「姓名」なのか「名姓」なのか。日本人の名前をローマ字で書くときに順番に悩み、ふと手が止まることがある。日本人のあるあるだろう。
「日本語に関する世論調査」(1999年)では「姓名」派が34.9%、「名姓」派が30.6%と拮抗している。
令和を迎えて、日本人名のローマ字表記をめぐる問題がついに決着をみた。
政府は、日本人の名前のローマ字表記を「姓名」の順番にする方針を決めた。2020年の1月1日から実施するという。
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日本人の名前のローマ字表記は「姓名」の順番で 政府が方針【2019年9月6日】
政府は6日、国の公式文書に日本人の名前をローマ字で表記するときは、欧米式の「名姓」の順ではなく「姓名」の順番で統一する方針を決めた。
河野太郎外相や柴山昌彦文部科学相が「姓名」順にするのがふさわしいと提唱していた。
「姓名」の順番で統一する意図を、柴山昌彦文部科学相は6日の定例記者会見で、
「グローバル化が進み、それぞれの国の文化や言語の多様性を互いに尊重することがますます重要になっている」
として、
「日本人の姓名のローマ字表記は、日本の伝統に則した形式にするのがよい」
と説明した。
▼参考記事
中国や韓国はローマ字表記でも本国での呼び名の通り
中国や韓国は日本と同じく母国語で「姓名」で呼び合うが、習近平国家主席や文在寅大統領は、ローマ字表記でも「Xi Jinping」(シー・ジンピン)、「Moon Jee-in」(ムン・ジェイン)とそのままの順番で書く。
安倍晋三総理は「Shinzo Abe」になるのに。
五輪などスポーツでも、中国や韓国の選手は本国での呼び名の通りに呼ばれる。
姓を区別するときはすべて「大文字」に 実施は令和元年1月1日【2019年10月25日追記】
国の公文書における日本人の名前のローマ字表記について政府は、
- 原則として「姓名」の順番にすること(suga yoshihide)
- 姓を区別するときはすべて「大文字」にすること(SUGA yoshihide)
を中央省庁で申し合わせた。
萩生田光一文部科学大臣が25日の定例記者会見で明かした。2020年1月1日から実施する。通知を出すなどして、民間にも知らせていくという。
「姓名」表記にする具体的な対象としては、
- 行政機関の外国語ウェブサイト
- 外国語の書簡
- 相手国に日本の立場を説明する資料
- 2国間・多数国間の共同声明
- 白書などの外国語で発信する文書
- 行政機関が主催する会議の名簿やネームプレート
- 日本の大使の信任状・解任状の英仏語訳
などをあげた。
国際機関が指定する様式などの、特別な慣行(社会や書式のしきたり)がある場合には「名姓」の順番でもよいとした。
また、企業や一般社会には無理強いせず、それぞれの判断に任せるとした。
▼参考記事
ローマ字、来年から「姓・名」順 文科相表明、民間に周知へ – 共同通信
日本人の名前はローマ字表記でも「姓名」の順番が望ましい 文化庁の国語審議会が平成12年に意見
日本人の名前のローマ字表記を「姓名」の順番に統一する決め手となったのは、文化庁の国語審議会が2000年12月に出した意見である。
当時の国語審議会では、
「日本人の名前はローマ字表記においても『姓名』の順番にすることが望ましい」
との考えを示している。そして、
- 官公庁や報道機関などで日本人の名前をローマ字で表記するとき
- 学校教育で英語などを指導するとき
には「姓名」の順番に表記することを広く求めている。
世界の人々の名前の形式は多様である。
- 「名姓」のもの
- 「姓名」のもの
- 「名」だけのもの
- 自分の「名」と親の「名」を並べて個人の名称とするもの
それぞれの国の文化や歴史が背景にある。
日本のほかに「姓名」の形式を使う国は、中国や韓国、ベトナムなどのアジア数カ国と、欧米のハンガリーがある。
国語審査会は、
「言語や文化の多様性を人類全体が意識して、生かしていくべき」
として、
「各国の固有の形式が生きる形で紹介・記述されることが望ましい」
とまとめている。
また、日本人の名前のローマ字表記を「名姓」の順にする慣習は、明治時代の欧化主義が定着したもので、欧米の形式に合わせたものだと指摘する。
英語表記は、もともとは「姓名」の順番だったという。
日本女子大学の清水康行・日本語学教授によると、幕末の1854年に結ばれた日米和親条約では日本人通訳の名前が「姓名」順番でローマ字でサインされている。
ところが1980年代入ると、海外の雑誌が日本語に翻訳されるようになり、「名姓」表記が目立つようになった。90年代には広まったという。
「姓→名」五輪機に進む?=ローマ字表記、官民から要望-東京開幕まで1年 – 時事ドットコム
まとめ
政府の方針をうけ、日本人の名前のローマ字表記は「姓名」の順番に変わっていくだろう。はじめは戸惑いや混乱がある。
立憲民主党の枝野幸男代表がうまく例えている。
国際慣例にならって、日本プロ野球は2010年に「ストライク→ボール」から「ボール→ストライク」に読み上げの順番を変えた。枝野代表はその時の戸惑いを例に挙げて、「2、3年もすれば慣れる」と話した。
そのとおりだろう。