夏のテイクアウトやデリバリーで”食中毒にならない”弁当の選び方

夏のテイクアウトやデリバリーで"食中毒にならない"弁当の選び方

テイクアウトやデリバリーサービスは外食を手軽に楽しむ方法として身近になった。

新型コロナウイルスによる緊急事態宣言も流行の後押しをした。大手チェーン店から個人店まで、いろんな飲食店がこぞってテイクアウトやデリバリーサービスをはじめた。

こうした流れもあって、2020年の夏は例年以上に食中毒が増える可能性がある。

新型コロナを機にテイクアウトやデリバリーをはじめた飲食店のほとんどは、手探り状態で弁当を販売している。持ち帰り弁当についてのノウハウはないし、専用の設備もない。衛生面では大きな不安が残る。

この記事では、夏のテイクアウトやデリバリーサービスで食中毒にならないためのお店や弁当の選び方をまとめた。

夏のテイクアウトやデリバリーの弁当は食中毒に注意する

新型コロナウイルスによる自粛生活で、外食産業の売り上げは前年比で40%以上も下がった。売り上げを少しでも増やすために、多くの飲食店はテイクアウトやデリバリーをはじめた。

緊急事態宣言は1ヶ月半で解除されたが、客足はすぐには戻らない。新型コロナは完全に消え去ってしまったわけではないのだ。飲食店は今後もテイクアウトやデリバリーに力を入れるだろう。

そこで気になるのは食中毒の問題だ。店内で食事を提供するのと、持ち帰り用の食事を提供するのとは、似ているようでまったく違う。

テイクアウトやデリバリーを新型コロナ以前からやっていたお店はノウハウもあるし、それなりの設備も整っている。だけど、新型コロナをきっかけにテイクアウトやデリバリーをはじめた個人経営の居酒屋や定食屋は衛生面で不安が残る。

テイクアウトは注文を受けてから作りはじめるのがいちばん好ましい販売方法だ。しかし実際には、作り置きの弁当や惣菜を直射日光のあたる店先で陳列している店がある。なかには店内で提供するのと同じように、十分に加熱しないでレアな焼き加減のまま容器に詰めている店もある。

デリバリーでは、運んでいるあいだに食べ物が痛んだり、菌やウイルスが増えたりするかもしれない。

デリバリー各社の黒いバッグは保冷構造になっているが、バッグには直射日光が降り注いでいるし、汗にまみれて自転車をこぐ配達員の背中はかなりの熱を持つ。バッグのなかの料理は安全なのか不安になる。

夏場に食中毒の原因となるのは、カンピロバクターやO-157、サルモネラ菌といった細菌である。潜伏期間は数時間から数日ほどで、おもな症状には腹痛や下痢、発熱、悪寒、倦怠感がある。

食中毒は重症化することもある。甘くみてはいけない。たとえばO-157を発症した人のなかには、脳障害が残ったり亡くなったりした人もいる。

細菌は水分や湿度、栄養のあるところで繁殖する。とくに繁殖しやすいのは、30〜37℃くらいの気温である。

厚生労働省や内閣府食品安全委員会の資料によると、病原菌別の「発症するのに必要な菌数」と「1回分裂するのに必要な時間」の目安は次のようになる。

  • 腸管出血性大腸菌(O157など):2〜9個・18分
  • サルモネラ菌:100〜1000個・18分
  • カンピロバクター:500〜800個・48分
  • 腸炎ビブリオ:10000個・9分
  • ウェルシュ菌:100000個・10分

たとえば腸炎ビブリオは、たった1つの菌が2時間ほどで発症レベルの1万個まで増殖する。想像するだけで頭がくらくらしてくる。

テイクアウトやデリバリーの弁当は新型コロナウイルス感染のリスクもある

食中毒以外では新型コロナウイルスも心配だ。

新型コロナウイルスは、動物や人間といった生きた宿主の細胞内でのみ増殖できるタイプのウイルスで、食べ物から感染することはないというのが世界的な見方である。

内閣府食品安全委員会によると、食品が新型コロナの感染経路になったという報告はない。WHOもコロナウイルスは食品のなかでは増えないと発表している。

しかし、報告がないからといって100%新型コロナウイルスに感染しないとは言い切れない。調理をする人がきちんと手を洗ってマスクをしてアルコールを浴びていても、食べ物や容器に付着している可能性は十分にある。

ウイルスは容器にも付着するものだ。新型コロナの場合は、プラスチック容器で72時間、ステンレス容器で48時間生きているという研究報告がある。

新型コロナの感染リスクは「テイクアウト<デリバリーサービス」

新型コロナウイルスに関してはテイクアウトよりデリバリーのほうが危ない。調理をはじめてから人の口に入るまでに、その料理に関わった人が増えるほど、新型コロナウイルス感染のリスクは高くなる。ほかの人が運んでくるデリバリーは、自分で持ち帰るテイクアウトより一人分の遠回りだ。

新型コロナの感染リスクは「テイクアウトやデリバリー専門店<店内飲食できる店」

新型コロナの感染リスクが低いのは、テイクアウトやデリバリー専門店である。専門店は入り口までしか入れないし、滞在時間も短い。店内で飲食できる店は、いろんな人が出入りして長く滞在する分、感染リスクは高くなる。

キッチンスタッフが接客もするお店はさらに危険だ。フロアとキッチンを行き来して、いろんな人と話しては調理をする。キッチンスタッフを隔離している店の方が安全である。

弁当はレンジでチン!

弁当の容器を触ったあとは、手を洗ってアルコールで消毒する。弁当の中身はよく洗った食器に移し替える。

ウイルスは熱に弱い。ほとんどのウイルスは、70℃以上で1分以上熱を加えると死滅するといわれている。新型コロナウイルスも、70℃で一定時間火を通すと安心だ。

食中毒にならないための弁当とお店の選び方

ここからは、夏のテイクアウトやデリバリーサービスで食中毒にならないための弁当とお店の選び方をまとめた。

店の外で販売している弁当は買わない

夏のテイクアウトの弁当は、クーラーボックスや冷蔵庫で保管されているもの、あるいは注文後に作ってくれるものを選ぶ。

気温の高い屋外で販売している弁当は買ってはいけない。菌が繁殖しやすい温度は20〜50℃である。夏の屋外は菌にとって快適な環境なのだ。

また、店内で販売されていても山積みで陳列されている弁当は避ける。調理してから時間が経っている可能性がある。

おかずが一品ずつきちんと区分けされた弁当を選ぶ

おかずと生野菜が触れ合うように盛り付けてある弁当はやめる。

生野菜には菌がいる。菌は野菜用の洗剤で洗ってもゼロにはならない。

野菜だけなら栄養素も少ないので菌は増えないが、ドレッシングやソースを通り道として肉や魚といったメインのおかずに移ってしまうといっきに増えることがある。

メインのおかずの下に敷いてあるサニーレタスや、トッピングしてある大根おろしも危ない。冷たい野菜にくっついていた菌が温められて増える可能性がある。

また、卵にはサルモネラ菌がついていることがある。卵が別売りならいいが、親子丼に温泉卵をトッピングした状態で販売している場合は食中毒のリスクがある。

ふたの裏に水滴がついている弁当は買わない

弁当の中に水滴がついた状態で常温で売っている弁当は買ってはいけない。

食材が熱をもったままふたを閉めると内側に水滴がつく。透明のふたが曇っていたり、裏側に水滴がついていたりする弁当は、ごはんやおかずを容器につめるときに(あるいは詰める前に)十分に粗熱をとってない可能性がある。

菌は水分・温度・栄養があるところで増える。水滴のついている弁当の中はカビや菌にとって居心地の良い環境にある。

掃除が行き届いた店で買う

お店の衛生意識は、店内を見ればだいたいわかる。衛生意識の高い店はトイレや床、厨房をすみずみまできれいに掃除している。

また、調理担当の店員が手袋やマスク、帽子をしているかも確認する。彼らが接客もしている(注文をとったりお金を触ったり)お店は、衛生意識が低いとみていい。

近場の店を選ぶ

デリバリーは家から10分以内のお店を選ぶ。調理してから時間が経てばたつほど菌は増える。

冷蔵設備のある車で運ぶなら少しくらい遠くてもいいが、自転車やバイクでは屋外の高温な場所で一定時間さらされることになる。バッグに保冷機能がついているといっても、冷蔵庫と同じ温度で運ぶのは無理だ。

テイクアウトも10分以内で持ち帰れるところが理想だ。20分以上かかるお店はあきらめる。

客席で詰めている弁当は買わない

キッチンスペースが狭くて、カウンターやテーブルの上で料理を容器に詰めているお店は要注意だ。開店前ならまだしも、開店後に空いた客席で詰めるのは衛生面で問題がある。

店内は客席に限りがあるが、テイクアウトやデリバリーは店側の想定を超える量の注文が入ることがある。そういう緊急の対応は、衛生面がおろそかになりがちだ。

ナマモノが入っている弁当は買わない

刺身やフルーツといったナマモノは、デリバリーの弁当には向かない食材だ。とくに生の魚は、表面に腸炎ビブリオ菌がくっついている可能性がある。

腸炎ビブリオ菌は10℃で増えはじめて、15℃以上になると活発に動きだす。どうしても持ち帰りたいときはかならず保冷剤で冷やす。

混ぜごはんの入っている弁当は買わない

焼き飯やピラフ、炊き込みご飯といった多くの食材が混ざっている料理は菌が繁殖しやすい。食材が増えるほど栄養が増えて菌に好ましい環境になる。

また、混ぜご飯には温度管理のむずかしさもある。水分の多い野菜と脂質の多い肉類とでは冷めるまでの時間が異なる。料理の外側が冷めていても内側はまだ温かい場合がある。そのままふたを閉めると、ふたに水滴のついた弁当になる。

汁気の多い弁当は買わない

細菌は水分が多いと繁殖しやすい。おかずから汁気がでている弁当は避ける。

焼きそばやパスタ、うどんといった麺類も危険だ。

ポテトサラダとミニトマトが入っている弁当は買わない

ポテトサラダとミニトマトは弁当によく入っているが、夏場の弁当では避けるべき食品だ。

ポテトサラダは、芋そのものがそもそも傷みやすいうえに、具材を混ぜたあとに再加熱しない。

ミニトマトは緑のへたの部分を残したまま詰めると、へたに残った水滴が菌の住みかになる。

惣菜を販売している飲食店は怪しむ

飲食店で販売できるものは食品衛生法で細かく決められている。

飲食店は、店内で提供しているすべての料理を持ち帰りで販売できるわけではない。飲食店の営業許可証で販売できるのは、ごはんとおかずがセットになった弁当のみである。

たとえば惣菜を販売するには「そうざい製造業」の許可がいる。生肉やチャーシューを販売するには「食肉販売業」や「食肉製品製造業」といった許可証が必要になる。

そうざい製造業の許可を得るには、厨房とは別に個室を設けるといった決まりがある。飲食店によっては店の作り自体を変えなくてはいけない。

コロナ後にテイクアウトデビューしたお店は、きちんとルールを守っているのか疑わしいところがある。急に惣菜を販売しはじめたお店はちょっと怪しい。

食品表示を確かめる

テイクアウトの弁当には食品表示がついていないことがある。

その場で注文して作ってくれる弁当以外のテイクアウトは、食品表示の義務がある。前日までに予約をしてある弁当や、いろんな人が買っていく可能性のある作り置きの弁当には食品表示をつけなくてはいけない。

食品表示のルールは、食中毒やアレルギーから身を守るために定められているものだ。お客さんを大切に思う店はとうぜんルールを守るだろう。守っていないとしたら、そういう店なのだ。

食品表示がない場合は、消費期限やアレルギーなどをきちんと店員に確かめる。自分の身は自分で守る。

帰ったらすぐに食べる

テイクアウトは家に帰ったらすぐに食べる。

食べるまでに時間が空く場合は冷蔵庫に入れて、食べるときは除菌のためにかならずレンジで温める。

食中毒にならないためのお店と弁当の選び方 まとめ

この記事をざっくりとまとめた。

  • 新型コロナウイルスによる緊急事態宣言は飲食店を苦しめた
  • 多くの飲食店はテイクアウトやデリバリーサービスに活路を求めた
  • 新型コロナをきっかけにテイクアウトやデリバリーをはじめたほとんどのお店は、持ち帰り弁当に対するノウハウや専用の設備はない
  • そういう店は衛生面で不安が残る
  • 2020年の夏は食中毒になる人が大量に発生しそうだ
  • 夏場の食中毒の原因となるのは細菌である
  • 細菌がとくに繁殖しやすいのは30〜37℃の気温帯である
  • また、テイクアウトやデリバリサービスは新型コロナウイルスを運んでくる場合もある
  • 感染経路としては弁当の容器がある
  • ウイルスは熱に弱いので、食べる前にはかならずレンジでチンする
  • 食中毒にならないために買ってはいけない弁当とお店
    1. 店の外に山積みで売っている弁当は買わない
    2. おかずと野菜がくっついている弁当は買わない
    3. ふたの裏に水滴がついている弁当は買わない
    4. 店内の清掃が不十分な店では買わない
    5. 家から遠くの店では買わない
    6. 客席で弁当を詰めている店では買わない
    7. ナマモノが入っている弁当は買わない
    8. 混ぜご飯が入っている弁当は買わない
    9. ポテトサラダとヘタ付きミニトマトが入っている弁当は買わない
    10. 急に惣菜を売りはじめた店では買わない
    11. 食品表示がついてない作り置きの弁当は買わない
    12. 帰ってすぐに食べられないときは買わない
夏のテイクアウトやデリバリーで"食中毒にならない"弁当の選び方