仕事で成果をあげる人たちは、常に成長を続けている。彼らは出世の階段を登る。その人生が幸せかどうかはわからないが、少なくともお金の心配はない。彼らはたくさんのお金を稼ぐ。
彼らが成長を続けられるのは社会人になってからもひとりで勉強してきたおかげだ。たくさんのお金を稼ぐのも、独学の習慣によってその知識に磨きをかけてきたからだ。
世のなかは70歳まで働く時代だ。一方で、35歳で首を切られる時代でもある。ホワイトカラーの仕事はAIに奪われ始めている。人々は小さなパイを奪い合うことになる。今後はますます実力主義に変わっていくだろう。そういう時代にあって、僕たちは勝ち残れるだろうか。
この記事では、社会人がひとりで勉強しないと勝ち残れない理由と、独学の習慣を身につける方法を紹介する。
mokuji
社会人がひとりで勉強しないと勝ち残れない理由
世界で活躍するエリートたちは、あるいは仕事で成果を出して出世する同僚たちは、常に成長を続けている。40代になっても、50代になっても、60代になってもだ。
彼らが成長を続けられるのは、ひとりで勉強する力を鍛えているからだ。つまりは独学力である。
彼らはたくさんのお金を稼ぐが、それは社会人になってもひとりで勉強してきたおかげだ。彼らは稼ぎ続けるために、そしてエリートとして勝ち残るために、知識量と理論力とに絶えず磨きをかけているのだ。彼らにとって独学力は、稼ぐ力とほとんど同じ意味を持つのである。
人は歳をとると、経験に頼りがちになってくる。過去に学んだ知識や自らの経験の内側で目の前の仕事をどうにかこうにかしようとする。この傾向は歳をとるほどに強くなる。
人は経験に頼るようになると、成長はそこで止まってしまう。どうしてかというと、経験に頼るというのはその場で足踏みしているということだからだ。それではちっとも前に進まない。新しいことに挑戦しようとする意欲はどこかに消えてしまったのだ。
ひとつの考え方や行動パターンを繰り返しているだけでは、過去の世界に取り残されてしまう。居酒屋で若いころの武勇伝を語る悲しき老人になってしまう。過去の成功体験は、どれだけ巧みに飾りつけようがそれはやはり過去のものなのだ。
考え方や行動を常にアップデートしておかないと、世の中の変化にはついていけなくなる。40代や50代を迎えるころには、会社にとってのメインのプレイヤーからは落っこちてしまう。あるいは首を切られて捨てられるかもしれない。ゴミ箱を漁ってくれる物好きは、ほとんどいないだろう。
いまは人生100年といわれる時代である。社会人は30代、遅くとも40代にはひとりで勉強する力を身につけておかないと、ちょっと危ない。お金を稼ぐという点では、将来的に先細りになるリスクが極めて高いからだ。
そうならないためにも、社会人はひとりで勉強することを習慣づけることだ。いろんな分野に関心を向けて、情報や知識を絶えず増やし続けることだ。そしてそれらを使いこなすすべを身につけることだろう。
社会人がひとり勉強の習慣をつける12の方法
社会人の勉強はいったい何から手をつければいいのか。
独学は、まずは自分の得意分野や好きな事柄から始める。たとえば「国際経済」に興味がある人はそれを勉強する。そのあとは「米国の経済史」「ウォール街の仕組み」「銀行論」といった関連分野に手を広げていく、という方法をとる。
こうした興味のつながりは好奇心を誘う。好奇心は、社会人がひとりで勉強する習慣をつけるうえでの、とびっきりのスパイスになる。
情報はわかったつもりで済ませない
社会人の勉強はひとつの好奇心から始まる。好奇心は、世の中の出来事に関心を向ける習慣によって養うことができる。好奇心は育てるものであって、むくむくと顔を出してくれるのをぼんやりと待っていてはいけない。
たとえば新聞で読んだニュースは、知ったつもり、わかったつもりで済ませないようにする。その背景を調べたり、仕事に関連づけたりして、ニュースを掘り下げてみる。
ニュースは、それを見る人の立場によって情報の見え方や受け取り方は違う。自分には興味がないニュースでも、たとえばこの情報にはどういった人が関心を持つのだろうとか、その人はどういう感情を抱くのだろうとか、そういうことを想像してみる。
いくつかの角度からものごとを見るように習慣づけることで、ひとつのニュースから得られる気づきの機会は大きく増す。
勉強は恥ずかしがらない
独学のいいところは、試行錯誤をしながら自由に学べることだ。誰かに試験を課されたり成績をつけられたりすることはない。失敗や間違いを恐れなくていいし、好きなことを好きなように学んでいける。
社会人の勉強は、知識やスキルを身につけるためならなんだってする、という気持ちで取り組む。たとえば通勤の電車のなかで、あるいはオフィスの自分の机で、小学校の教科書を堂々と読むくらいの肝っ玉の強さを持つ。
理解は「2割でいい」という緩さをもつ
社会人の勉強には緩さが必要だ。テキストのすべてを完璧に理解しようとはしない。それでは情報量が多すぎて時間が足りなくなる。細かいことを覚えたところで、それらはほとんどなんの役にも立たない。
なにかを学ぶときには、核心に当たる20%を探し出そうとする。20%というのは、全体の数値のほとんどはその20%が生み出す、というパレードの法則からだ。たとえば、スイカは中心の甘いところだけすくって食べる。大人はそれでいいのだ。
理解するのは全体の2割だけでいい、そういう気軽さで取り組むことで勉強へのハードルはずいぶんと低くなる。
いろんな分野を並行して学ぶ
関心を持った分野の勉強はいくつか並行して進める。社会人にとって興味のアンテナを広げすぎて困るということはない。アンテナを張れば張るほど、仕事に役立つ情報が得やすくなる。僕たちは手持ちの札で戦うことしかできないのだから、その数は多いほど有利だ。
社会は常に変化をしているし、ビジネスのスピードはおそろしく速い。その流れに乗るには、そして振り落とされないためには、そのスピードについていけるくらいの頭の基礎体力を鍛えておかなくてはならない。頭の基礎体力とは、教養である。
もしくは、徹底して勉強する分野と、最低限の知識を得るために学ぶ分野とを分けておくのもひとつの方法だ。
知識は常にアップデートする
AIとかロボットとか、そういう進歩の著しい分野では、1年前の情報がすでに古典や歴史になっていることも珍しくない。
新しい分野の勉強にあらたに取り組むのはすばらしいことだが、自分がすでに知っている、わかっていると思っている分野についても、ちょくちょくと知識をアップデートしておくことも同じくらいに大事だ。
すぐに取り掛かる
関心をもった分野の勉強にはすぐに取り掛かる。先送りや、あとでまとめてやるという考え方では、結局なにもやらずに終わってしまう。30代ならまだしも、40代には先送りにするほどの時間の余裕なんてない。
その勉強は自分にとって必要か、そんなことは考えない。そういう判断は、試行錯誤によって身につくものだ。すぐに取り掛かる習慣を続けているうちに、自分のものになっている。まずはがむしゃらに食いつくことだ。
目標を設定する
勉強の動機ははっきりさせておく。なにかを学び始めるときは、目的はなにか、ゴールはどこか、をさきに決める。たとえば、1週間後の6月3日までに金融業界の課題を3つのキーワードで説明できるようになる、というような目標をたてる。
目的とゴールがあいまいなまま勉強を始めると、時間をむだに費やしやすくなる。結局はなにも得られなかったということにもなりかねない。そもそもゴールがないと、どこに向かっているのかがわからなくなる。
時間と場所を決める
勉強の時間は、1日のうちの、どの場所でどの時間を充てるかをあらかじめ決めておく。たとえば、寝る前の60分にキッチンテーブルでとか、仕事を始める前の30分に会社の近くのカフェでとか、そういうことだ。
勉強の時間は、毎日の生活習慣のなかに組むこむことで、ルーティン化される。ルーティンは脳の切り替えスイッチの役割を果たす。ルーティン化することで、スムーズに勉強にとりかかれるようになる。
勉強の習慣が身につくまでは、時間と場所に例外は作らない。やると決めたらやる、つまりはそういうことだ。
いろんな教材を使い分ける
知識を増やす教材にはいろんなものがある。本や雑誌を読む、インターネットやSNSを使う、あるいは人に教えてもらうこともできる。
教材選びは背伸びをしない。専門書なんかはむずかしいことをむずかしく書いている。初心者が読んでも意味わからないし、眠くなる。
まずは入門書を読んで自分のレベルをあげる。そうすればむずかしい本だって(すらすらとはいかないけれど)読めるようになる。
教養レベルの基本的な知識を身につけたいときは、大学受験の参考書や資格試験のテキストを使う。ときには中高の教科書も役に立つ。これらは簡潔にまとめられているので、最短で学ぶ方法として優れている。
- 本:入門書から専門書まで目的にあったものが選べる
- 資格試験のテキスト:専門分野のポイントを効率よく学べる
- 人:関心ある分野を広げて、新しい知識を得るきっかけを作ってくれる
- 大学受験の参考書:一般教養を見直すことで基礎力が鍛えられる
- インターネットやSNS:幅広い情報を手軽に集められる
問いかけで理解を深める
理解は問いかけることで深まる。問いかけは、頭の中を整理したり知識を定着させたりするのによい方法だ。インプットした知識には、「なぜ」「何を」「どこに」「どのように」といった問いかけを繰り返す。
仕事の課題を解決するときも、問いかけることで問題点ははっきりしはじめる。どんどんと掘っていけば、いずれは答えにぶつかるだろう。
要約力と伝達力を鍛える
社会人の勉強では、知識をつける以外に要約力と伝達力も鍛える。このふたつを鍛えるのは、勉強した内容を仕事で活かすためだ。要約力と伝達力は、ビジネスコミュニケーションの基本である。
要約力はものごとを簡潔にまとめる力で、「それは何を意味するのか」「では何をするのか」といった自問を繰り返すことで身につく。
伝達力はあいまいな表現を使わずに、自分の考えをわかりやすく伝える力だ。
要約力を鍛える方法
「それは何を意味する?」「では何をする?」という自問を繰り返して結論を導く。
- スマホの普及率が70%を超えた
- それは何を意味する?
- スマホを使った新しい市場の伸びが期待できる
- では何をする?
- EC事業の拡大を検討する
- では何をする?
- ブラットホーム企業との交渉をはじめる
伝達力を鍛える方法
「何を?」「どのように?」「なぜ?」を意識する。
- なにを?
- プラットホーム企業との交渉
- どのように?
- 今月中に担当チームを作る
- なぜ?
- EC事業の拡大を実現するため
理解度はチェックリストで見える化する
勉強した内容が身についたかどうかの確認は、チェックリストを使う。チェックリストにはたとえばこんな項目を設ける。
- 〇〇の仕組みを理解する
- 〇〇を100字で説明する
- 〇〇との違いは?
理解度や達成度は、目的を見える化することではっきりする。チェックリストには、〇〇をできるようになるために勉強する、という目的の〇〇の部分を書く。見える化はひとりで勉強を続けるモチベーションにもなる。
また、独学で学んだ知識は仕事で積極的に使う。そのままでは使えないときは応用を試みる。そういう実践の機会にもっとも恵まれているのは、働き盛りの30代や40代なのだ。
社会人がひとり勉強の習慣をつける12の方法 まとめ
この記事はまとめるとこうなる。
- 成長を続ける人は、仕事で成果をあげて出世してたくさんお金を稼ぐ
- その理由は、彼らが社会人になってからもひとりで勉強してきたからだ
- ほとんどの人は歳をとると経験に頼るようになって成長への意欲を失う
- 成長をあきらめた人は、時代の変化についていけなくなる
- 40代、あるいは50代でリストラ候補になる
- そうなりたくない人は30代から、あるいは40代までにはひとりで勉強する習慣を身につけておく
- いろんな分野に関心をもち、情報や知識を常にアップデートして、それらを使いこなす方法を学ぶ
- 独学の習慣を身につける方法はちょっと長いので省きます
この記事は侍留啓介氏の『新・独学術−外資系コンサルの世界で磨き抜いた合理的方法』を参考に書いた。