長い通勤時間を無駄に過ごさない5つの工夫

長い通勤時間を無駄に過ごさない5つの工夫

長い通勤時間はそれだけで大きなストレスとなる。短い人に比べて、通勤時間が長い人は仕事中に疲れを感じていて非生産的だ。そして仕事に対する満足度も低い。長い通勤時間は無駄どころか、僕らの心と体を壊してしまうである。

通勤に少しの工夫を加えてあげれば、通勤のストレスは改善する。気持ちが豊かになって、仕事での生産性も上がる。

日本の雇用者の平均通勤時間
  • 全国では男性70分、女性50分。
  • もっとも通勤時間の長いのは関東大都市圏で男性92分、女性64分。
  • 次に多い近畿大都市圏では男性78分、女性54分。

総務省統計局の「平成24年社会生活基本調査結果」より

オンとオフのスイッチを切りかえる時間にする

毎日を過ごす中で、僕らはいくつかの役割を演じ分けている。自宅では優しいパパやママとして子どもたちの面倒をみる。会社では厳しいリーダー、マネージャーとして部下を指導する。取引先では柔らかい笑顔で担当者の懐にもぐり込む。そしてまた自宅に帰って、プライベートの自分に戻る。

家庭では家族の悩みがある。子どもたちは起こしてもなかなか起きないし、妻は郊外の一戸建てに引っ越したいと言っている。休日はたまには一人でゆっくり過ごしたいと考えたりもする。

会社では仕事の悩みがある。部下は思うように働いてくれないし、上司は週刊誌ばかり読んでいる。ここ数年、ボーナスが減っている。もっと評価してくれる会社へ転職しようと考えたりもする。

僕らは会社では家庭での悩みを心の中に閉じ込めている。オンとオフのスイッチを切りかえるのである。この切りかえがうまくできないと、家庭での悩みを会社に持ち込んでしまう。妻とケンカをして、そのいらだちから仕事が手につかない。部下は話しかけにくそうにチラチラと顔色をうかがっている。

反対に仕事の悩みを家庭に持ち帰ることもある。仕事で大きなミスをして、その心配からご飯が喉を通らない。妻も子どもたちも不安そうな顔をしている。

人には多くの悩みを抱えている。ただし、できる限りその悩みを家庭や仕事に持ち込みたくない。他の社員や家族に迷惑や心配をかけないようにしたい。オンとオフを両立させるには、きちんとスイッチを切りかえる。ドアを閉めてから次の部屋に移ったほうがいいのである。

長い通勤時間は、このオンとオフの切りかえにもってこいである。気持ちをスムーズに切りかえるには、自宅から会社までのあいだにいくつかの儀式を毎日繰り返すといい。

たとえば、駅の売店でいつもの新聞を買う、ホームではいつもの場所に立つ、車内では流れていくいつもの景色を眺める、会社近くでいつものカフェオレを注文するなどである。

自宅から会社までのあいだに、オンとオフを切りかえるためのチェックポイントをいくつか設定しておく。その場所を通過するたびに仕事モードの自分へと気持ちが変わっていける。

毎日同じ行動を繰り返すのは、まるでロボットみたいだと感じるかもしれない。仕事で新しい発想が出てこなくなると不安になるかもしれない。

だが、世界のヒーローたちも変身するときにはいつも同じ行動をしている。クラーク・ケントはスーパーマンに着替えるとき、会社近くの電話ボックスに入る。仮面ライダーだって毎回おなじみの変身ポーズと掛け声である。

オンとオフが切りかわって仕事モードに入った彼らは、信じられないほどのパフォーマンスを発揮する。自由に空を飛べるし、力も強くなる。

きっと僕らだって変身できるはずだ。ヒーローがモンスターを倒して世界の平和を守っているあいだ、僕らはメールを処理して自分の雇用を守る。やっていることは同じようなものだ。

通勤の途中でありふれた習慣を続けている人は、決まりごとのない人に比べて仕事に満足感を覚え、ストレスを感じにくいという研究結果がある。毎日の通勤の習慣を確立させると、仕事前の不安を和らぎ、楽しいと感じることが増え、失敗したときにも、より早く回復できるのである。

仕事の計画を立てる

毎日の通勤時間が長い人ほど、仕事への満足感が低くて会社を辞める確率が高い。しかし、これは統計上の話で、全ての人が当てはまるわけではない。長時間通勤者の中にも、自分の仕事に大きな満足感を感じている人もいる。

ではどういう人が長い通勤時間を乗り越えて、仕事を楽しむことができるのだろうか? 自制心の高い人である。彼らは目標を達成するための努力を欠かさない。仕事中のちょっとした誘惑に打ち勝つ力がある。SNSを気にしないし、ゲームもしないし、ネットサーフィンもしない。事務の女の子にちょっかいを出すこともない。

彼らがよそ見せず仕事に向き合える理由は、長い通勤時間の一部を仕事の計画を立てることに使っているからである。オフィスについたらまず何をするのか、今日1日で何を成し遂げるのかという仕事の見通しを立てているのだ。

その日1日のゴールが見えていること、ゴールまでの道筋がはっきりしていることで高いモチベーションを保てるのである。次に何をするかが決まっているので、誘惑が入り込む隙間がないのだ。

長い通勤時間は仕事の計画を立てるのは最高の時間になる。スケジュール帳、またはスマートフォンさえあればいいのだから。1日のスタートがうまく切れると、それだけで気持ちがいいものだ。より活動的になるし、生産性も上がるのである。

自分がコントロールできることに集中する

通勤時間が長いというだけで大きなストレスである。そして通勤中にはさらなるストレスが通勤者に襲いかかる。

いつもより道路が渋滞している、時間通りにバスがやってこない、満員電車でとなりのおじさんが体重をかけてくる。カップルが絡み合っているときもあるし、誰かがかばんの中にマクドナルドのポテトを忍ばせているときもある。

思いつくシュチュエーションのほとんどは僕らの力ではコントロールできないことばかりだ。僕らは魔法使いではない。道路を走っている車を消し去ることはできないし、バスを空中に浮かせて運んでくることもできない。電車の中で体を預けてくるおじさんを美女(あるいは美少年)に変えることも不可能である。

たしかに少し勇気を出すと状況を改善できることもある。カップルのあいだに割り入ったり、うっかりかばんの中のポテトを潰してしまったりすることはできる。きっとまわりの通勤者たちのヒーローにはなれるだろう。

だけどそんなことをして何になる? 長い通勤時間がストレスである事実は変わらない。むしろ少しの満足感と引きかえにさらなるストレスが訪れる。見つめ合うカップルのあいだになんて30秒も立っていられないし、潰れたポテトはさらにその臭いを車内に充満されるだろう。

通勤時間の長さを利用して、もっと「楽しくなれる何か」の時間にしたほうがいい。車も電車もバスも窮屈だから自宅ほどの自由はない。ダンスをしたり、料理をしたり、寝転がったりすることはできない。

だが、体を動かす以外にも楽しめることはたくさんある。音楽を聴く、本を読む、映画をみる、ゲームをするなどはスマートフォンとヘッドホンがあればできる。語学を勉強したり、ニュースを確認したりも可能だ。

通勤を会社へ移動している時間としてではなく、好きなことをして過ごせる自由な時間だと考えることができれば、長い通勤時間を前向きに受け入れられる。ピジネスパーソンには自由にできる時間が少ない。そう考えると、きっと長い通勤時間を楽しもうと思える。

厳しい顔をしながら電車に揺られているより、ゲームでハイスコアを更新してハイな気分になっている通勤者のほうが素敵である。なにより幸せそうである。そういう人の方が仕事でもハイパフォーマンスを発揮できるのだ。

ひとりぼっちの孤独を和らげる

長い通勤時間は孤独だろうか? まわりを見まわせばダークスーツを身にまとったクローンたちがいる。通勤のストレスを共有している彼らには自分と近い存在だと感じ、親近感を覚える。ビールでも飲みながら「通勤の不満ランキングトップ10」について議論を交わせばきっと朝まで話し続けることができると考える。よき友人になれそうだ。

しかし実際は僕らはひとりぼっちでさみしい存在である。まわりの通勤者たちは同じ電車に乗っているというだけで、友人ではない。お互いに励まし合うことも、愚痴を分かち合うこともない。

結局は電車が揺れて、体が少しぶつかるだけで睨まれるような関係なのである。そんな存在を友人とも仲間とも呼ばない。長い通勤時間は孤独との戦いなのである。

通勤時間が長くなるほど、通勤者の孤独と不幸を感じる度合いは増えていく。ハーバード大学の政治学者の研究では、通勤時間が10分長くなるにつれて、社会とのつながりが10%ずつ少なくなるという調査結果があるようだ。

孤独を感じなくするのはどうすればいいのか? それは会話をすることである。

通勤者の多くは、長い通勤時間のあいだ、誰かと話をしているよりも一人で黙って座っているほうが快適に過ごせると考えている。

しかし実際には、会話をしているほうが通勤はより前向きな体験へと変わるのである。学生時代を振り返るとその理由がわかる。友人あるいは彼氏彼女と並んで歩いた通学路には、楽しい思い出が詰まっているはずだ。彼らが風邪で休んだ日、ひとりぼっちの通学路のさみしさも覚えているだろう。これが真実なのである。

誰かといっしょに通勤してはいけないという法律はない。通勤時間帯の電車やバスなどでは会話を控えた方がいいという社会の暗黙のルールなんて無視してやればいい。大声で歌を歌っているだけではないのだから。

まわりの通勤者たちは迷惑そうな視線で訴えかけてくるかもしれない。でもそれは嫉妬なのだ。長い通勤時間を楽しそうに過ごしているあなたを、心の中ではうらやましいと感じているはずである。

ただ、友人と通勤するのは現実的ではない。友人とは住んでいる場所も働いている会社も違うだろう。同じ会社には気の合う同僚がいないかもしれない。

そんなときにはスマートフォンが役立つ。メールやSNSで苦しさや寂しさといった気持ちを分かち合うだけでも、長い通勤時間のストレスを減らすことができる。

車通勤であれば、スマートフォンをスピーカーモードに切りかえて、家族や恋人、友人と電話をするのはどうだろうか?子どもたちの笑い声が、パパがんばってねの一声が、長い通勤時間のストレスをこの世から消し去るだろう。この道がどこまでも続けばいいのにと感じるはずだ。普段は気にもとめない通勤路が、朝の日差しを浴びてきらきらと輝いていることに気付くことだろう。

思い切って通勤時間を短くする

長い通勤時間を無駄に過ごさないためにできることをすべておこなったとしても、大きなストレスを感じたり、不幸な気分になったり、仕事の生産性に影響がでていたりするのなら、真剣に通勤時間を短くする方法を考え始める時期である。あなたの心と体は電子レンジの中のゆで卵と同じ状況だ。いつ爆発しても不思議ではない。

まず、どこに住むのか、どこで働くのかを決めるとき、多くの人は長い通勤時間が心と体に与えるダメージを軽く考え過ぎている。都会の給料の高い会社に入りたいと望み、治安のよい地域に住みたいと考える。希望する会社と住みたい自宅の往復には長い通勤時間が必要だとわかっているが、なんとかなるだろうと楽観視する。そして後で後悔することになるのである。

アメリカのある実験を紹介する。さまざまな業種でフルタイムで働く従業員500人以上が、次の2つの条件のどちらを選ぶかという実験である。住む地域、職場での昇進の機会、仕事の楽しさなど、年収と通勤時間以外の条件は同じだ。

  1. 年収67000ドル、通勤時間50分
  2. 年収64000ドル、通勤時間20分

この実験の結果、対象の84%が1を選んだという。通勤時間が60分長くなるより、3000ドルを取るのである。これは1日あたり12ドルであり、時給の半分以下の金額である。少しのお金につられて時間を犠牲にしたのだ。

実際に経験してみないと、長い通勤時間が心理的、感情的、身体的な大きなダメージを与えるという事実をしっかりと想像できていないのである。転職を考えている、新しい家やマンションを探しているのなら、このことを忘れないでほしい。

長い通勤時間を無駄に過ごさない工夫を5つ紹介した。最後のひとつ以外は、気持ち次第で明日からでも始めることができる。

長い通勤時間を無駄に過ごさない5つの工夫