人事考課表の自己評価を高めに書ける社員が出世できる理由

人事考課表の自己評価を高めに書ける社員が出世できる理由

毎年、あるいは半年に一度、査定の資料として提出を求められる人事考課表。業務がひとつ増えるので、社員からはあまり好かれていない。そして普段はその存在すら忘れられている。ちょっとかわいそうな書類である。

だが、人事考課表は一発逆転の可能性を秘めた書類なのである。この書類で一年間の評価が決まるといっても過言ではないのだ。評価が上がる必勝法があるし、絶対に書いてはいけないこともある。

書き方を知っているか、知っていないかで評価が上がったり下がったりするのである。

人事考課表で反省する社員は出世できない

人事考課表を書くときに絶対にやらないでもらいたいのは、反省することである。反省点を書いてしまうと、目標未達だった場合はもちろん、達成できた場合でも仕事ができない社員という評価をされる可能性がある。

たとえば営業職の場合「取引先A社への売り上げ目標は前期比20%UPで達成した。しかし担当者との面談は月1回しか実施できなかった。来期は早めのアポイントを心がけて面談の回数を増やしたい」と書いたとする。

この文章では後半の反省点ばかりが印象に残る。目標を達成するためにきっといろいろ頑張ったんだろうけれど、その部分が相手にはまったく伝わらない。それどころか、「もっと頑張れたんじゃないの?」と見られてしまうかもしれない。それほど反省のインパクトは強いのだ。

この場合は「担当者が長期出張で不在という逆境のなか、メールで新商品の詳細情報を送り、電話でのフォローも欠かさなかった。その結果、従来品の補充と合わせて新商品の注文も取ることができ、前年比20%UPの売り上げを達成した」とアピールしたい部分をしっかりと書くのが好ましい。上司の受ける印象もプラスに傾くはずだ。

自己評価を控えめに書いても出世できない

もうひとつ、控えめが美徳とされる日本人がやってしまいがちなのは、自分が思っているよりも低めに自己評価をつけてしまう失敗である。控えめに書いても上司が正しい評価に直してくれると考えているなら大きな過ちである。

上司といっても仕事中ずっと付きっきりというわけではないのだから、正確な評価なんてできっこない。一番正しく評価できるのは自分自身なのだ。人事考課表をアメリカ大陸だと思って大胆にアピールするくらいでちょうどいい。

人事考課表はその場で捨てる紙切れではなくて、何年も残しておく大切な書類である。昇進のときなど数年分を見返すこともある。一度提出してしまったら、本当は低く書いてあったとしても、それが自分の評価になってしまうのだ。だから人事考課表には、プラスの印象を与える内容だけを書いた方がいい。運転免許書と同じで、ちょっとでもかっこよく、かわいく見せたい気持ちで臨むのが鉄則なのだ。

人事考課表は自己評価プラス1を徹底する

人事考課表には、じっさいの自己評価より高めに書くのをおすすめする。たとえば5段階評価の場合、自己評価が3の場合は4にする。これは最初に提出する数字が、のちに上司が評価するときの基準になるからである。

だから正直に自己評価を3で提出すると、最終的には2〜4のあいだの数字に落ち着く。すこし背伸びして4で提出すれば、3〜5のあいだで調整される可能性が高い。上司にとって部下の人事評価というのは気をつかうものである。部下の自己評価から2段階も数字を落とすのは気がひけるのだ。上司も普通の人間だということである。

入社したばかりで上司が付きっきりで仕事を教えている時期は別として、上司が部下の行動を確かめる機会はそれほど多くない。会議で報告を受ける、口頭やメールで進捗を確認する、資料の数字で判断するくらいである。

上司は部下の行動の細かいところまでは把握できていないのである。それは上司もわかっている。だからこそ、部下の最初に提出した自己評価の数字を判断の基準にするのである。そしてその数字を大胆に変更するのはためらわれるのだ。

自己評価をほとんど5にすると評価が高くなるんじゃない? という悪い子の発想が頭に浮かんでくるかもしれない。

だが、部下の評価に自信がないからといって上司もバカではない。自己評価が高すぎると、自分を客観視できない人物と評価されて、はずかしい思いをするかもしれない。自己評価プラス1程度に抑えておくのが、上司を数字のトリックでまどわすコツなのである。欲を出して失敗しないように心がけよう。それが出世の近道になる。

人事考課表のコメントでは自分の成長をアピールする

大切なのでもう一度繰り返すが、記述部には絶対に反省点を書かないこと。

人事考課表は、今期の実績をしっかりとアピールする書類である。期首に設定した目標を達成したことを書くのは当然として、自分の成長も合わせて記入することだ。前期と比べて自分はどのように成長したのか、なにができるようになったのか、を目標を達成したこの機会に存分にアピールするのである。

たとえば、「前期は年齢層の高いお客様に対して商品の説明に終始して商談時間が短かった。今期は雑談力の弱さを克服するため、新聞の読む範囲を増やし興味の幅を広げた。その結果、どの年代のお客様とも平均してコミュニケーションを取れるようになった。商談の時間が伸びた分、会話の中からお客様のニーズを感じ取るチャンスが増え、今期の振り上げ目標を達成できた」と書く。

自分の成長があって、そのおかげで売り上げ目標が達成できたという文章を書くことで、前期より能力、スキルが上がっていると上司にアピールする。上司としては、部下が成長しているのに、去年より評価を低くするわけにはいかない。上司より心理に有利に立って、高評価を勝ち取るのである。

目標未達の原因は自分の能力以外に求める

期首の目標をいつでも達成できるとは限らない。とくに営業職の場合には前期の売り上げをベースとして、数パーセント上乗せされた数字が今期の目標になることが多い。もともと高めの数字なのだから、達成し続けるのはむずかしい。

目標を達成できなかった場合には、その理由を自分以外に求めるのが好ましい。自分が原因ですと書くと、どうしても反省文になってしまう。はじめにも書いたが、人事考課表で反省点を書くのはご法度である。親を人質に取られても書いてはいけない。

たとえば取引先が経営不振であるとか、お客様の都合が悪くなったとか、法律が変わったとか、計画を立てた期首には想定できなかった変化が起こったという部分を書く。目標を達成できなかった原因は自分の能力、スキル不足ではないことをアピールするのである。

担当者が自分ではなく上司だったとしても対応できないような理由を書くことができれば、評価を落とされることはない。同じ経験をしたことのある上司の場合には、もしかすると同情票をもらえるかもしれない。

数値化できない期首目標はできるかぎり具体的に書いておく

営業職など、期首の目標を数値化できる部署は、目標を達成したことがはっきりとわかる。上司も部下も納得できる評価に落ち着き、面談で波乱が起きることは少ない。上司と部下のあいだで、達成できた、できていないの水掛け論にならないためにも、可能な限り、期首の目標は数字で書いておくのが好ましい。

もしどうしても数値化できない業務の場合は、期首の計画を立てる時点で、どこまで仕事を進めれば目標を達成したといえるのかを上司とすり合わせて、明確な達成条件を定めておくようにしたい。

たとえば、出退勤の管理をタイムカードからICカードに変更する場合、新しい出退勤のシステムを完成させると書くだけではすこし物足りない。システムを完成させるだけでいいのか、社員に新しいシステムを知らせるところまでなのか、新システムの運用を開始するところまでなのかがわからないからである。

部下はシステムを完成させるだけで達成だと思っていても、上司は新しいシステムを社員に知らせて説明会を実施することで達成と考えているかもしれない。部下は目標達成だと思っているのに、上司が目標未達だと判断する可能性がある目標ではギャンブルが過ぎる。期首の時点で上司と達成条件を確認して、具体的な目標を設定するように心がけたい。

今回であれば、「出退勤の管理をタイムカードからICカードの変更する新しいシステムを完成させ、全社員向けの説明会を実施する。運用は今期の目標には含まれない」という条件で上司の了承を取っておくのである。上司に正しい評価を受けるためにも、上司との確認はしっかりと行おう。

以上のポイントに気をつけることで、わかりやすい人事考課表を書くことができる。人事考課表は上司にアピールしておしまいではない。人事の担当者や経営幹部も見ることになる。上司が説明するときにも使うのである。しっかりと伝わる文章でまとめることで、それぞれのあなたに対する評価が高まるのである。それが今後の出世への近道となるのだ。

人事考課表の自己評価を高めに書ける社員が出世できる理由