セクハラ・セルフチェック あなたのセクハラ危険度がわかる15の質問

セクハラ・セルフチェック あなたのセクハラ危険度がわかる15の質問

あれもセクハラ、これもセクハラ。平成の終わりのセクハラには夏の終わりの台風くらい勢いがある。

朝のニュースで、気象予報士が「今日の天気はやや曇りです」と報告した後に「5年後には女性社員の吐いた二酸化炭素を吸っているだけで上司はセクハラと言われる時代がやってきそうです」と付け加えても、「そうだよな。最近のセクハラはすごいもんな」とすんなり受け入れてしまいそうだ。

この記事では、セクハラ危険度がわかるセクハラ・セルフチェックを用意した。15の質問にはひとつひとつ解説もつけている。

セクハラ・セルフチェック15

セクハラセルフチェックは全部で15問ある。深く考えず、職場での自分の考えや普段の行動に近いものを選んでほしい。

  1. 職場のコミュニケーションには、軽い冗談くらいは必要だ
  2. 職場で、ある人には「〇〇さん」と苗字で、ある人には「△△ちゃん」と名前で呼んでいる
  3. 同僚が言ったらセクハラにならないのに、自分が言ったらセクハラだと言われた。不公平だ
  4. 重要な仕事を任せるなら、女性より男性だ
  5. 自分はなにを言っても許されるキャラクターだ
  6. 部下に対して「親しく」しようと心がけている
  7. セクハラと言われたくないから、異性の部下とは必要以上の会話はしない
  8. ニュースでセクハラ事件が報じられても、まさかうちの職場にはないだろうと他人事だ
  9. 飲み会やお酒が好きだ
  10. 部下のプライベートを知っておくのも上司の役目だ
  11. 職場では、女性と男性はそれぞれ違った役割がある
  12. 女性には気を使うが、男性にはきびしく接する
  13. 男性部下に「彼女いるのか?」と聞いてしまう
  14. 「それ、セクハラですよ〜」「やめてくださいよ〜」と部下が笑っているなら、下ネタを言っても大丈夫だ
  15. 若い女性社員がたくさんいるとうれしい

5個以上あてはまる人は、セクハラをしている可能性が高い。職場の要注意人物リストにも載っているだろう。

セクハラ・セルフチェック解説編

セクハラセルフチェックにある15の質問は、ジェンダー意識や、思い込みに関する意識を明らかにするものだ。正しく理解していないと、無意識にセクハラをしてしまう可能性がある。

1 職場のコミュニケーションでは、軽い冗談くらいは必要だ

どんなに軽い冗談でもだれかを傷つける可能性はある。その冗談は職場のみんなを笑顔にするものだろうか? 作り笑いをしている部下はいないだろうか? 冗談を言うときにはそういった意識をいつも持っておきたい。

異性だけでなく、相手が同性でも発言には気をつける。相手が男性なら下ネタを言ってもいい、ちょっとくらいバカにしてもいい。そういった考え方がセクハラにつながるのだ。

2 職場で、ある人には「〇〇さん」と苗字で、ある人には「△△ちゃん」と名前で呼んでいる

名前で呼ばれるのは気にならない人もいる。だけどなかには、いやらしい感じがして嫌だという人もいる。いい大人がいい大人に向かって「ちゃん」づけで呼ぶのは、ある人には夜の世界を連想させ、ある人には対等ではない関係を感じさせるのだ。

また、まわりの人がどう感じているか、という視点も必要だ。お気に入りの部下を△△ちゃんと呼ぶ上司をほかの部下たちはどう思っているのか。

きっと笑っている。下心があるとか、鼻の下を伸ばしているとか、上司がいないところで話のネタにしている。そんなつもりはなくても、部下たちはそう見るのだ。

3 同僚が言ったらセクハラにならないのに、自分が言ったらセクハラだと言われた。不公平だ

セクハラは相手がどう受け止めるかがポイントだ。誤解を恐れずにいうと、日頃から相手を尊重して信頼関係を築けているなら、ちょっとくらい不用意な発言をしても軽く流してもらえる。だけど、相手を軽くみて信頼関係を築けていないなら、少しのセクハラでもアウトだ。

セクハラと判断する基準は相手によって変わる。ハードルが上下するのはたしかに不公平かもしれないが、その種をまいたのは自分自身だ。というより、種をまかず、畑を耕すのをさぼった結果がいまの状況を招いたのだ。心当たりのある人は日頃の自分の言動を振り返ってみてほしい。

4 重要な仕事を任せるなら、女性より男性だ

男性と女性には生物学的な違いがある。だけど、それと仕事の能力はまったく別物だ。

「むずかしい仕事は男性がやるべき」「女性は男性のサポートをすべき」。こういった思い込みを「性別役割分担意識」と呼ぶ。性別役割分担意識は「女性らしさ」「男性らしさ」の強要や性差別的な言動につながり、セクハラのもとになる。

僕たちは、誰もが少なからず「女らしさ」「男らしさ」を基準に相手を判断している。子どもの頃から、家庭や学校でそういった刷り込み教育を受けてきたからだ。いちど身についた思想は、白いシャツにこぼしたソースのシミみたいに簡単には消えない。うまく付き合っていくしかない。

だからこそ、自分にも性差別意識があり、セクハラをする土壌があるのを認めることが第一歩になる。そうすれば、普段から自分の言動には気をつけるようになる。セクハラをしてしまう可能性は低くなるはずだ。

5 自分はなにを言っても許されるキャラクターだ

本当にそうだろうか? それはただの思い込みかもしれない。信頼関係を築けているとか、いい上司だと慕われているとか、自己評価の高い人ほど危険だ。そういう人は自分が見たいようにしかものごとを見ようとしない。あるいは、ピノキオのように高くなった鼻が邪魔でまわりがうまく見えないのかもしれない。とにかく裸の王様になりがちだ。

職場では自分の言動に責任を持つのはもちろん、不用意な発言をしてしまったと思ったときには、そのまま放置せず、相手にどう感じたか、言い過ぎなかったか確かめたほうがいい。素直に謝れば、ちょっとくらいの過ちは許してもらえる。そして過ちは繰り返さないことだ。

6 部下に対して「親しく」しようと心がけている

社員が仲のよい職場は上司にとっては理想だ。向上心のある上司たちは、行き帰りの電車ではコミュニケーションに関する本を読み、居酒屋では部下のグチを聞き、飲み代を払い、休日には管理職研修に出席し、ほかにもなんだかんだして理想の職場を作ろうとする。そしてときにはやり過ぎてしまう。

親しい仲にも礼儀ありということわざがあるように、親しくなって遠慮がなくなると不仲の原因になる。「親しさ」が「馴れ馴れしさ」に変わり、セクハラにつながることがある。

親しくしすぎるのもよくないのだ。とくに上司と部下の関係なら、職場ではほどよい距離感を保ちたい。

7 セクハラと言われたくないから、異性の部下とは必要以上の会話はしない

男性上司たちが女性部下との会話を必要以上に恐れるのは、「相手がセクハラだと感じたらセクハラになる」という部分をその言葉どおりに受け取っているからだと思う。

ほんとうのところは「一部のフレーズ(性的な発言やプライベートに関する話題など)を相手がセクハラだと感じたらセクハラになる」だ。セクハラ抽選のがらがらに入っているのは、すべての言葉ではなく一部の言葉だ。

抽選箱の中には「おっぱい大きいね」とか「彼氏いるの?」とか、そういった言葉は入っているけれど、「猫にエサをあげた」とか「消費税増税には反対だ」とかいった言葉は入っていない。

数字は適当だけれど、たとえば「おっぱい大きいね」はだいたい95%くらいの女性がセクハラだと感じる(なかにはうれしい人もいる)し、「彼氏いるの?」はだいたい30%くらいの女性がセクハラだと感じる(なかには気にしない人もいる)。

「おっぱい大きいね」という大胆なセクハラ発言をしても、5%の男性上司は生き残る。これが「相手がセクハラだと感じたらセクハラになる」の意味だ。

対して「猫にエサをあげた」はいつだって0%だ。運の悪い男性が3%の低確率で引き当てセクハラと言われる、といった悲劇は起きない。セクハラにあたる一部の言葉にさえ気をつけていれば、セクハラと言われることはないのだ。

8 ニュースでセクハラ事件が報じられても、まさかうちの職場にはないだろうと他人事だ

僕らが気づいていないだけで、セクハラはいたるところで起きている。会議室でも休憩室でも、コピー機の前でも、移動中の車内でも、ふたりの人間が収まるスペースが存在するならどこでもだ。

言葉のセクハラは離れていても起きる。いまはスマートフォンがあるから、どんなに離れていても、たとえば地球の裏側のブラジルからでもセクハラはできてしまう。セクハラは国境を超えるのだ。

うちの職場にはセクハラはないと言い切れるだろうか?

9 飲み会やお酒が好きだ

お酒が好きなのも飲み会が楽しいのも悪くない。楽しむときは楽しんだ方がいい。だけど、アルコールが入ると気が緩み、口や手が活発になる人があまりにも多い。じっさい多くのセクハラが飲み会で起きている。

飲み会は仕事の延長上にある。上司には部下を監督する責任がある。お酒に飲まれて部下に介抱してもらうような上司は話にならないのだ。飲み会では、部下がビールを何杯お代わりしたかとか、からあげをいくつ食べたとか、そういうくだらないことをカウントできるくらいの余裕が欲しい。

10 部下のプライベートを知っておくのも上司の役目だ

職場の環境を良くするために、部下の仕事や体調に目を配るのは上司としての大切な役割だ。そういった上司は部下からの信頼も厚いだろう。自分を気にかけて声をかけてくれるのは、部下はうれしいものだ。

だけど、干渉しすぎるのはよくない。「休みの日にはなにをしているのか」「恋人はいるのか」といった仕事に関係ないプライベートな領域まで踏みこむのは行き過ぎた行為だ。そういうのは、部下を管理したい上司のエゴでしかない。部下には精神的な負担となる。いいことはなにもない。

11 職場では、男性と女性はそれぞれ違った役割がある

これは4問目にでてきた性別役割分担意識に関する質問だ。性別役割分担意識は「女らしさ」や「男らしさ」の強要につながり、セクハラのもとになる。たとえば、次のようなものがある。

  • 女性は気を利かしてお茶くらいいれてほしい
  • 女性には書類コピーや電話対応などサポート役が向いている
  • 顔やスタイルをほめると女性はよろこぶ
  • 雑用をやってくれる女性がいると仕事がはかどる
  • 女性は女性ならではの視点を生かした仕事をするべき
  • 男性は家庭を持ってこそ一人前だ
  • くよくよするのは男らしくない
  • 男性だから少しくらいプライベートをからかっても傷つかない
  • 男性だったら残業して手伝ってくれたらいいのに
  • 男性は体力があるから遅くまで働いても大丈夫だ

現在は男女平等の時代だ。仕事の役割に「女性らしさ」「男性らしさ」を求めるのは好ましくない。

12 女性には気を使うが、男性にはきびしく接する

セクハラ被害を訴えるのは女性だけではない。男性もいる。たしかにセクハラ被害を訴える男性は少ない。それはセクハラを受けている男性が少ないのではなく、声をあげられる男性が少ないからだ。

セクハラは男性から女性が受けるものというイメージはいまだに根強く残っている。男性社員が勇気をだしてセクハラを訴えても「よく声をあげた」とはならず、どちらかというと「男のくせにちょっとくらい我慢しろ」「ちっさい男だな」といった目で見られる。社内で浮くのは、加害者ではなく被害者だ。男性は耐えるしかできない。

男性同士のセクハラはイメージできないという人は、こう考えてほしい。女性に対してセクハラになるすべての言動は男性に対してもセクハラになると。

セクハラに男女の区別はない。下ネタをいうのも、体を触るのも、セクハラになる。飲み会で強引に服を脱がすのも、風俗店に無理やり連れていくのもセクハラになる。

男性にはなにをやっても許される時代はおわった。「男のくせに」「男だったら〇〇だろう」といったカビの生えかけた古い考え方は、いまでは通用しないのだ。

13 男性部下に「彼女いるのか?」とつい聞いてしまう

相手が男性社員の場合はセクハラに対する意識が低くなりがちだ。同性でもセクハラは起こると頭ではわかっていても、身体的な部分ではなんだかすっきりしない。なんだかなぁと思っている人は多いと思う。

時代が進むと、考え方も変わる。「おまえ、童貞だろ?」「ち、ちがうよ」なんておふざけが許されたおだやかな時代はおわったのだ。当時も童貞たちは苦しんでいたし、傷ついていた。やっと、童貞たちが守られる時代がやってきたのだ。すばらしいじゃないか。

相手が男性だろうと女性だろうと、プライベートに関する質問はデリケートなものだ。薬局でコンドームを買うときには見えないように厳重に包装してくれる。上司にもその気遣いが求められているのだ。

14 「それ、セクハラですよ〜」「やめてくださいよ〜」と部下が笑っているなら、下ネタを言っても大丈夫だ

これはいじめっ子の考え方だ。相手が笑っているから喜んでいると思った。いじめっ子の言い訳と変わらない。相手はうれしくて笑っているのではない。セクハラから逃れたくて笑っているのだ。世の中には自分を守るための笑顔があることくらい大人なら理解できるはずだ。

上司に対して、部下はなかなかNOとは言えない。蛇ににらまれた蛙だ。蛇を目の前にすると、ほとんどの蛙は足がすくみ、飲み込まれるのをただ待つしかできない。立ち向かえるのはひと握りの勇者的な蛙か、あるいは一部の愚か者の蛙だけだ。ほとんどの部下は勇者でも愚か者でもない。ただの蛙だ。

すべての部下がはっきり拒絶できるならこの世からセクハラはなくなる。少なくとも、いまほどは騒がれていない。

いまの管理職はバブルとかそういった時代に、上司の理不尽な要求に耐えてきた世代だ。上司に逆らえない部下の気持ちをわかってあげられるはずだ。

15 若い女性社員がたくさんいるとうれしい

あなたが男性で、多少なりとも女性に興味があるなら、この質問の答えはきっとYESだ。つまり世の中の一般的な男性(語弊があるかもしれないが)はほとんどYESと答える。もちろん僕もYESと答える。

若い女性社員がたくさんいるとうれしいのは、男性なら仕方がないことだ。神様がそんなふうに造ったのだから、僕らにはどうすることもできない。この気持ちは本能なのだ。苦情は神様に言ってほしい。

ただ、部下を年齢や性別で区別するこの本能がセクハラとなる言動につながるのは、認めざるをえない。僕らは生まれながらのセクハラ予備軍なのだ。日頃から気をつけておかないと、セクハラ上司と呼ばれる日がいずれはやってくる。

うれしいと思ってもいい。だけど、うきうきした気持ちは胸の奥の深いところにそっとしまって、ふたをして、ガムテープを貼っておくべきだ。職場では背筋を伸ばして、日曜日のぽかぽかした昼下がりの公園で読書をしているときのようなおだやかな気持ちで過ごす。鼻の下を伸ばしてはいけないのだ。

まとめ セクハラ・セルフチェックを振り返る

セクハラ・セルフチェックの結果はどうだっただろうか?

世の管理職にはむずかしい時代になった。ゆとり世代とかさとり世代とか、そういったよくわからない世代が続々と入社して、それだけでもコミュニケーションには困っているのに、さらにはセクハラにも気をつけろと言われる。職場では陶器の置物みたいに黙っている上司も多いと聞く。

じっさいのところ、セクハラはそんなに怖いものではない。セクハラをひどく怖がる現在の雰囲気は、まるでオバケを怖がる子供たちみたいだ。オバケは電気をつけると怖くないし、大人になると風が吹く音とか、木々が擦れる音とか、窓が揺れる音とか、そういった自然界のいたづらが原因だったとわかる。

セクハラだってそうだ。セクハラが得体の知れないものだから怖いのだ。「セクハラにあたる言動」にはパターンがある。英単語みたいにいちど覚えてしまえば、あとはそれに注意するだけでいいのだ。

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