SNS依存がヤバイ|やめたいけどやめられない、スマホに支配される人々

SNS依存がヤバイ|やめたいけどやめられない、スマホに支配される人々

SNS依存が話題になっている。SNS依存になると、スマホが手放せなくなる。やめたいけどやめられない、まさにスマホに支配されている状態だ。

「スマホを持たずに出かけると不安になる」「スマホを取りに家に帰りたくなる」。心当たりがあるなら、すでにスマホに依存していると言っていい。

SNS依存で生活に起こる問題、やめたいけどやめられない理由、スマホから離れる方法をまとめた。スマホの支配から抜け出すきっかけにしてほしい。

SNSに依存する人が増えている

インターネットに依存する人が増えている。厚生労働省研究班が2013年に行った調査では、ネット依存の傾向がある20歳以上の男女が全国で421万人に上った。2008年の前回調査から5年間で1.5倍に増えているという。その後、同様の調査は行われていないが、現在はもっと多いだろう。

「ネット依存」420万人、5年前の1.5倍に 13年調査|日本経済新聞

10代のネット依存も深刻だ。2013年8月、新聞各社が「中高生51万人が『ネット病的使用』」と報じた。51万人は中高生全体の8.1%にあたる。インパクトのある数字だ。

同調査によると、1日(平日)のネット平均利用時間が「5時間以上」の男子中学生が8.9%、女子中学生が9.2%。高校生では男子13.8%、女子15.2%に増えた。休日には中学生が13〜14%、高校生が20%以上に跳ね上がる。

ネット依存の中高生、国内に51万人 厚労省推計|日本経済新聞

スマホの利用時間も増えている。総務省情報通信政策研究所の調査では、2012年から2016年の4年間で1日あたりの利用時間が1.6倍に増えたという。利用時間がもっとも多い20代では、73分から125分に増えている。4年間でおよそ1.7倍だ。

生活の中心になりつつあるスマホ(4年間の質的変化)|総務省

背景にはスマホの普及がある。総務省の『平成28年通信利用動向調査』によると、2016年のスマホの個人所有率は56.8%。2012年から2016年の4年間で1.5倍に増えている。いまさらガラゲー時代に戻るとは考えにくいため、今後さらにネット依存者は増えていくだろう。

平成28年通信利用動向調査の結果|総務省

スマホ利用の中心はSNSだ。代表的な6つのSNSサービス(LINE、Facebook、Twitter、mixi、Mobage、GREE)のいずれかを利用している人の割合は、2012年の41.7%から2016年には71.6%に増えている。4年間で1.7倍だ。

「SNSって若者向けのサービスでしょ?」と考えているなら、もはや時代遅れだ。もちろん、利用者は若者が多い。2016年の調査では、利用者がもっとも多いのは20代の97.7%だ。そのあと、30代の91.2%、10代の81.4%がつづく。

注目すべきは40代と50代だ。SNSを使う人がおどろくべきスピードで増えているのだ。2012年にはそれぞれ37.1%、20.6%だった利用率が、2016年には78.3%、60.8%まで増えている。

SNSがスマホ利用の中心に|総務省

スマホもSNSも、もはや若者だけのアイテムやサービスではない。誰もがネット依存、SNS依存になる可能性があるのだ。

SNS依存とはなにか

そもそも、依存とはどういった状態をいうのか。判定基準は大きく3つある。

  • 自分の意思でやめられない行動かどうか
  • その行動がよくない結果を招くかどうか
  • よくない結果が起こるとわかっていても、その行動が続くかどうか

では、SNS依存についてみていこう。

SNS依存とは、フェイスブックやツイッター、LINEなどのSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)に書き込まれる内容が気になって仕方がなく、仕事や日常生活に支障をきたすほど、なんどもSNSをチェックしてしまう状態をいう。「つながり依存」「ソーシャル依存」「きずな依存」とも呼ばれる。

SNS自体はすばらしいサービスだ。人とのつながりを感じると孤独が癒せるし、「いいね!」やコメントをもらうと、承認欲求が満たされる。

だが、それが悪く働くときがある。他人と自分を比べて落ち込んだり、使い続けないと仲間外れにされると感じたりする。相手がいるからハマりやすく、相手がいるからやめられないのだ。

とくに、日本人はSNS依存になりやすいといわれる。日本には、自己主張をするより、まわりと合わせるのをよしとする文化がある。相手への気づかい、心くばりを大切にしてきた。空気を読みすぎるため、自分ひとりだけやめるのがむずかしいのだ。

SNSに依存しやすい人の特徴

SNSに依存しやすいのは、やりたいことがない人、やらねばならないことがない人だと言われる。自分の居場所を求めるが故に、SNSにどっぷりとハマってしまう。たとえばこんな人たちだ。

  • SNS依存という言葉を知らなかった
  • やることがあっても楽しいことを優先してしまう
  • 目立ちたい、注目されたい願望がある
  • 寂しがりやで人とつながっていたい気持ちが強い
  • ストレスがたまっている
  • 同調圧力に弱い
  • 暇な時間が多い(することが思いつかない)
  • 現実で嫌なことがあり、逃げたい
  • めんどうな人付き合いが嫌い
  • こだわる性質や発達障害を持っている
  • やさしく、まじめな性格
  • 今の自分があまり好きではない

SNS依存で心と体に起こる問題

SNS依存になると、僕らの生活にどのような問題が起きるのだろう?

総務省情報通信政策研究所が2016年7月に発表した『高校生のスマートフォン・アプリ利用とネット依存傾向に関する調査報告書』が答えてくれる。

「高校生のスマートフォン・アプリ利用とネット依存傾向に関する調査報告書」の公表|総務省

同調査によると、高校生の34.1%が「勉強時間が減った」、40.7%が「睡眠時間が減った」と答えている。

テレビを見る時間、本を読む時間、マンガや雑誌を読む時間、趣味に使う時間、家事(炊事・掃除・洗濯など)の時間、外へ遊びに出かける時間、家族と話す時間、友人と会う時間も減っているという。

また、「ひきこもり気味になっている」「健康状態が悪化している」「遅刻・欠席しがちになっている」「ネットに費やす金額がだんだん増えている」の各質問には、10%前後の高校生が「いつもある」「よくある」「ときどきある」と答えた。

それだけではない。「ひまさえあればスマートフォンでネットをしている」が42.6%、「自分はネット依存だと思う」が25.0%もいる。本人たちも使いすぎを自覚しているのだ。

この調査結果が恐ろしいのは、同調査がネット依存患者ではなく、一般の高校生が対象というところだ。そして、スマホが普及した今、これらは高校生だけに起こる問題ではない。

SNSに依存する怖さをみていこう。

健康を損なう

SNS依存は健康を損なう。

身体面では、視力の低下、肩こり、ストレートネック、指の痛み(腱鞘炎)、慢性疲労、肥満、激やせ、エコノミークラス症候群などが見られる。また、不規則な生活と運動不足で、骨がもろくなり、体力が落ちる。

精神面では、イライラ、うつ、落ち込み、幻聴などが生じる。

生活が乱れる

SNS依存は生活が乱れる。

生活面では、ひきこもり、昼夜逆転、睡眠不足、不登校、家庭内のコミュニケーション不足、社会や実生活への関心の低下、課金による借金、家庭内暴力、育児放棄、浮気、離婚、生活保護などが起こる。

学生なら、遅刻や授業中の居眠りが増え、学力低下や友達とのトラブルが起こり、不登校や退学につながる。社会人なら、遅刻や欠勤、仕事中の居眠り、作業効率の低下、コミュニケーション不足が続き、さいごには退職に行き着く。

SNSありきで行動するようになる

SNS依存になると、ネタ消費に走るようになる。ネタ消費とは、「他人に受けそう」「共感が得られそう」といった理由、あるいは「自分をアピールできる」といった目的で、話題になりそうなモノゴトにお金や時間、エネルギーを使う行動を指す。

たとえば、食レポがある。おもしろそうな食べ物が発売されると、多くの人が「〇〇食べてみた」と投稿する。ガリガリ君コンポタージュ味やスライム肉まん、ザクどうふなどが記憶にあたらしい。

他にも、SNSに投稿するために話題の場所を訪れたり、一度だけ習い事を体験したりする人もいる。
また、どこに行っても写真を撮るようになる。SNSでは、文章だけの投稿より写真付きのほうが説得力があり、良い反応がもらえるからだ。

写真を撮るのは、ひとりのときだけではない。友人との外食でも、料理が出てきたら撮影タイムがはじまる。照明の角度を変えたり、皿の向きを整えたりするため、撮影には時間がかかる。だけど、料理が冷めようが、友人が待っていようがおかまいなしだ。

対人コミュニケーションが取れなくなる

コミュニケーションの在り方が変わってきている。友だち同士が並んでスマホを見ている光景をよく目にするようになった。友だちといっしょにいるときでも、ネットの友だちから連絡がきたら、すぐに返事をする。となりにいる友だちも気にする様子はない。彼らにとってはこれが当たり前なのだ。目の前の友だちを優先するといった価値観がなくなりつつある。

リアルとネットが逆転している場合もある。SNSのやりとりだけの、会ったこともない親友や恋人がいる若者もいるという。

彼らが素直になれるのはネットの中だけだ。リアルの友達には相談できない悩みも、ネットで知り合った親友には気軽に相談できる。しがらみも、利害関係も、他の友だちに告げ口される心配もないからだ。

自分を見失う

SNS上での友人のキャラクターに違和感を覚える人は多い。株式会社ジャストシステムの調査では、34.4%の人が知人・友人のフェイスブック上でのふるまいに違和感を抱いたという。「無理に作っているような感じ」「ネットと現実でのふるまいがまったく違う」「自分を良く見せようとしている」「キャラを作っている」などと答えた。

利用者の「約7割」がストレスを経験「Facebookの利用状況に関する調査結果」|MMD研究所

自分を良く見せたい気持ちはわかるが、やりすぎは危険だ。理想の自分を演じ続けているうちに、SNS上の自分を本当の自分だと思い込むようになったり、本来の自分を受け入れられなくなったりするケースがある。自分を見失うのだ。

また、SNSは自己愛性パーソナリティー障害を悪化させる可能性があるといわれている。自己愛性パーソナリティー障害とは、自分を特別な存在だと思い込む、パーソナリティー障害のひとつだ。次の特徴がある。

  • 他人より優れていると信じている
  • 自分の実績や才能をおおげさにアピールする
  • 理想の愛や成功を夢見る
  • 賞賛を強く求める
  • ごう慢な態度をとり、他人を自分のために利用する
  • 他人への共感力が乏しい
  • 傷つきやすく、拒否されたと感じる

自己愛性パーソナリティ障害|ウィキペディア

Narcissistic personality disorder|MAYO CLINIC

“インスタ映えバカ”のリア充自慢は病気だ 日本も米国も「自己愛過剰社会」に|PRESIDENT Online

意見が偏る

人には、見たいものを見たいように見て、見たくないものからは目を逸らす傾向がある。ネットでは自分が賛成する意見や自分と似た意見ばかりにアクセスしがちだし、SNSでは意見が似た者同士が集まりやすい。

僕にはこんな経験がある。不倫をした(と言われている)ある女性議員が当選した。自分が見たニュースのコメントでは、彼女は大バッシングを受けていたし、彼女を応援する人なんてリアルでも、SNSでも出会った試しがない。だけど、彼女は当選した。どうしてだ? そう思った。

世間にはさまざまな考えを持った人がいる。自分のつながりはあくまで世間の一部であり、全部ではないのだ。SNSに依存し、新聞やテレビを見なくなると、情報源が友人のみになる。似た者同士が集まったグループの中にいると、同じような意見をよく目にするため、世の中のすべての人が自分と同じ意見であると錯覚する。自分こそが多数派であり、正義の人であると誤解するのだ。

SNSがやめられない理由

SNS依存になると、スマホが手放せなくなる。テレビを見ながら、お風呂に入りながら、ベットにもぐり込んでからも、ご飯を食べているときも、友人とおしゃべりしているときも、スマホを握りしめたままだ。自転車・自動車を運転しながらのスマホや、歩きスマホが社会問題となっている。

なぜ、SNSなのか? SNSを使ってもお金がもらえるわけではないし、衣食住にも困らない。それに、特別におもしろいというわけでもない。「いいね!」ボタンを連打しても、何も起こらないのだ。テトリスのほうがゲーム性も、中毒性も優っているように感じる。

だけど、多くの人がSNSにハマる。SNSには人を虜にする「何か」があるようだ。見ていこう。

現実逃避ができる

現実は残酷だ。実生活では外見やお金、コミュニケーション力、勉強やスポーツの才能がものを言う。理想とは違う現実を思い知り、努力してもどうにもならない事実に苦しむ機会も多い。

だが、オンライン上ではすべてがコントロールできる。外見や学歴どころか年齢や性別まで望みのままだ。理想の自分を演じれば、扱われたいように扱われることができる。

SNSは安全な場所から傷つかずに利用できる。実生活では言えないような愚痴や告白もオンラインなら言える。思ったような反応が返ってこなければ、関係自体を切ってしまえばいい。友人関係のリセットがSNSならボタンひとつでできる。ブロック、ブロック、ブロックだ。

承認欲求が満たされる

承認欲求は人間が持つ欲求のひとつだ。他人から認められたいという想いと、自己肯定できる自分でありたいという想いを誰もが抱えている。

だが現実はきびしい。がんばったからといって必ずしも評価されるとは限らない。水中でいくらもがこうが、評価されるのは水面から顔を出した者だけだ。多くの人が、両親や友人、先生、同僚、上司に認められたいと望み、誰にも認めてもらえない現実にストレスを感じている。承認に飢えているのだ。

SNSはそんな孤独を埋めてくれる。人とのつながりを感じられる。日常生活では満たしきれない承認を求め、投稿を繰り返してしまうのだ。

ところが、次第に物足りなくなっていく。不特定多数に認められたいと思うようになる。「もっと構ってほしい」「もっと褒めてほしい」「もっと認めてほしい」。そんな気持ちが強くなり、コントロールが効かなくなる。SNSに依存してしまうのだ。

同調圧力がきつい

日本人は同調圧力に弱い。同調圧力とは、自分だけが違う意見を言ってはいけないという空気を感じ、まわりにあわせた行動をとってしまう状態をいう。みんながしていることを自分がしていないと仲間外れになると考えるのだ。まわりに合わせない人をKY(空気が読めない)と呼ぶのも同調圧力のひとつだ。

同調圧力はSNS疲れを生む。SNS疲れが起きる原因はいくつかある。

  • 自分の生活が他人にさらされるため、他人の目を意識して生活しなければならない。
  • 他人の生活が見えるため、自分と比べてしまう。
  • 他人の自分に対する関心が「いいね!」やコメントの数に表れるため、気になる。
  • 「いいね!」やコメントを返すのが義務となり、楽しくなくなる。

だけど、多くの人はSNSがやめられない。グループの中で自分のポジションを守るには、SNSに疲れていても続けるしかないのだ。やめたいけどやめられない。まさに同調圧力といえる。

友達の数が見えるようになった

友だちが多いと人気者、友だちが少ないと暗いヤツと思われるのはいつの時代も変わらない。変わったのは、友だちの数が見えるようになった、その一点だ。

SNSでは、フォロワーや友だちの数が多いアカウントほど価値があるとされる。リアルの人間関係には濃淡があるが、SNSには「0」か「1」しかない。付き合いの濃さではなく、友だちの数こそがSNSの世界では大切なのだ。多ければ多いほど偉いし、自慢できる。少しでもフォロワーを増やそうと躍起になる。

また、投稿に対してのコメントやいいね!、リツイートの数も多いほうがいい。反応が多いほど、注目され、人気がある証だ。おもしろいネタを投稿したい気持ちを駆り立てる。

SNS依存度を測ってみる

SNS依存度を測る10の質問を用意した。5つ以上当てはまるようなら、SNS依存の疑いがある。

  1. 食事中にスマホをチェックしていることが多い
  2. スマホの電波が届かない場所には行きたくない
  3. 何かを見つけたり思いついたりすると、SNSに投稿したくなる
  4. 仕事中でもメッセージの通知が来るとつい見てしまう
  5. 家族や友人が目の前にいてもスマホをいじることに抵抗がない
  6. SNSに投稿するネタを仕入れるために行動することがある
  7. メッセージのやりとりで既読かどうかとても気になる
  8. 自分が投稿した内容への反応が気になり、SNSを何度もチェックしてしまう
  9. 友人の投稿にすぐに反応しないと話題に乗り遅れたと感じる
  10. 寝る直前まで、起きた直後にSNSをチェックしてしまう

SNSをやめるためには

SNSをまったく使わずに生きるのはむずかしい。高校・大学では、部活やゼミの連絡をLINEで行うケースが増えている。就職活動では、情報を集めるためにSNSが必須だ。企業も積極的にSNS を活用しているため、SNSを使わないのは不利に働く。就職したあとも、使わざるをえないだろう。

だが、スマホを触る回数や時間は減らせるはずだ。SNSをやめるための7つのヒントをぜひ試してほしい。

  1. SNSの通知機能をオフにする
  2. 休憩中やトイレに行くときはスマホを持っていかない
  3. 人と話しているときや食事中はスマホを見ない
  4. 眠るときは枕元にスマホを置かない
  5. 移動中は本や雑誌を読むようにする
  6. 積極的に街に出たり、誰かと会ったりする
  7. 天井や空を見るなど、視線を上に向ける

まとめ|ディスプレイ越しより自分の目で見たほうが、ずっと世界はきれいだ

SNSで、僕らの世界が広がるのは事実だ。連絡が途絶えていた友人と再開できたり、趣味・関心が同じ人たちとつながったりできる。知らなかった情報が手に入ったり、ビジネスチャンスが広がったりするのもSNSのメリットだ。

しかし、世界が広がるのは、SNSを道具として使いこなせている場合だ。SNSに振り回されているなら、それはただの依存だ。スマホが気になり、まわりが見えなくなっているなら、あなたの世界はディスプレイサイズまで狭くなっているのだ。

「今日は星がきれいだよ」。コメントとともに投稿された写真を見て、「いいね!」をクリックする。それでおしまいなら、もったいないと思う。窓を開け、夜空を見上げれば、ディスプレイ越しに見るより、ずっときれいな星空が広がっているのだ。

SNSで世界は広がったのか、あるいは狭まったのか、あなたはどちらだろう?

参考文献;
書籍『ソーシャルメディア中毒 つながりに溺れる人たち』高橋暁子
書籍『脱ネット・スマホ中毒 ver.2.0』遠藤美季

SNS依存がヤバイ|やめたいけどやめられない、スマホに支配される人々