女の自殺は失敗するが、男の自殺は確実に死ぬ理由

女の自殺は失敗におわるが、男の自殺は本当に死んでしまう

女性には自殺未遂が多く、男性には自殺者が多い

自殺には男女差がある。女性には自殺未遂が多くて、男性には自殺者が多い。女性は男性よりも自殺するが生き残り、男性は女性よりも自殺しないが確実に死ぬ。自殺を試みたときに死んでしまう確率は、男性のほうが女性よりも6倍も高い。

平成28年度 自殺者の状況

  • 自殺者数は、男性15,121人、女性6,776人
  • 自殺死亡率(人口10万人あたりの自殺者数)は、男性24.5、女性10.4
  • 自殺者の自殺未遂歴の有無は、男性15.3%、女性29.3%

厚生労働省『平成29年版自殺対策白書』より

男女の自殺に関するねじれ現象には理由がある。女性は「助けてほしい」というサインをまわりに伝えるために自殺をするのに対して、男性は本当に「死んでしまいたい」と思いつめて自殺をする。

この男女の違いは、おばけ屋敷に入って怖さのメーターが30%くらいで叫ぶのが女性で、100%まで我慢して失神してしまうのが男性といえる。

女性には自殺未遂が多い理由

女性の自殺未遂は、はじめから死ぬつもりはなくて、心の中では生き続けたいと思っている場合が多い。自殺手段としてはリストカットが好まれる。ポピュラーな方法だ。

リストカットで死んでしまう人はほとんどいない。手首を切って傷跡という証拠を残すことで、自殺未遂をするほど苦しんでいるというサインをまわりに送っているのだ。

女性の自殺未遂は、本人が死のうと思っていないときにも起こる。本人が気づかないうちに、辛さや苦しみといった闇が心の深いところに少しずつ溜まっているのだ。ふとした瞬間に、ドロドロとしたものが心から外に溢れ出す。その結果、手首を切る、自分を傷つけてしまうという女性は多い。

女性ホルモンの影響もある。ホルモンのバランスが崩れると、とつぜん心が乱れたり、気分が落ち込んだりする。気持ちの揺れが女性には起こりやすい。パニック障害も女性のほうが男性のより2倍多いことがわかっている。

女性ホルモン

女性ホルモンの乱れは、生理不順、生理痛、PMS(月経前症候群)、不正出血、自律神経失調症、不妊、更年期障害などを起こす原因になる。

パニック障害

パニック障害では、動悸や息切れ、強い不安を感じる発作が突然起こる。パニック発作が繰り返されるうちに「次はいつ発作が起こるのだろう?」と不安になったり、人に会うのが怖くなったりして、普通の生活が送れなくなる。

 女性の自殺を止めたい場合には、「助けてほしい」というサインに気づき、しっかりと寄り添ってあげる必要がある。

男性には自殺者が多い理由

男性の自殺者は死ぬ可能性の高い自殺手段を好む。屋上からの飛び降り、電車への飛び込み、首吊りなど、より危険な死にかたを選ぶ。リストカットをする人はほとんどいない。男性は「助けてほしい」というサインを出さないのだ。

男性の助けを求めるサインは小さくて目立たない。この特徴が男性の自殺を止めるのをむずかしくする。家族や仲の良い友人でさえ、死の気配には気づかないかもしれない。 亡くなったあとで、「そういえば元気がなかった」「なんだか疲れている様子だった」と彼らが出していたかすかな死の兆しを思い返す。家族や身近な友人は変化に気づいてあげられなかったことを悔やむ。

男性の自殺を止めるには、物理的に自殺ができない環境を整えることが優先される。飛び降りたり、飛び込んだりできそう場所には背の高い柵を取り付ける。 駅のホームドアは自殺の防止として優れている。衝動でふらりと飛び込んでしまうことはない。ホームドアを乗り越える方法に意識が流れることで、自殺のことで100%になっている頭の中に新しい風を送り込める。

電車が通り過ぎてしまえば、今日死ぬのをやめるかもしれない。 決意は変わらないとしても、次の電車が来るまでの時間稼ぎにはなる。自殺までの時間が5分でも10分でも伸びれば、生きるチャンスが生まれる。

景気が良くなると自殺は減り、景気が悪くなると自殺は増える

人はいくつかの原因が重なって自殺をする。景気が悪くなる、残業が増える、うつ病を患う、会社をやめる、生活できない、家庭がギクシャクする。このなかのひとつの悩みを取り除くことは、他の悩みも一息に解決できる可能性を生む。

悩みのすべてを解決できないかもしれない。だが、苦しみがひとつ減ることで心にゆとりが生まれる。荷物をひとつ取り出すと、鞄のなかには新しい空気が入る空間ができる。

自分のことでいっぱいいっぱいになっている状況が解消されれば、家族や友人の変化に気が付ける。家族のひとりが心にゆとりを持つことで、子どもをいじめによる自殺から救えるかもしれない。未来の自殺者を助けられるかもしれない。

お金の悩みは人を自殺に追い立てる。景気がよくなれば自殺は減るし、景気が悪くなれば自殺は増える。経済が上向きのときには会社は人を雇い、失業者は減る。社員ひとりが抱える業務が減って、残業が少なくなる。利益が出て、給料が増える。自由な時間ができ、家族や友人と過ごせる。心にゆとりができ、笑顔が増える。そして自殺が減る。

平成28年度 自殺の原因・動機

「健康問題」11,014人(「うつ病」4,496人)、「経済・生活問題」5,600人、「家庭問題」3,522人、「勤務問題」3,337人
厚生労働省『平成29年版自殺対策白書』より

労働生産性の向上が日本の自殺を減らす

日本の労働生産性は低い。アメリカの70%くらいだ。アメリカと同じだけの仕事をするには、より多くの時間を働くことになる。残業ばかりだ。家族や友人と遊びに行く時間は見つけられない。 働いても、働いても生活は豊かにならない。気分は沈み、心は逃げ場を失う。そして人は自殺をする。

最低賃金の保証や、労働時間の管理などの決まりごとは、行政、企業が先頭に立って進めてもらいたい。僕らひとりひとりも生産性を上げる努力はできる。仕事が早くおわるように働きかたを見直そう。自分自身や家族、友人の命を守ることにつながっていくはずだ。

労働生産性
労働者1人が生み出す成果、あるいは労働者が1時間で生み出す成果を数字で表したもの。労働者がどれだけ効率よく働けているかがわかる。労働生産性の向上は、経済を成長させ、生活を豊かにする。

  • 日本の1時間あたりの労働生産性は46ドルで、OECD加盟35ヵ国中20位。先進国の中では最下位である。アメリカ(6位)は69.6ドル。
  • 日本の1人あたりの労働生産性は81,777ドルで、OECD加盟35ヵ国中21位。先進国の中ではもっとも低い。アメリカ(3位)は122,986ドル。

公益財団法人 日本生産性本部 『労働生産性の国際比較 2017 年版』より

女の自殺は失敗におわるが、男の自殺は本当に死んでしまう