普通の人向け「速読のコツ」|特別なトレーニングなしに速く本が読める

普通の人向けの速読のコツ|特別なトレーニングなしに速く本が読める

この記事で紹介する速読のコツは、ごく普通の人が特別なトレーニングなしに速く本が読める方法だ。

記事を読み終わり、速読のコツを身につけても、スーパーマンに生まれ変わることはない。目がギュルギュルと動くようにはならないし、写真をとるみたいに文字が脳みそに張り付くようにもならない。普通の人のままだ。

だけど、ひとつだけ手に入る能力がある。「30分以内に1冊の本を読み、その内容を何も見ずに友だちに5分ほど語れる」能力だ。そういった速読のコツを紹介する。興味があるだろうか?

速読法は人生のチート行為

速読のコツを身につけるモチベーションを上げてもらうため、ひとつの物語を用意した。

ある魔法使いがいた。20歳のとき、魔法の研究のため彼は旅に出た。旅立ちの日、父は彼の肩を抱き、母は流れる涙をてのひらで隠した。旅の途中、彼はなんどもモンスターと戦った。痛い思いをした。ときには死ぬこともあった。だけど彼はあきらめなかった。長い月日が過ぎた。

レベルが30になったとき、強力な魔法を覚えた。すでに60歳になっていた。彼は引退を決めた。生まれた街に帰ってきた。遠い昔、父と母と彼が住んでいた家。彼はその人生を、一冊の本にまとめた。

ある若者が街にやってきた。20歳そこそこだろうか。彼は疲れていた。しかし、どの宿屋も満室だった。今夜は冷える。空き家を見つけ、こっそり忍び込んだ。

何もない家だった。さみしい暮らしだったようだ。机の上で一冊の本を見つけた。椅子に腰をかけ、読みはじめた。

窓の外が明るくなってきたころ、彼はレベル30の強力な魔法を覚えた。少し眠ることにした。

ずるいと思わないか? 一冊の本には、ある人間が5年、10年、あるいは人生のほどんどの時間をかけて学んだこと、体験したことがまとめられている。それを数時間(速読のコツを使うとたったの30分)で追体験できる。速読法を使うと、短期間で最強のキャラ(もちろん自分自身)が作れるのだ。

読書には人生を変える力がある。そして、速読法は人生のチート行為だ。速読のコツを身につければ、人生はイージーモードになる。さあ、速読法を身につけよう!

速読のコツは5ステップ

速読のコツは、次の5ステップだ。本を「速く読む」だけでなく「記憶する」「人に話す」「実生活に役立てる」まで含んでいる。ちょっとよくばりな速読法だ。

  1. 目標設定
  2. 主題を見つける
  3. サマリー・リーディング
  4. ピンポイント・リーディング
  5. アウトプット

さっそくはじめよう。

1 目標設定

速読のコツ、最初のステップは「目標設定」だ。本を読むときは、目的をはっきりさせる。

  • どのような情報が知りたいのか?
  • この本から何が学びたいのか?

人は、何かを求めているときにだけ、その答えが見つかる。何も求めていなかったり、目的が曖昧だったりした場合には、答えが見つからない。自己啓発の本に書いていそうな言葉だが、その通りだと思う。次の例文をみてほしい。

AとBがスーパーマーケットに買い物に行った。Aはトマトパスタを作るため、トマト缶がほしい。BはAに着いてきただけだ。特に欲しいものはない。

ふたりは缶詰の売り場に寄った。Aは目的どおりトマト缶を見つけ、買った。Bはホワイトアスパラ缶がなんとなく気になり、買った。ふたりは満足し、家に帰った。

その夜、Aはトマトパスタを作った。おいしかった。Bはホワイトアスパラ缶を収納ボックスに入れた。いつか使おうと思っている。しかし、3ヶ月後には、その存在すら忘れてしまった。

読書でも同じことが言える。「〇〇について知りたい」という目的があるからこそ、その答えが見つかる。読書で得た情報を役立て、悩みや課題が解決できる。

目的がはっきりしないと、何も手に入らないか、あるいは必要のない情報が得られるだけだ。たくさんの本を読んでも、すばらしい情報が書かれていても、気づかず、素通りする。アウトプットの機会も訪れず、忘れてしまう。

また、目的がはっきりするほど、検索能力が高くなる。アンテナがしっかりと立っている状態だ。

休憩中、C先生はサンドイッチを片手に、本を読んでいた。題名が目を引き、なんとなく買ってしまった本だ。半分くらい読み進めたが、おもしろくない。惰性で読んでいるのだ。

校長が食事から戻ってきて、Cに話しかけた。「何を読んでいるんだい?」。Cがタイトルを伝えると、校長は言った。「おもしろそうだな。今度の朝礼で話したいから、内容をまとめておいてくれないか?」。C先生は笑顔で快諾した。校長にはさからえない。

C先生は開いていたページを閉じた。そして最初のページに戻り、真剣に読みはじめた。

「いつか役に立ったらいいな」と思っている本より、「すぐになんとかしたい」悩みや課題を解決してくれる本のほうが集中して読む。求める心が強いほど、答えに出会う確率が高くなるのだ。

速読のコツを学び、たくさんの本が読めるようになったとしても、自分の課題が解決できるような価値のある情報を読み取り、それを実生活で役立てないかぎりは意味がないのだ。

2 主題を見つける

本を読む目的は決まった。本文を読み進めたくてウズウズしていると思うが、もう少し待ってほしい。その前にやることがある。速読のコツの第2ステップ「主題を見つける」だ。

著者は何らかの情報を読者に伝えるために本を書いている。本文を読む前にその情報を探し出すのがこのステップの役割だ。

本文を読む前に主題を見つけるのはなぜか? そうしたほうが本文を読むときに内容がより理解できるからだ。次の例文を読んでほしい。

僕のやり方を説明しよう。まず、いくつかの山に分ける。量によっては一度にやってしまうときもある。僕が手を出すのはここまで。あとは彼がやってくれる。彼の仕事が終わるまでしばらく休憩だ。

なにをするかって? 本を読むことが多いね。だいたい1冊くらい読み終わるよ。速読のコツを使えばね。

彼の仕事が終わったら、また僕の出番だ。といっても仕事はほとんど終わっている。彼から引き継いだものを自宅に持ち帰り、それぞれ適切な場所に置いていくだけさ。次の出番はすぐにやってくるけどね。それまではここで待機させるのさ。

この例文をスムーズに読めた人は少ないと思う。難しい単語も出てこないし、文章も小学生レベルなのになんだか読みにくい。何について書かれた文章なのか、わからないからだ。

文章のタイトルが「コインランドリー」と知らされたらどうだろう? いっきに読みやすくなるはずだ。

主題がわからないまま本を読むのは、何を作っているか知らずに料理番組を見るようなもの。何を作っているか知った上で番組を見るから、メモがとれる。重要な情報が見分けられるのだ。

では、主題の見つけ方に進もう。主題を見つけるには、次の部分を読む。

  • タイトル
  • 目次
  • はじめに
  • あとがき
  • 著者のプロフィール

上記の部分をじっくり読むと、その本に関する基本的な情報が80%くらい手に入る。さらに、5分ほどパラパラとページをめくり、面白そうなところを2、3ページくらい読めば、3分は語れるようになる。

1冊の本について3分も語れるなら、その本を読んだと言ってもいいくらいだ。考えてみてほしい。今まで読んできた中で、3分も語れる本は何冊あるだろう? 6時間かけてぼんやりとしか覚えていないより、10分しか本に触れていないとしても、本を主題をつかみ、アウトプットできるほうがいいと思わないか?

また、目次には別のメリットもある。

人は何かを覚えるとき、関係のあるグループに分けたほうが記憶に残りやすい。たとえば、次の単語を覚えるとき、どうするだろう?

ネコ、たまねぎ、だいこん、イヌ、ロバ、にんじん、じゃがいも

多くの人は、動物(ネコ、イヌ、ロバ)と植物(たまねぎ、だいこん、にんじん、じゃがいも)に分けて覚えるはずだ。こうしたほうが覚えやすいと知っているから、無意識にグループ化しているのだ。

さらにグループ化したほうが、アウトプットしやすい。部屋の中に服を脱ぎ散らかしているより、シャツ、パンツ、靴下とグループごとにタンスにしまっているほうが取り出しやすいのと同じだ。

本を読むときも、グループを意識し、情報を整理する。都合のいいことに、本には目次がついている。「タイトル→章→大見出し→小見出し→段落」といった構造になっている。

構造を意識して本を読むと、内容がまとまりごとに頭に入るため、忘れにくくなる。目次を読むのはとても重要なのだ。

3 サマリー・リーディング

いよいよ本文に入る。まずは本の全体を眺め、次の部分を探し出す作業から始める。

  • 主題に関する部分
  • 自分の悩み・課題に答えてくれそうな部分
  • じっくり読みたいと思った部分
  • 興味や関心がある部分

ここで役立つのが、速読のコツ第3ステップ「サマリー・リーディング」だ。

やり方を説明しよう。サマリー・リーディングは「読む」ではなく「見る」読書だ。最後のページから最初のページに向け、パラパラとめくっていく。映画でいうと「巻き戻し」だ。

最後のページから見ていく理由は、最初のページからだと内容を読んでしまうからだ。このステップでは、主題に関する部分を探し出すのに集中する。

サマリー・リーディングでは、1ページを1秒で見る。長くても3秒まで。3秒以上になると、読んでいるからだ。

「そんなのムリだよ!」と驚くかもしれない。だけど、意外とできるのだ。速読のコツの第1、2ステップをきちんと済ませていれば、頭の中には本の主題が入っているはず。パッと見るだけで、主題に関する部分が書かれているページが見分けられる。

見つけたページには印をつける。付箋でもいいし、角を折ってもいい。書き込みでもかまわない。だけど、印をつけるだけで、まだ読まないでほしい。

サマリー・リーディングではテンポが大切だ。大胆にページをめくってほしい。そのほうが情報が目に飛び込んでくる。時間をかけると、文字を読もうとするため、視野が狭くなるのだ。

また、「大事なページを飛ばしているかも」といった心配はせず、自信を持って選んでほしい。

一般的に、1冊の本で読むべき部分は20%くらいしかないと言われている。さらに、読んでいる本人に必要なところはその20%程度だという。200ページの本の場合、自分に役立つのはわずか8ページなのだ。

「なるほど!」と感じる部分が1冊で8ページ見つかれば、ミッション成功といえる。あとのページは読み飛ばしてもかまわない。

本は全ページを読まなくていい。「読書は最初から最後まで読まないといけない」といった固定観念を持ってるなら、トイレに行くついでに流してしまおう。

料理のレシピ本を最初のページの1行目から読むだろうか? ページをめくり、全体を眺め、おいしそうな料理のページだけじっくりと読むはずだ。自分が作る可能性が低い料理のレシピを読むのは、無駄だと知っているからだ。読んでもすぐに忘れてしまうとわかっているからだ。

ビジネス書や実用書も同じだ。時間をかけ全体を読むより、自分に必要なページをなんども読むほうが、よっぽど効率がいい。そう思わないか?

4 ピンポイント・リーディング

速読のコツ第4ステップは「ピンポイント・リーディング」だ。サマリー・リーディングで印をつけたページを「前から後ろ」に読んでいく。

本文を読みはじめると、本の内容をおおよそ掴んでいると実感できるはずだ。本文を読むのは初めてでも、ステップ1〜3でおこなってきた作業で作者の伝えたい情報は頭に入っている。かなりのスピードで読めるだろう。

ピンポイント・リーディングでは、小見出しを頭に置きながら読む。情報をグループ化すると、記憶の助けになるからだ。ステップ2の内容を思い出してほしい。

詳しく知りたい部分は、印をつけたページの周りを丁寧に読み返す。理解がより深まるはずだ。

5 アウトプット

本を「速く読む」方法については、ステップ4までで解説が終わった。だが、はじめに宣言したとおり、この記事で紹介している速読法は、「30分以内に1冊の本を読み、その内容を何も見ずに友だちに5分ほど語れる」能力を手に入れるのがゴールだ。もう少し付き合ってほしい。

速読のコツ、最終ステップは「アウトプット」だ。アウトプットには「書く」と「話す」がある。まずは「書く」アウトプットからはじめる。

「書く」アウトプットでは、リーディングマップを作る。リーディングマップは、本から得た情報を整理し、紙などに書き出したものだ。書き方に決まりはない。箇条書きでも、マインドマップでも、自分が整理しやすい方法で情報をまとめる。

リーディングマップは、本を見ずに、自分の言葉で書くのが理想だ。本を見ながらでないと書けないようでは、頭の中に情報が入っているとは言えない。知識が自分のものになっていないといえる。

しかし、何も見ずに書くのはむずかしい。本を見ながらリーディングマップを作り、それをなんども読みなおす方法がおすすめだ。リーディングマップを見て、本の内容を振り返り、自分自身に説明する。その作業を繰り返すたびに、記憶が強化されていく。何も見ずに話せるようになる。

リーディングマップができたら、次は「話す」アウトプットだ。1冊の本について、5分間話すことができれば、内容が頭に入っていると言っていいだろう。

わかりやすく伝えようとすると、相手に伝わる表現に言い換える必要がでてくる。専門用語を噛み砕いて説明したり、身近なものに例えたりしないといけない。よりいっそう、理解が深まる。

また、人に話すと、記憶の抜けが見つかる。自分は100%理解していたつもりでも、いざ話してみるとうまく説明できなかったり、いまいち伝わらなかったりする。相手からの予想外の質問に答えられないときもある。自分では気づかなかった理解不足の部分を補う機会ができる。

本を読んだ時間を無駄にしたくないなら、友だちにコーヒーを奢ってでもアウトプットしたほうがいい。

まとめ|行動に移してこそ、速読のコツが活きてくる

速読のコツを5ステップで解説してきた。「なるほど」と思ったなら、実生活で役立ててほしい。

速読法を生かすも殺すも自分自身だ。たくさんの本を読んでも、それを行動に移さないと人生は変わらない。速読のコツを身につけても、宝の持ち腐れとなる。

見て、触って、はじめてわかることがある。うまくいかなくたっていい。失敗してもいい。成功でも、失敗でも、その間くらいでも、チャレンジすることで、見えてくるものがある。その積み重ねが人生を変える。そこでやっと、速読のコツが活きてくるのだ。

参考書籍:

  • 『一瞬で人生が変わる!アウトプット速読法』小田全宏
  • 『サマる技術』船登惟希

 

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