彼氏に彼女はなにを思うだろう? 気持ちは離れるはずだ。

それは部下も同じだ。ちっとも話を聞いてくれない上司に部下は不満を持つ。自分に興味がないのかなと悲しくなり、自信を失う。こんな上司のためにがんばる気にはならないし、やる気もなくなる。

部下に関心を持とう。部下の行動や反応を気にかけ、話を聞いてあげよう。ときには褒めて、ときにはアドバイスをあげよう。もっと見てあげよう。こういった態度が部下との信頼関係を強くするのだ。

7 「でも」「だって」など、言い訳をする人間は大嫌いだ

言い訳をしない人はかっこいいと思う。上に媚び下にきびしい上司に比べると、200%かっこいい。職人的というか、頑固者というか、昭和のおやじを連想させる。俺についてこいと背中で語る上司には憧れる部下は多いだろうし、文句ひとつ言わず黙々と働いてきた人の言葉には説得力がある。

ただ、誰もがそういう人になれるわけではない。部下にはいろいろなタイプがいる。言い訳をするなという指導は、ある人には合うが、ある人には合わない場合がある。一方的すぎて柔軟性がないのだ。

なかには言い訳が空気の抜け道になり、精神状態が安定する部下もいる。そういう部下から言い訳を奪うのは、延々と風船に空気を入れていくようなものだ。いつかは爆発してしまう。

ぴりぴりと張り詰めた緊張感の中で働くのは苦手な人もいる。それは悪いことではない。個性なのだ。

自分のやり方や考えを押し付けるのはパワハラになる。自分の信念を曲げる必要はないが、部下の言い分に耳を傾けてあげるのは上司の大切な役割だ。部下たちは、耳の穴の詰まった上司は大嫌いだ。

8 ミスをした部下をみんなの前で立たせたまま説教するのも、ときには必要だ

厚生労働省はパワハラを6つに分類している。

  • 身体的な攻撃(暴行・傷害など)
  • 精神的な攻撃(脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言など)
  • 人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視など)
  • 過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害)
  • 過小な要求(業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じる、または仕事を与えない)
  • 個の侵害(プライベートに過度に立ち入る)

パワハラは「業務上の適正な範囲を超えて」のいじめや嫌がらせをいう。

「ミスをした部下を説教する」のは業務上の適正な範囲内での指導なので問題ないが、「みんなの前で立たせたまま」という部分は業務上の適正な範囲を超えた指導だ。指導をするのは1対1でいいのに、見せしめのためにわざと人前で行なっている。これは明らかに嫌がらせであり、侮辱であり、パワハラだ。

9 最近の若者は打たれ弱いと思う

最近の若者は打たれ弱いと世間では言われている。たとえばゆとり世代はこんな感じだ。

  • 「褒めて伸ばす」教育方針のため、昔のように学校や家庭できびしいしつけを受けていない
  • 少子化の影響で、兄弟げんかなどの苦労した経験がない
  • 親と子、先生と生徒の関係が友達に近くなり、きびしい上下関係がなくなった

「こういう特徴があるんだ、なるほど」と参考にするのはいいけれど、「だからゆとり世代はだめだ」と決めつけるのはおかしい。

欠点ばかりに注目するのは卑怯だ。彼らにはほかの世代が持っていないスキルがある。たとえばITスキルだ。パソコンを扱ったり、情報を検索したりという能力は、40代以上の上司をはるかに上回っている。これらは現代の社会では欠かせない能力だ。

彼らはある部分では劣っているかもしれないが、ある部分では優れているのだ。

「最近の若者は〇〇」とひとくくりにする考え方も危険だ。こういう考え方は、「男はこうあるべきだ」「女のくせに」という性差別意識が根底にあるように感じる。これは「男らしさ」「女らしさ」の強要につながり、セクハラやパワハラのもとになる。

「男なら打たれ強くあるべき」というのは、長時間残業や理不尽な命令にだまって耐えろと言っているように聞こえる。それはただのパワハラだ。

10 指導の仕方とか部下との関わり方とか、仕事が忙しすぎて振り返る余裕がない

最近はプレイングマネージャーが増えてきた。名称はおどろくほどかっこいいが、じっさいには名ばかり管理職に近い。彼らは自分の仕事にプラスして部下の指導まで求められる。仕事は増える。役職手当はもらえるけれど残業代はでなくなる。まさに社畜と言っていい存在だ。

プレイングマネージャーは体力的にも精神的にも疲れ切っている。毎日へとへとになるまで働いているのに、「今月は売上が下がっているぞ」と上からは尻を叩かれ、「ミスっちゃいました」と下からは尻拭いを頼まれる。「もう知りません」とすべてを投げ出したくなるほど、彼らには余裕がない。

そして余裕がなくなると起きやすいのがパワハラだ。追い詰められた彼らは、普段では考えられないほど強く部下に当たってしまう。忙しすぎて、理性のスイッチがうまく入らないのだ。

いちばん大切なのは自分の心と体だ。そして心と体が安定しているときにはパワハラは起きない。これ以上がんばれないと感じたら、まわりに助けを求めたり、仕事量を減らしてくれと上司に相談したりしたほうがいい。自分を守ることが、部下を守ることにもつながるのだ。

11 表情やしゃべり方に感情が出やすいほうだと思う

感情は出していい。喜怒哀楽が表情にでるのは自然なことだし、神様はきっとそういうふうに作ったのだ。人間らしくていいじゃないか。仕事中だからといって感情を殺して過ごすのは疲れるし、外に出るものを無理に内に抑え込むのは便秘みたいに体に悪そうだ。

表情豊かな上司のほうが部下もやりやすい。報告や相談があるときには、部下は上司の機嫌をこっそり観察する。話しかけるタイミングを計っているのだ。

いつも仏頂面でブルドックの置物みたいになっている上司はなにを考えているのかわからない。機嫌がいいときと悪いときがはっきりしない。こういうのは困る。とくに悪い報告は機嫌がいいときに知らせたいのだ。

ただ、いつもいらいらしたり、怒ったりしているのはよくない。上司はだいたい中心に座っているから、そういった感情はまわりに伝わりやすい。これは部屋の真ん中に腐った牛乳びんを置いているようなもの。部下は息苦しいし、職場の空気は悪くなる。

いらっとしたときには、まずは大きく深呼吸。ときには笑顔を作ってみる。そうすると不思議といらいらは消えていく。上司がちょっと引きつった作り笑いをしていたら、部下もきっと笑ってしまう。職場の空気はいっきに晴れるだろう。上司は職場の太陽になれるのだ。

12 いらいらすると、ノック式のペンをカチカチ鳴らしたり、机を叩いたりするクセがある

コミュニケーションをとるときには、語られる言葉より、相手の態度や雰囲気を人は敏感に察する。メラビアンの法則は、コミュニケーションには言語、聴覚、視覚の3つの要素があり、それぞれが矛盾しているときには、7%、38%、55%の割合で各要素を重視するといっている。

たとえば部下を指導するとき、「怒っていないよ」と言いながらも、ペンの突起をカチカチコチコチしていたら、部下は「うそだ。この人は怒っている」と疑う。

コミュニケーション以外でもそうだ。職場でも、家庭でも、電車のなかでも、いらいらしている人はすぐにわかる。そういう人が近くにいると、こちらも気分が悪くなる。伝染するのだ。

態度や雰囲気というのはとても雄弁に語る。上司はチームの中心にいる。影響力のある存在だ。その上司がいらいらしていると、それはまわりに影響する。職場の雰囲気は暗くなり、部下の気分は沈む。

いらいらしていると感じたときには、コーヒーを入れに席を立ったり、軽くストレッチをしてみたりして、その姿を部下には見せないように心がけたい。部下のためにも、自分の健康のためにも、そうしたほうがいい。

13 宴会や飲み会を断るのは、職場のコミュニケーションを軽くみている証拠だ

これはちょっと古い考え方かもしれない。ひと昔前は自分を犠牲にして会社に身を捧げるのが「正義」で、職場の飲み会や上司の誘いを断るのは「悪」とされる時代があった。そういう時代を否定するつもりはないし、日本人は勤勉だと世界から評価されるのは彼らががんばってくれたおかげだ。

最近ではプライベートを大切にする人が増えてきた。時代の流れもそういう人たちを応援する向きに変わってきている。家族や友人と過ごす時間、自分の好きなことをする自由な時間を大切にしたいという価値観だ。

この価値観は、ある一定の人には職場のコミュニケーションを軽くみているように映るのだろう。そう思うのは勝手だ。好きにすればいい。ただその価値観を他人に強いるのはよくない。

時代が変わると価値観も変わる。職場は、20代から60代までの世代が集まって働くところだ。自分とは異なる価値観を受け入れられない石頭な上司は、川の流れを阻害する岩のようなもの。はっきりいって邪魔だ。その場所に頑なにとどまるなら、その身は削られ、いずれは消えてしまうだろう。

14 部下の残業が増えているけれど、忙しいので仕方がない

パワハラと長時間残業は同時に起こるケースが多い。たとえば、サービス残業を命じるのは、長時間労働を強いるパワハラだ。他にも、ひとりではこなせないほどの仕事を与えたり、仕事に必要な情報を教えずに業務を妨害したりといったパワハラは、長時間労働を間接的に引き起こす。

長時間労働が原因で部下がうつ病などの精神障害を発症すると、上司は管理監督責任を問われる。労災認定の裁判では、タイムカードやPCの起動時間、日記、家族の証言などから、残業時間を割りだす。自宅に仕事を持ち帰っている場合も残業となるのだ。

上司は自宅作業も含め、部下ひとりひとりの合った業務量を見極めないといけない。

ほかの部下も同じくらいの業務量をこなしているというのは、言い訳にしか過ぎない。業務量の調整は本人に合わせておこなうものだ。ほかの社員とのバランスを優先して、本人の能力や体調を考慮しないのでは、のちのち大きな問題となる。

15 なにか言うとパワハラだと言われるから、部下とはなるべく接したくないのが正直なところだ

まるで家に帰りたくない夫の言い訳のようだ。

「家にいるとなにをしても文句ばっかり言われるんです。テレビを見ていると掃除の邪魔って言われるし、掃除を手伝おうとすると邪魔しないでって怒られる。手伝わなかったらそれはそれで機嫌が悪くなる。八方ふさがりとはまさにいまの僕のことですよ。あの家には僕の居場所はないんです。小太郎以下の存在なんです。え、小太郎ですか? 雑種犬です。はい。6歳です。はい。かわいいです。はい。……だから家には帰りたくないんです」。

奥さんに、たまには花でも送ってみたらどうだろう?

声の大きい部下はたしかに扱いづらいし、まったくかわいくない。関わりたくない気持ちはよくわかる。だけど、放っておくのはいけない。そのままでは部下はますますつけあがるし、ほかのまじめな社員には示しがつかない。職場の秩序を乱す部下を指導するのは上司の役割だ。

なにも怖がることはない。適正な範囲内で正しく指導するかぎりはパワハラにはならない。厚生労働省もそう言っているし、裁判所もそういう判決を出している。国家権力が味方についているのだ。上司として堂々と指導すればいい。

まとめ パワハラ・セルフチェックを振り返る

パワハラ・セルフチェックの結果はどうだっただろうか?

記事を書いていて思ったのは、パワハラというフレーズが思ったより出てこなかったことと、コミュニケーション、信頼関係に関する内容が多かったことだ。別のテーマで記事を書いている気分だった。

それもそのはずだ。厚生労働省は「職場のパワーハラスメントに関する実態調査(2016)」で、パワハラ相談がある職場の共通の特徴をあげている。

  • 上司と部下のコミュニケーションが少ない職場 45.8%
  • 失敗が許されない/失敗への許容度は低い職場 22.0%
  • 残業が多い/休みが取り難い職場 21.0%
  • 正社員や正社員以外(パート、派遣社員など)など、さまざまな立場の従業員が一緒に働いている職場 19.5%

「職場のパワーハラスメントに関する実態調査」の報告書を公表します – 厚生労働省

コミュニケーションの少なさがパワハラの原因だと多くの人は感じているのだ。

また、2番目以降をみると、パワハラは上司や部下といった個人が原因ではなく、会社全体が原因だとわかる。会社の雰囲気や環境がパワハラ加害者を生み出す装置になっているのだ。

パワハラ加害者は会社が育てたモンスターであり、ある意味では被害者といえるのかもしれない。もちろんパワハラはいけないことだが。

当記事では、パワハラの定義や判断の基準、適正な範囲内での指導などについての説明は省いた。あまりに長すぎたからだ。詳しく知りたい人は、下のリンクの記事がおすすめだ。パワハラを教科書的にまとめている。

パワハラの定義とは? 「部長、それアウトです」パワハラ審判員育成講座

セクハラ・セルフチェック あなたのセクハラ危険度がわかる15の質問

教養としてのセクハラ学|家庭を守りたいお父さんたちの必修科目

セクハラにあたる7つの事例とその対策をまとめた

参考書籍:『ハラスメント時代の管理職におくる職場の新常識』樋口ユミ

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